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GMOブランドセキュリティがその変遷と取得方法を語る

例えるなら“表参道の一等地” 14年ぶりに申請開始する「ブランドTLD」の価値とは?

2025年05月12日 08時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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サイバー脅威時代の必須戦略か、10年に一度のブランドTLD申請機会に備える

 近年、フィッシングやなりすましによる被害が爆発的に増加している。フィッシング報告件数は、2018年の約2万件から2023年には約120万件と驚異的な増加を見せており、被害額も拡大の一途をたどっている。サプライチェーン攻撃などサイバー攻撃の手法も巧妙化する中、ブランドTLDの価値は一層高まっている。

 「ブランドTLDの第一の優位性は『信頼性の向上』。TLDを一見するだけで安心・安全を提供することができる。第二に『ガバナンスの強化』。サプライチェーン全体でブランドTLDを利用することで、自社ドメインとサーバーの管理を明確にし、サイバー攻撃のリスクを軽減する。また、ドメインの誤った放棄によるリスクも回避できる。第三に『一貫したブランディングの実現』。文字列に制限されることなく、効果的なマーケティングが可能だ」(寺地氏)

ブランドTLDの3つの優位性

 実際、NTTドコモは2021年に、電子決済サービス「ドコモ口座」公式サイトのドメインを誤って手放し、約400万円を支払って取り戻すという事態が発生した。自社が管理するブランドTLDであれば、重要なドメインを誤って放棄しても、必ず取得し直すことができる。

NTTドコモは「docomokouza.jp」というドメインを誤って手放し、買い戻すことになった

2026年申請開始、ブランドTLD取得のプロセス

 ブランドTLD取得のスケジュールは以下の通り。今年は検討機関となり、2026年4月から申請がスタート。7月から審査され、運用開始は2027年7月以降となる予定だ。

1. 2025年中:検討・決裁
2. 2026年4月~6月:申請期間
3. 2026年7月~:審査開始
4. 2027年後半:契約・委任(使用開始可能)

 今回は格段に申請数が増えることが予想されているが、それでも申請開始から19カ月までには手続きを完了する予定だという。ファーストラウンドは初めてのことばかりで、運用開始までに結局3年もかかたが、今回はそのような事態にはならなそうだ。

 申請には主に、TLDを申請文字列を運営する正当な理由、ビジネスプロポーザルが必要となる。そして当然、TLDを安定運営するための財務力を示す必要もある。加えて、安定運営のための技術力を示す要件もあるが、こちらは認定レジストリサービス事業者を選べばいい。

 コストに関しては、ICANNへ支払う申請料が22万7000ドル(約3400万円)、運用費用が年間で2万5800ドル(約390万円)。ファーストラウンドよりも高価になったが、上場企業に対する財務評価の負担を小さくしたり、複数形も同じ文字列としてあつかったりと、利用しやすいポイントが増えている。

 寺地氏は、「第三回申請ラウンドについて、ICANNは時期を明言していない。ラウンドを重ねるごとに申請できる文字列の選択肢は狭まるので、早めの申請が有利だ」と強調する。この機会を逃すと、次回の申請機会はさらに10年以上先になる可能性もあるからだ。

 ちなみに、複数の組織(企業)が同じ文字列を申請し、いずれもビジネスプロポーザルや財務力、技術力などの要件をクリアした場合、オークションでより高値を付けたほうが獲得することになる。

ブランドTLDの申請料金とファーストラウンドとの比較

 また、GMOブランドセキュリティは、ブランドTLD申請・運用支援サービスとして、Basic、Standard、Advancedの3つのプランを用意している。Standardの申請支援費用は250万円~、運用費用は200万円~/年となっている。同社のサービスの強みとして、2012年のファーストラウンドでは日本企業の83%(47件)が同グループを通じて申請したことが挙げられる。さらに、自社でもブランドTLD「.gmo」を積極的に活用していることも強みといえるだろう。

 寺地氏は、「(ブランドTLDは)“表参道の一等地”が売りに出されるような感覚。10年単位のランドスケープを考えた時に、Webの世界に、.jpや.comと同じようなレベル感で制限のないスペースを持つことができる。(ドメイン名で)自由な表現ができ、セキュリティも高く運用できる」と締めくくった。

GMOも「.貴社名」の申請・運用支援サービスを提供する

 企業のデジタルリスクが高まる今日、ブランドTLDは単なるドメイン戦略の一環ではなく、企業のデジタルアイデンティティを根本から強化するための戦略的投資と言える。2026年に迫る14年ぶりのチャンスを前に、先進的な企業はすでに検討を開始している。この機会を逃さず、企業のブランド価値とユーザーからの信頼を高める選択をするか否か、ネット時代における企業のデジタル戦略の根幹に関わる重大な経営判断となるだろう。

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