工場設備のサイバーセキュリティが必須に? 2027年に迫るEU機械規則対応

文●フォーティネットジャパン 編集●ASCII

提供: フォーティネットジャパン

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本記事はフォーティネットジャパンが提供する「FORTINETブログ」に掲載された「新しい欧州機械コンプライアンス規制への対応」を再編集したものです。

 機械規則(EU)2023 / 1230が2027年に発効します。企業がこれに備えるには、どのような知識が必要でしょうか?

 本ブログでは、新しい機械規則の主な変更点を検証します。後半では、この規則で新たに導入されるセキュリティ関連の要件と、フォーティネットが今後の機械設計、実装、および運用をどのように支援できるかを解説します。

 デジタルトランスフォーメーションとインダストリー4.0(第4次産業革命)における急速な技術革新は、産業界の状況を再定義し、新たな課題と機会をもたらしています。こうした情勢の大きな変化を受けて、欧州議会は最近、既存の標準を将来の工場のニーズに適応させるため、新しい欧州機械コンプライアンス規制の規則を承認しました。

機械指令2006からの変更点

 健康と安全に関するこの規則で最も注目すべき変更点は、機械の技術的進歩に焦点を当て、特にIoTやAIなどの新興テクノロジーに関連するリスクに注目していることです。機械指令2006 / 42/ECと異なり、この機械規則を国内法に導入する必要はありません。機械類の製造業者は、2027年1月19日以降にEU域内で上市するすべての製品が、新しい機械規則に準拠していることを保証しなければなりません。製造業のリードタイムが長いことを考えると、ただちにコンプライアンス計画に着手し、期限のかなり前から流通網の運用を準備する必要があります。

 同規則では、サプライチェーンにおける全事業者(輸出業者、販売業者など)の定義、役割、責任を改定し、機械のコンプライアンスに関する各事業者の責任を明示しています。これは、既存の規制で重視されているサプライチェーン、ならびに機械設備の適切な識別および文書化の検証を強調し、さらに強化するものです。

 もう一つの注目点は、サイバーセキュリティ対策です。要求事項1.1.9と1.2.1は、変造からの保護に関する明確な規則を定め、機械およびその関連製品は、外部接続によるセキュリティリスクを最小限に抑えるよう設計しなければならない、としています。

 フォーティネットOTセキュリティプラットフォームは、OT専用のネットワーク接続、ゼロトラストのサポート、SecOpsソリューションによってこれらの課題に対応します。

2027年の期限に向けた準備

 新規則の完全施行は2027年の予定ですが、法令順守への準備は今すぐに始める必要があります。

 重要項目は、明確に定義された「実質的な改造」です。これにより、計画外の変更を伴う製品にも機械規則が適用されることになります。この条項は、物理的またはデジタル的な手段で機械製品を変更する者の責任を拡大し、適合性評価を義務づけています。

 新しい機械規則は、分野横断的なサイバーセキュリティ規制の広範な文脈に組み込まれており、生産の全段階でサイバーセキュリティに対処する必要性を示しています。

 こうした新しい規制環境に備えるには、安全リスク評価のワークフローでセキュリティリスクを検討し、ソフトウェアを調査し、コンポーネントを慎重に選択することが重要です。もう一つの重要項目は、第三者のエコシステムとの整合性を管理し、それらが最新のサイバーセキュリティ規制を遵守していることを確認することです。2024年10月23日に導入されたサイバーレジリエンス法(CRA)は、デジタル部品を搭載した製品のライフサイクル全体を通じたセキュリティを明確に重視しています。機械製造業者は、CRAと機械規則に基づいた標準やガイダンスの採用を監視する必要があります。それらは部分的に重複している可能性があるからです。特に、CRAのサイバーセキュリティ要件は2027年12月、すなわち機械規則の要求事項の直後に適用が開始されるため、コンプライアンスを徹底するにはこのような監視が不可欠です。

 新しい欧州機械コンプライアンス規制は、将来の産業における安全、安心、革新性を確保するため、調和のとれた規制の枠組みを構築する上で非常に重要です。コンプライアンスのプロセスで課題が生じるとはいえ、これは安全で持続可能な産業の未来を築くために必要な投資です。

 機械製造業者がこの新しい規制環境に適応するための推奨事項を以下に示します。

・セキュリティを念頭に置いた設計: 設計の第一段階からサイバーセキュリティを取り入れ、物理的側面とデジタル的側面をすべて網羅した総合的な保護を実現します。

・システム全体を視野に入れたセキュリティの導入: ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークを含むエコシステム全体のセキュリティを確保します。

・継続的コンプライアンスの維持: コンプライアンスを継続的に監視し、セキュリティ態勢を主体的に管理します。特に、サプライチェーンの検証に重点を置くようにします。

・ソフトウェアライフサイクルの保護: 安全なデプロイメント、定期的な更新、安全なコーディング手法を維持し、脆弱性を防止します。
確実なIDおよびアクセス管理の実施: 徹底したIDおよびアクセス管理によって不正アクセスを防止します。これは、外部から接続されるコンポーネントには不可欠な対策です。

・インシデントレスポンスの準備: セキュリティ侵害を迅速に処理し軽減するために、詳細なインシデントレスポンス計画を策定しておきます。

・サードパーティエコシステムの調査: すべてのサードパーティパートナーがサイバーセキュリティの標準を満たし、透明性を重視していることを確認します。

・チームの教育: 機械製品のライフサイクルに関与するスタッフ全員に対して定期的なサイバーセキュリティ訓練を実施し、セキュリティ意識の高い文化を醸成します。

・CRAの活用: デジタル部品を中心に、CRAを利用して新規則のセキュリティ要件に準拠します。

・セキュリティ対策の文書化: インシデント対応も含め、コンプライアンスとセキュリティに関するすべての対策を詳細に記録することで、継続的改善と規制遵守を促進します。

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