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JAWS DAYS 2025の基調講演 内容は生成AIとの向き合い方

生成AIへの恐れ 使えば払拭できる AWSエバのメッセージは誠実で論理的で力強かった

2025年03月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 春の訪れを告げる年に1度のクラウドのお祭り「JAWS DAYS」が今年もやってきた。今年のテーマは「Connecting the Dots」。会場となった池袋サンシャインシティには1000人のエンジニアたちが集まり、AWSの技術の知見はもちろん、生成AIへの向き合い方や地方コミュニティの課題などを共有した。

会場への通路に設けられた巨大な告知ボード

1000人のチケットがあっさり完売 キャンセル待ちでなんとか参加

 AWSのユーザーコミュニティとしてグローバルでも名高いJAWS-UGの年次イベントである「JAWS DAYS」。今年の会場は昨年と同じく池袋のサンシャインシティの展示会場。私の地元ということで、調子に乗って池袋周辺のグルメガイドを前日にアップしたら、本丸のIT系記事より読まれてしまい、ちょっと焦っていたのは内緒である。

 今年のJAWS DAYSは会場のキャパいっぱいの1000人のチケットがあっさり完売してしまった。昨年のJAWS FESTAのときの教訓を活かせてない私は、やっぱり申し込みに遅れてしまい、キャンセル枠で63番目の登録だった。スポンサーもしてないのに、記者枠で入れてくれと運営にお願いするのはキャンセル待ちの方に悪いので、ギリギリまで待っていたら、直前にキャンセル枠が100人分解放され、なんとか入ることができた。何が言いたいかというと、「申し込みは早めにね」ということと、1000人規模が瞬殺してしまうJAWS-UG「相変わらずすげえーーーー」ということだ。

 さて、勝手知ったる池袋というとことで、当日は私もオススメした東池袋経由でサンシャインに向かおうとしたが、JAWS DAYSの巨大な告知ボードやストリートジャックがサンシャイン通りにあるということで、撮影のために池袋東口経由でサンシャインへ。自分が記事で書いたとおり、展示会場に着くまでにけっこうギリギリになってしまった。

われらがサンシャイン通りにはためくJAWS DAYS 2025の告知旗

 会場のサンシャインのホールは普段、展示会に利用されているだけあって、とても広い。JAWS DAYSのフラグが掲げられた中央通路の両端に各セッション会場、スポンサーブースなどが配されている。基本はレシーバーでの視聴になり、フロアの行き来もないため、好みのセッションを行き来できるのが魅力。入り口から最奥のメインフロアではいよいよ最初の挨拶が始まるところだった。

実行委員長が語る「Connecting the dots」のテーマへの想い

 イベントは実行委員長の新居田晃史さんの挨拶からスタートした。フルマラソンを2時間29分で走り切る「日本最速のITエンジニア」新居田さんは、今回のJAWS-UGの参加者の1/3が初参加であることを参加者であることをアピール。「必ず知らない人、一人には声をかけて、セッションの感想を共有したり、つながりを作ってもらいたい。そのためのオフラインイベント」と語る。

JAWS DAYS 2025 実行委員長の新居田晃史さん

 その上で、「Connecting the dots」という今回のテーマについて、「僕が楽しく技術をキャッチアップできているのも、JAWS-UGというコミュニティがあったからです。AWSはもともと仮想マシン主体のIaaSでしたが、そこからコンテナ、サーバーレス、IoT、AIが出てきて、さまざまな技術トレンドが起こり、そのたびに新しい人たちがJAWS-UGに混ざり合ってきました。コミュニティとして次のヒーローを探すというマインドがあったからこそ、(こうした人たちが)うまく溶け込めたと思っています。この技術トレンドはこれからも続いていくので、同じように新陳代謝を促しながら、次のヒーローを探していきたいと思い、この『Connecting the dot』というテーマにしました」と語る。

 そして、現在の技術トレンドについての生成AIについても、「生成AIの登場により、『私たちがディスラプトされる側になった』という危機感を抱いている人たちもいるかもしれません。僕もその一人です。でも、今日はさまざまな学びのあるセッションがあるので、そういう生成AIも自分の武器にできるような、いろんなヒントが転がっています。だから、ポジティブになって、次の未来を作るヒントを持ち帰ってもらいたいと思います」と参加者に語りかけた。

基調講演の席を多くの聴衆が埋める

 その後、新居田氏は、運営チームやスポンサーへの感謝、スポンサーブースのスタンプラリー、複数トラックのセッション、会場案内、スタッフ紹介などを進める。そして、何倍もの応募があったというセッションに関して、「JAWS DAYS史上、最高のセッションが並んだ」と新居田氏さんは胸を張る。エンジニアならではの胸の内を、磨かれた言葉で聴衆に伝えられた挨拶だったと思う。

AWSジャパン新社長の白幡氏がコミュニティの前で所信表明

 基調講演で登壇したのは、長らくJAWS-UGに対してコミットし続けてきたAWS VP チーフエバンジェリストのジェフ・バー氏だ。10代からテクノロジーに関わってきたバー氏は、2004年から20年間に渡ってテックブログを書き続け、総執筆ワードは250万語になるという。JAWS-UGに関しては、2010年に開催された初回のJAWS-UGから参加していた。ちなみに会場でそのときに参加したと挙手したのは、1名だけだった。

 冒頭、バー氏から紹介されたのは、昨年にAWSジャパン 代表執行役員社長に就任した白幡晶彦氏になる。JAWS DAYSのTシャツに身を包んだ白幡氏は、「お世辞じゃなく、本当に楽しみにしていた」ということで、その理由を3つ披露する。

JAWS DAYS 2025に登壇したAWSジャパン 代表執行役員社長 白幡晶彦氏

 1つ目は、「AWSをAWSたらしめている存在はビルダーであること」を認識したから。就任から4ヶ月経ち、昨年末のre:Inventに参加し、ビルダーの熱量に圧倒された。「マット・ガーマンCEOの基調講演も、AWS Heroの紹介と認知からスタートした。最初の話はビルダーのためのビルディングブロックだった」とのことで、ビルダーの存在を強烈に認識したという。

 2つ目は、「自らもビルダーに共感しているから」だという。白幡氏は社会人スタート10年は商社マンとしてアフリカにおり、その後10年で発電機や電力系を担うGE、そしてシュナイダーエレクトロニクスを経て、AWSジャパンに入社している。商社と製造業ということで、ビルダーとの接点はあまりなさそうだが、「GEの途中からやっていたのは、発電所のガスタービンの状態計測。振動計測や状態モニタリングで運用したり、予知保全を行なっていた。もしくは石油配管プラントで配管の流量を超音波流量計で計測し、プラントを制御していました。今で言うIoTの走りにいた」と白幡氏は振り返る。

 その後のシュナイダーではまさにIoTど真ん中におり、「香港でVPをしていたときは、スマートホームをまさにビルディングブロックしていた」とのこと。こうしたバックグラウンドがあるため、「お客さまのために価値のあるソリューションをテクノロジーブリックを組み立てて、アーキテクトしていくこと」は、AWSのやっていることとつながるという。ビルディングブロックの概念、そしてビルダーの重要さも腹落ちするところが大きかったわけだ。

 3つ目は、「今後のAWSの未来がビルダーにかかっているから」だ。現在、全業界を巻き込んでいる生成AIのブームの中、ビルダーがブロックを積み上げなければ、価値は生まれない。「AWS自身もさらにビルダーを強力に支援し続ける存在でありたい」と語り、所信表明を終えた。重産業系という業界ではあるが、ガチなエンジニア気質と顧客志向を見せた白幡氏の話は、ビルダーにも刺さったのではないだろうか。

 バー氏にビルダーへのアドバイスを求められた白幡氏は、「私はお客さまといっしょにIoTをやってきた人間。背後にあるテクノロジーバックボーンよりは、お客さまのアプリケーションに近いことをやるのが好きでした。お客さまの近くで好きなことをやると、アイデアが湧いてくる。そのアイデアをビルディングブロックで実現していくことが重要。AWSでよく出てくる『カスタマーオブセッション』という顧客志向に近いと思います」と語った。

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