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業務を変えるkintoneユーザー事例 第256回

イノベーションを生み出し、ノーコードを活用するために必要な力に気づいた

伸び悩んだら現場へGo! 星野リゾートのアプリ開発者が気づいた「問う力」

2025年02月17日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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「伸び悩んでます」から、飛び込んだ沖縄の現場最前線

 マイクを受け取った星野リゾート 情報システムグループ 情報システムグループ 小竹 潤子氏は、情報システムグループでヘルプデスクと業務改善を担当している。kintoneの認定資格も取得し、エバンジェリストとしても活躍している小竹氏。もともとは新卒で星野リゾートに入り、星のや軽井沢でサービススタッフとして働いていたが、3年目に「もっと業務改善がしたい」という希望を持って情報システムグループへ異動した(関連記事:利用7年目に突入した星野リゾート、愛されるkitnoneのはぐくみ方を語る)。

星野リゾート 情報システムグループ 情報システムグループ 小竹 潤子氏

 もともとITの知識はなかったが、勉強と経験を積み、kintoneでさまざまな業務改善を実現させてきた。100個のワークフロー、8000人対象のアンケート&集計、電子契約の仕組みの構築、コロナ対応でフォーム作成なども行なってきた。「特徴的なのは全社で使っているので、アプリの数が多かったり、対象人数も多いので、なるべく速く、正確に、みんなで使えるよう心がけています」と小竹氏は語る。海外施設での多言語対応、会計データの全銀データ生成、冷蔵庫の温度管理など、業務改善のフィールドも広い。

 現場のリクエストを受け、小竹氏が作ったアプリはすでに300個以上に上る。しかし、情報システムグループ入り5年目にして「速く正確に、言われたものを作れるだけでいいのか?」というモヤモヤにぶち当たった。「この中にもいるかもしれませんが、アプリやシステムを作るのは楽しいけど、いっぱい作って、その先になにがあるんだろうということを悩み始めた」と小竹氏は吐露する。

5年目にしてなんだかもモヤモヤ

 特に昨年、予約システムの導入担当になってから、そのモヤモヤが加速した。「言われたものは作れるんだけど、そもそも何を作ったらいいかわからなかったり、依頼する側もできたものを見て、なんだかしっくりいってなかったり。果たして技術力が足りないのか、ツールが足りないのか、別のスキルが足りないのか、悩んでいたのが春先でした」と小竹氏は振り返る。

 久本氏に「なにかが足りてない」と相談した小竹氏。返ってきたのは「なにが足りないか、僕にもわからない。自分で探すしかない」という答えだったが、「予約の業務に関しては、(現場である)『総合予約』で業務してくるのが一番早いのでは?」と提案してくれた。結果、小竹氏は総合予約のある沖縄で研修することになったという。しかも、週単位ではなく、2ヶ月だ。

モヤモヤを相談したら、業務研修することに

 総合予約は、旅の計画段階から相談に乗ってくれるプロフェッショナル集団。小竹氏は、「食事のアレンジ、送迎の手配、予約の変更、宿泊先として『紅葉がきれいな場所』といった相談もできる。しかも星野リゾートの全施設を対象としているので、社内の私から見てもリスペクトしている部署。そんなところで、お仕事できるのかドキドキだった」と振り返る。

1300本の電話に対応するガチ業務経験で得た気づき

 小竹氏は、沖縄に2ヶ月の間、短期移住し、予約問い合わせ業務をゼロの状態から学んだ。単に学んだだけではなく、実際の業務にも携わった。「すごく情報量が多く、4画面のモニターと電話で業務を行なっていた」とのことだ。

 実業務で小竹氏がお客さまから受けた電話の量は1300本に上る。問い合わせも「駅に着いたんですけど、どう行けばいいですか?」「食事の時間を調整したい」のほか、「プロポーズのとき、どんな花を渡せばいいでしょうか」といった相談をともに悩んだこともあったという。

 2ヶ月の研修で、小竹氏はいろんな「こうしたい」が具体的に見るようになったという。ミーティング内容もわかるようになり、会社全体の仕事の流れもより深く理解できた。「ITでこうやったら改善できるのでは?というアイデアが自分の中から自然に湧き上がってきたのが大きな気づき。私自身としては、足りなかったのは『問う力』だと思った」と小竹氏は振り返る。

総合予約での研修は本番そのもの

 「問う力」とはなにか? 小竹氏は、「未知の課題に対して問いを立てる力」と説明する。この問う力を上げると、自らの経験から解像度を上げることができる。また、ITスキル関係なく発揮できる力であり、これをきっかけにイノベーションを生み出していくことが今後重要になると小竹氏は指摘する。

「問う力」とは?

 ここでのイノベーションに寄与するのが、kintoneをはじめとしたノーコードツールになる。小竹氏は、「ITを使ってこなかった非IT人材でも、ITでイノベーションを起こせるようになっていると感じています。技術の部分はツールベンダーのみなさんがレベルを上げてくれるので、その力を使って、どんどんイノベーションを生み出していきたい」と語る。

 小竹氏は「北米に温泉旅館を作る」と意気込む星野リゾート星野佳路氏の写真を掲げ、「さまざまな業務課題もあり、マーケットもガラッと変わるので、いろんな未知な課題が出てくる。そういった課題に私もワクワクしていますし、ITの力を使って取り組めることが面白いと感じている。新しい課題があっても、ノーコードを使ってどんどん解決できたらいいなと思っています」とまとめた。

未知の課題にワクワク

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