京セラとマルテー大塚のIT担当が内製化とkrewDataを語る
kintoneとkrewDataがあれば内製化は進む? エンプラIT担当の二人に聞いた
2025年01月15日 09時00分更新
情シスが手を離すためのkrewData導入
大谷:続いてメシウスさんのkrewData導入や使い方について聞いていきたいです。ここまでのアプリの内製化ととてもリンクする話なので。
木下:われわれが市民開発をする中で感じたのは、kintoneってアプリ単独では完結しないということ。アプリ同士が連携したり、マスターからサブマスターを作る必要があるのですが、ここでのデータ変換はkintoneの中で実装するのは難しい。このいわゆるETL処理を行なうために導入したのが、krewDataです。
基幹システム側では別の連携製品を使っているのですが、市民開発にまで拡げるのは敷居が高い。「kintoneから考えて一番使いやすいETLツールはなにか?」を調べたら、krewDataに出会いました。GUIで操作できたり、kintoneアプリ間の連携ができたり、バッチやリアルタイムでの実行ができるという点が、こちらのニーズにマッチしました。
大谷:なるほど。krewDataって、データ連携とか、フロー作成ツールみたいな見え方しますが、ETLツールと捉えているんですね。
木下:もともとAccessを使っている人はいろいろクエリを作るのが好きな人が多いと思います。でも、kintone上ではクエリできないので、krewDataに流れる人もいますね。
石井:私もそうですね。kintoneの中だとETLと言いづらいかもしれませんが、外部ストレージにデータを出し入れできるので、ETLと言えますね。私たちはkrewDataをデータ分析の用途では使用していません。他のシステムでできたCSVを加工して、kintoneに入れるということにkrewDataを使っています。
大谷:マルテーさんでkrewDataを選択した背景はなんですか?
石井:私はCSVファイルを外部に置けるというのが一番です。弊社では、基幹を含めた外部システムから書き出されたCSVファイルをAccessで加工してkintoneに読み込ませていました。これをkrewDataに置き換えています。
たとえば、うちだと高速道路や橋梁などの大規模な塗装工事が発生する営業先リストをkintoneに登録するために使っています。もともとは収集したデータの加工をわれわれがAccessで加工し、CSVで出力して、kintoneに読み込むという方法です。でも、これだと情シスの手を離れづらい。そこでkrewData化しました。
大谷:導入はいつくらいですか?
石井:2023年ですね。具体的には収集したデータのCSVファイルをOneDriveに置いておき、あとはkrewDataの実行ボタンを押すればOK。ただ、この作業が情シスの手が離れて本当に楽になりました。CSVを一度取り込む「中間アプリ」のようなものを作らなくていいので、アプリ数も増えません。
木下:kintoneは1000のアプリ数の上限があるので、ここらへんはせめぎ合いです。
ユーザーインターフェイスはkrewDataが圧倒的 教育コストは低い
大谷:krewDataは社内でどれくらい使われていますか?
石井:基本的にはプラグインまでいじれるキントレ卒業生ですね。しかも、部門ごとにkrewDataのアプリは分けているので、部門のデータを扱える人に絞っています。
木下:うちは去年の段階では僕しか使っていませんでしたが、今は10人くらいに拡がっています。石井さんの会社と同じく、kintoneの資格を持っている人は使ってOK。でもkrewDataはデータ構造などを理解する必要があるので、200人のうち使える人は10人くらいです。
ただ、1つ1つどんな用途に使われているかということまでは把握していません。複数の部門でkrewDataを活用しており、開発部門はいろいろ使っているようです。たとえば日報でも、今日の一覧をバッチで作っていたりします。常時動いているのが前提のシステムから、バッチでスナップショットをとるのに使っていますね。
大谷:krewDataのどこがお気に入りですか?
石井:krewDataはデータ処理が可視化され、設定がGUIで行なえるため利用ハードルが低いです。
木下:30人に製品を学んでもらい、実際に習得したのは数名だったということもあります。専門性が求められる製品は学習のハードルも上がるので、それくらい育てるのは大変です。
大谷:なぜkrewDataは簡単なんでしょうか?
石井:ステップごとにSQLを実行しているのがいいですね。
木下:kintoneのプラグインなので、セットアップが要らないのも大きい。サーバーやJavaやアプリのインストールなしに、プラグインファイルをkintoneにインストールして、krewData専用アプリを作成すればすぐに使い始めることができます。あの手軽さは何ものにも代えがたいですね。
石井:設定の流れも決まっているじゃないですか。設定して、反映したら、プレビュー見てという方法に固定されているので、やりたいことがいろいろあっても、操作は全部統一されています。
木下:確かにそれは大きいですね。
石井:細かい操作や仕様の限界は私もわかりません。でも使いこなすと、いろいろできそうな印象。だから、先日は共通のキーの有無に関係なく、2つのアプリのレコード情報を結合する 完全外部結合ができて驚きました。メールアドレスを発行した情シス側のリストと、社員番号を発行した人事側のリストを全部ジョインするみたいな処理です。SQLでもめったに書かないので、こんなことできるんだーと。
「DXはすでに死語」「あくまで情シスのミッションを追求する」
大谷:では、最後に今後のkintoneの予定や見込みを教えてください。
石井:現在はワークフローをkintoneに移行しているので、こちらを進めます。海外拠点でもポツポツ使われてきたので、それも増やしたいです。ただ、全社的に見ると、ほとんどの処理はまだまだ基幹システムの範疇で、kintoneで担っているのは数%。kintoneでできることをもっと増やしたいですけど、先は長いです。
木下:私は5年経ったので、もうすぐ解散するはず。私のような推進役がいなくなっても困らないように運用や保守のチームは残していこうと思っています。
エバンジェリストを育てたので、今後の育成は現場にやってもらいます。人を育てるのがミッションで、得た知識は人を育てるために使いなさいと言ってきました。「僕がいても、いなくても、加速度が変わらない」。そんなフェードアウトがしたいなと思っています。実はすで3部門くらい兼務していて、昨年の夏くらいから私がいないことを前提に予行演習もしているので、たぶん大丈夫だと思います。
石井:気がついたのですが、木下さんが話してくれた人材育成の取り組みって、サイボウズが提供している「kintone SIGNPOST」で示されているベストプラクティスをきれいに実践しているんですよね。1合目2合目ではなく、一つの山を下山して次の山に登るとき、のイメージです。 「担い手を増やす」を実践されています。ホント素晴らしい。
木下:うちの場合は「DXやろう」はもう古くて、当たり前の存在になりました。Excelを使うのと同じ感覚で、kintoneをはじめとしたツールで物事を解決するようになっている。この光景を見たときに、「DXは死語になった。つまり定着したな」と思って、うれしくなりました。「定着=ゴール」だなと。
石井:うちはDXという言葉は経営層のほんの一部くらいしか出てこないですね。あくまで私たち情シスとしては「グループ全社員が快適に最高の力を発揮できるIT環境を整備し、安全で安心なマルテーグループを作る」というミッションがあるので、従業員が一人一人便利になることを目指しています。
大谷:ありがとうございます!







