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京セラとマルテー大塚のIT担当が内製化とkrewDataを語る

kintoneとkrewDataがあれば内製化は進む? エンプラIT担当の二人に聞いた

2025年01月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: メシウス

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孤独な一人プレイヤーが教育制度を導入するまで

大谷:10年以上なので、石井さんもkintone歴長いですよね。

石井:ずっと一人で、孤独なプレイヤーという時間が長かったので、結局詳しくなりましたね。kintone認定資格は全冠ですし、kintoneエバンジェリストもやってますし。

ただ、2022年からは情シスの人数不足がDXのボトルネックになってきたので、現場でアプリを作る必要が出てきました。そこで「キントーントレーニングギルド」という教育制度を始め、「キントレ」するメンバーを集めました。

木下:キントレするメンバー(笑)。

石井:とはいえ、kintoneやキントレといっても最初はみんなわからないと思ったので、とりあえず一人一人ナンパしました(笑)。本社の総務や経理、人事、広報、あるいは営業部門の事務などを引っ張ってきて、一人一人教えて、いまはアプリを作れる人が50人くらいになっています(関連記事:情シスと総務で作ったkintoneの制服申請システムからDXが進み始めたマルテー大塚)。そのうち2人はkintone資格のアソシエイトに合格しました。

ずっと孤独でしたが、今は子どもたちが増えた感じです。卒業生の口コミもあります。ただ、「各部門から強制的に1名ずつ出してもらう」みたいことはやっていません。こうなるとモチベーションが高い社員は来ないので。

大谷:アプリはどのように作ってもらっているんですか?

石井:弊社のキントレ卒業生にはアプリの作成権限を与えています。「自分の部署内であれば、好きにアプリを作ってもらってOK」「全社のアプリを作るなら、われわれシステム部の伴走を入れてください」というルールです。

木下:このルールはとてもいいですね。私はどちらかというとあまり厳しくなく、セキュリティさえ確保していればOKという考えで拡げてきましたけど、やっぱりたまにうまくいかないことがあるんですよね。他部門で同じようなアプリを展開していても、現場からは全然違う要求が来たりします。だから、部門内での自由度が高い今の石井さんの分け方はとても参考になります。

「現場に作らせる」を選んだ理由 5年で解散する理由

大谷:木下さんはどうでしたか?

木下:私たちも「現場に作らせる」を選びました。いわば内製化です。石井さんとは逆で自分で手を動かしてはいけないと思っていたので、とにかくkintoneを作れるエンジニアを育ててきました。今では200人くらいいます。組織全体で1000名くらいなので、1/5はkintoneでなにかしらアプリを作れる人です。

石井:200人はすごいですね。うちは現場にいながらスキルを得てもらうというスタイルなので、いったんDX部門で預かって、現場に返すという発想がありませんでした。

木下:こうした市民開発だと、セキュリティを無視してしまうといった問題もありますが、これは内部教育でカバーしています。内部教育で認定をもらった人だけ、開発できるアカウントにアクセスできるようにしています。

大谷:なぜ現場で作るようにしたのですか?

木下:これって社風の話になるのですが、創業者の稲盛和夫は「アメーバ経営」を掲げ、現場の全員が物事を考えて行動せよと言っています。逆にトップダウンに対しては、抵抗勢力になります。上から下りてきたことに対して、疑問を持てと教わっているんです。だから外からITを持ち込むと、抵抗感を持たれやすい。だったら、現場からやろうというのが大きな考え方です。

大谷:まさに社風ですね。

木下:あと「業務を知っている」と「ITを知っている」は両輪でやらないとDXは拡がらない。ITを知っている人は外から連れてこられるけど、業務を知っている人を連れてくるのは難しい。だから、業務を知っている人に、簡単なITを学んでもらうことにしました。とはいえ、5年で解散というのが決まっている。それまでに200人を育てて、DXを当たり前にしなければなりませんでした。

大谷:「5年間で200人って大丈夫かなあ」とか思わなかったんですか?

木下:あまり不安はなかったですね。20年間のITの経験、京セラの社員のレベル、そしてExcelの関数ができる人数とかを考えれば、どれくらいかければ人材を育成できるかは比較的簡単に計算できると思います。

能力はあるから、時間さえあればできる。だから、私がやったのは時間を作ること。「この人の時間を○○時間ください」と上司にコンセンサスをとって、時間を使って学んでもらえば、人材育成は可能です。公募して、うちのDX部門に来てもらって、スキルを身につけたら現場に戻ってもらいます。kintoneにとどまらないDX人材の育成に関しても、400人を想定していましたが、すでに超えています。

石井:うちは経営と交渉してkintoneのアソシエイトとアプリデザインに資格手当を付けてもらえるようにしました。ただ、システム部のメンバーは対象外です。現場サイドはエクストラワークとして学んでくれているので、プロの技術者であるシステム部メンバーと差別化してあげたかったので。

大谷:単純に現場で作ってもらうメリットってなんですかね。

石井:情シスから見ると、単純に時間が浮きますね。オペレーションまで含めた設計をシステム部がフォローしなくとも現場でやってくれるので。要件は自分たちが持っているわけだから、そもそもヒアリングもいらないし。

木下:それはでかいですよねえ。

石井:「こういうことやりたいけど、どうすればいいの?」と聞かれたときだけ、答えればいい。だから伴走です。

正直、システム開発者が作るものとは少し違うなと感じることもありますけど、自分たちのオペレーションの中で必要なものとして作っているので問題ないです。どうすればいいですか?と相談されたら、もちろん答えますけど。

大谷:現場の人が作ってくれた方が、価値があるということですよね。

石井:総務2~3年目の社員が取引先にお渡しするお菓子の在庫管理をkintoneでやり始めたときは感動しました。テーブルに1行ずつ入出庫の情報を登録するんですけど、「ホント素晴らしい!」と褒めまくりました。

木下:いいですね!

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