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CEOのエリック・ユアン氏「人間のつながりをAIが支援するプラットフォームに進化する」

Zoomはもはやビデオ会議ベンダーではない 新時代を見せた「Zoomtopia 2024」

2024年10月17日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 Zoom Video Communications(Zoom)は2024年10月9日、米サンノゼで年次イベント「Zoomtopia 2024」を開催した。会場には顧客やパートナーなど約300人が参加、さらにオンラインでも3万人近くが視聴する、Zoomらしいハイブリッドイベントとなった。

基調講演に登壇した、Zoom Video Communications 創業者兼CEOのエリック・ユアン(Eric Yuan)氏

AIという新たな武器を手に入れ、Zoomは新しい時代に入った

 Zoomといえば、まずは「ビデオ会議」だ。Zoomtopiaの基調講演は、サンノゼ会場にいるホストとデンバーにいるホストがZoom経由で掛け合いをする演出で幕を開けた。対面会議とビデオ会議の「ハイブリッド会議」時代を象徴する演出かもしれない。

 基調講演のステージに登壇したのは、2011年にZoomを創業し、現在もCEOを務めるエリック・ユアン氏だ。そのユアン氏が語ったのは、「AIの時代」におけるZoomの進化だ。

 これまでのZoomは、ビデオ会議のクラウドサービスで人々に便利さと効率性をもたらしてきた。リモートワークが求められたコロナ禍の時代、“ビデオ会議のZoom”が果たした役割は大きなものだったのは間違いない。

 そしてコロナ禍が明け、AIの時代が到来している現在。Zoomの役割は単なる“ビデオ会議ベンダー”にとどまらず、「人間のつながりをAIが支援するプラットフォームに進化している」とユアン氏は説明する。

 現在のZoomは、“コミュニケーションとコラボレーションの統合プラットフォーム”である「Zoom Workplace」に注力する戦略をとっている。電話、チャット、メール、カレンダー、ドキュメント共有、会議室予約……といった、幅広いコラボレーションツールを単一プラットフォームで提供している。

現在のZoomは「Zoom Workplace」(左)と、コンタクトセンターやマーケティング向けの業種ソリューション(右)に注力している

 このZoom Workplaceは、顧客企業にどの程度受け入れられているのか。ユアン氏によると、Enterpriseアカウントを持つ組織の3分の2が、Zoom Meetings(ビデオ会議)とZooom Phone(電話)以外のツールにアクセスしているという。

 この統合プラットフォームに組み合わされるのが、昨年(2023年)に発表した「Zoom AI Companion」だ。昨年のバージョンでは、ビデオ会議の要約、メール文面のドラフト作成といった作業を生成AIが支援していた。今年のZoomtopiaでは、さらに幅広いアプリやサービスと連携して自動化と効率化を支援する「AI Companion 2.0」へと進化している。

 具体的な例を挙げると、Zoom Workplaceのカレンダーから10個のミーティング予定を取得して、そのうち「本当に参加すべきもの」は2つだと判断し、会議室の予約を行うといった一連の作業を、AIに任せられるという。ユアン氏は「AIがさらに進化して信頼度が増せば、AIが会議に参加して、契約交渉を支援してくれるようになるかもしれない」と語る。

 「Zoom AI Companionを利用することで、忙しい毎日の中でも意味のある創造的な活動に時間を多く割くことができ、仕事がもっとハッピーになる。我々はこれをAIファーストと呼んでいる」(ユアン氏)

 一方で、AIを利用するうえでの顧客データの安全性にも触れた。Zoomでは、同意なしに顧客のデータをAIモデルのトレーニングに使うことはない。さらに、AI Companionそのものを無効化することも可能だ。

「AI Companion」はすでに400万ユーザー以上が活用

 Zoomでは「AIのメリットをすべての人に感じてもらう」目的で、有料プランのユーザーにはAI Companionを追加コストなしで提供している。ローンチから1年、現在では400万ユーザー以上が有効化しており、Fortune 500企業の57%が使っているという。

 その1社が、セキュリティ市場でSASEを提供するZscalerだ。ゲストとしてステージに招かれた同社 CIOのプラニティ・ラカワラ氏は、「便利なツールはたくさんあるが、これらをどうやって安全に、データ漏えいがなくプライバシーが保たれた状態で従業員が使えるかを考えている」と述べる。厳密な評価プロセスを経て、2024年4月にZoom AI Companionの導入に至ったという。

Zscaler CIOのプラニティ・ラカワラ(Praniti Lakhawara)氏

 同社はゼロトラスト原則に基づきアクセス管理を徹底しているが、「Zoomはもっとも広く使われている生産性プラットフォーム」であるという理由から、従業員全員が利用できるようにしているとのこと。

 生産性の効果について、具体的な数字は挙げなかったものの「従業員は自分の仕事を楽にするツールは自然と使うようになる。AI Companionは直感的なデザインなので、トレーニングはそれほど必要ではない。従業員は自然に受け入れており、すでに日常のツールとして溶け込んでいる」と評価を述べた。

 AI Companionの活用事例として、同社の営業チームやカスタマーサクセスチームは、メモの作成、チーム内でのやり取りの要約、クライアントとのやり取りの要約などに活用して、効率化を図っているとした。

 現在はあらゆるSaaSベンダーが、自社サービスへの生成AIの組み込みをアピールしているが、Zoomの差別化ポイントはどこにあるのだろうか。ZoomのCTOを務めるシュエドン・ファン氏は、次の3点を挙げた。

●フェデレーション型のAIスタック:複数ベンダーのAIモデルを適材適所で連携させて活用している。LLMはAnthropic、Open AI、Llamaのモデルを、またナレッジ検索ではPerplexityを利用できる。これに加えて、Zoom自身でも小規模言語モデル(SLM)を開発しており、これらの組み合わせで高品質、高性能なAIサービスを実現している。

●AIファーストのユーザー体験:自然言語で会話できる生成AIとGUIの組み合わせによって、使い勝手のよい、優れたユーザー体験を提供できる。

●システム・オブ・アクション:ユーザーの行動パターンをAIが学習してニーズを予測し、必要なアクションをとる。

 「“AIエージェント”という言葉が流行しつつあるが、Zoom AI Companion 2.0はすでに“スーパーエージェント”だ」(ファン氏)

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