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クラウドカメラで現場から価値を創る先進事例

気軽にばらまける“IoTの目”、ウェザーニューズと大成建設が「ソラカメ」で映すもの

福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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大成建設:目指すは施工管理の効率化、現場に最適化したソラカメ管理アプリケーションを共同開発

 続いて披露されたのは、大成建設によるソラカメの活用だ。同社は生産側からのDXを進める「生産技術イノベーション部」を設置しており、同部では“建設現場で活用できる”クラウドカメラシステムの開発を進めている。

 大成建設では2019年より、セルラー搭載カメラを全作業所に3台ずつ設置し、本社・支社からも監視・管理ができる体制を構築していた。同社の建築本部 生産技術イノベーション部長である松﨑重一氏は、「遠隔で現場を把握する有用性は理解した一方で、導入コストや電波が届かないエリアが多いことから、数台の導入にとどまっていた」と振り返る。

大成建設 建築本部生産技術イノベーション部長 松﨑重一氏

 そこでまず、2021年に建設現場のWi-Fi構築ソリューション「T-BasisX」を開発、本格的にWi-Fi環境を前提としたクラウドカメラシステムの検討を始めた。そして、ソラカメを展開するソラコムに声をかけ、施工管理向けの独自ウェブアプリケーション「T-SearchXシリーズ Build EYE(以下Build EYE)」を共同開発するに至っている。アプリ開発の理由は、ソラカメのカメラ自体は、Wi-Fi対応、防塵・防水性能、夜間撮影、Full HD画質と、建設現場でそのまま使える性能であったが、管理コンソールの使い勝手が不十分だったためだ。

 Build EYEでは、俯瞰しやすい「サムネイル表示」やアカウント毎に見たい映像を表示できる「お気に入り登録」、様々な軸で絞り込める「検索機能」など、大量のカメラ設置時にもすぐに必要な映像にアクセスできる機能を実装。ストリーミング視聴は同時で4台まで対応し、カメラの画角もリモートで調整可能だ。

Build EYEのサムネイル表示機能

カメラの向き(画角)もリモートで調節可能

 Wi-Fi構築ソリューションとソラカメに、Build EYEを加えることで、「多くのカメラを現場に導入できる世界をつくれる」と松﨑氏。「業務の中で負担になっている現場巡視の遠隔管理は、施工管理の効率化に直結する。インシデント発生時の記録や不正の抑止にも使える」とそのメリットを語る。さらに、画像分析AIや外部センサーと連携した新サービス開発にも期待できるという。

クラウドカメラシステムのコンセプト

 今後は、段階に応じて変化する施工の現場にあわせた運用・構築の手法を開発中であり、UIの最適化やメンテナンス体制の構築など本格展開に向けた改良を進めていく。

 最後に松﨑氏は「建設業のデジタル化の遅れは残念ながら顕著。データの活用基盤もまだまだ整っていないが、変革への臨界点は確実に近づいてきている。建設業界だけではなくICT、ロボットなどの最新技術にも精通する人材を育成しつつ、ソラコムのような総合力のあるパートナーと、来るべき未来への準備を進めていきたい」と締めくくった。

クラウドカメラの活用で広がる気象情報、建築現場の未来

 セッションの最後では、ソラコムのソラカメ セールス/事業開発リードである高見悠介氏を交えたパネルディスカッションが行われた。

高見氏:ソラカメの取り組みを披露いただきましたが、プロジェクトを通して気づきや課題はありましたか。

(ウェザーニューズ)上山氏:気づきで言えば、ユーザーの反応が好調だったこと。空を録ってシェアしたいという方が想像以上にいたことはうれしかったです。

(大成建設)松﨑氏:課題としてはカメラを通じて得られたデータをどれだけ有用にあつかえるか。建設業に詳しい開発者がほとんどいないという課題もありましたが、今回のプロジェクトは実質4、5か月しかかからず、こういうやり方もあるのかと驚きにつながりました。

ソラコム ソラカメ セールス/事業開発リード 高見悠介氏

高見氏:(松﨑氏へ)T-BasisXのようにWi-Fi環境まで整えようという企業は少ないと思いますがどのような背景で取り組まれたのですか。

松﨑氏:全現場にWi-Fi環境が必要になるという想いからです。施工の改革をしようとすると、センサーと連携するなどしていろいろなデータを取る必要があり、Wi-Fiが全ての基本になります。ビルはWi-Fi環境があると思われがちですが、建設中にはなく、LTEも20階以上のビルでは入らない。今後のために取り組みました。

高見氏:カメラからいろいろな情報がとれる環境が整ったわけですが、自社のサービスの発展をどう考えていますでしょうか。

上山氏:夢いっぱいだと思っています。API連携によって単に映像を垂れ流すだけではなく、データを取得するタイミングもコントロールできます。ソラカメでやりたいのは日本の空における貴重な映像を見逃さないこと。地震の緊急速報が鳴った際に、震度5以上の地区だけ映像を取得するなど、外部の気象データをトリガーにして集中的に観測できると、活用方法も広がります。

高見氏:必要な分だけデータを取るというのが重要になってきます。ウェザーニューズさんも、常にストリーミングデータを取得すると、とんでもないコストになってしまうため、1分間隔で静止画を取得してタイムラプス(静止画を連続して表示させる動画)で見せる仕組みを採用しています。コストを抑えて沢山のカメラを配布するサービスを実現した先進的な事例だと思います。

松﨑氏:建設業としては膨大なデータを取得した経験があまりない中で、まずはどう活用していくかという段階です。AI分析で工程管理ができるかもしれませんし、現場のどこでどれくらい仕事をしているかを分析できるかもしれません。「こんなカメラがあったら良いな」と思ってもらえるような、我々が考えるウェブカメラの未来図も近々出せるよう準備をしています。

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