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業務を変えるkintoneユーザー事例 第243回

社内の問い合わせを分散させる“アプリマイスター制度”も

本社の100人全員がアプリを作れるケアパートナー kintoneをExcelのような身近な存在に

2024年09月24日 11時30分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 kintoneユーザーによる事例・ノウハウの共有イベント「kintone hive 2024 Tokyo」が開催された。

 本記事では、3番手として登壇したケアパートナーの橋本崇氏のプレゼン、「アプリ作成者は本社全員である」をレポートする。

ケアパートナーの橋本崇氏

ケアパートナーのアプリ作成者は本社の“社員全員”

 ケアパートナーは大東建託の100%子会社であり、介護や看護、保育事業などを手掛け、全国に182拠点を構える。1999年に創業で、今年で26年目であり、社員数は3056人。kintoneは2016年に導入し、利用8年目を迎えた。

 kintoneを運用する際、アプリの作成権限をシステム部門の数名のみに与えるという体制をよく目にする。しかし、ケアパートナーではシステム部門だけではなく、人事や総務、経理、事業部門を含む本社の全社員約100名にアプリ作成権限を付与する。

本社の全社員にアプリの作成権限を付与

 ただ、この体制を活かすには、全社員にkintoneの使い方をレクチャーしなければいけない。同社がとったのは、サイボウズ公式のコンテンツを活用することだ。アプリ作成講座の動画を視聴してもらった上で、公式のアプリ作成マニュアルを展開した。この2点だけで理解は進み、システム部門が講師を務めたり、独自のマニュアルを用意する必要はなかったという。

「こうして、100名がアプリを作るようになると、新入社員に仕事を教える過程で、ExcelやWordの使い方と同様に、kintoneアプリの作り方を教えるという流れができました。kintoneは我々にとって身近な存在となり、なくてはならないものになったのです。ノーコードでアプリが作れるkintoneだからこそ定着したのだと考えています」(橋本氏)

kintoneの教育はサイボウズの公式コンテンツを活用した

実際に非IT部門の担当者が作ったkintoneアプリは?

 実際に社員のひとりが作った業務改善につながったアプリとして、「作業時間の管理ツール」が紹介された。

「皆さんは各業務の所要時間を把握しているでしょうか。資料作成や企画、問い合わせ対応、あるいは報連相に、どれだけ時間がかかっているか記録していますか?kintone導入前、ケアパートナーではExcel方眼紙を使っていました」(橋本氏)

 同社のExcelを使った管理では、行を継ぎ足しだけでフォームが壊れてしまったり、集計作業にも手間がかかるという課題があった。メールで提出されると、該当データが探しにくいという問題もある。最終的には、これらの理由で、情報の鮮度が低くなってしまった。

作業時間の管理にExcel方眼紙を使っていたが、いろいろと手間がかかっていた

 そこで作業時間の管理をkintoneアプリ化。仕事をした時間帯を午前・午後・残業時間からラジオボタンで選択し、どの業務を行なったのかを中項目としてプルダウンメニューから選ぶ。そして、小項目として自由入力欄を設け、具体的な業務を記入できるようにした。また、ルーチンと突発業務を切り分けるためのフィールドも用意している。

 業務時間の記録には、kintoneには時間フィールドがないため、“時刻”フィールドで代替。その時刻フィールドを集計するために「リソース」フィールドを用意し、自動計算させた。

 こうしてアプリに業務時間を入力し、データが蓄積されていくと、様々な情報をタイムリーに把握できるようになった。当月の作業時間はもちろん、前月集計、突発業務に要した時間、業務別の作業時間など、用途別の“表”を出力できる。たとえば、個人の「年間振り返り」表を出すのも一瞬で、ログインユーザーに紐づいた業務時間の詳細を分析できる。

様々な角度からの表をタイムリーに出せるようになった

 その他にも、長時間勤務の原因を聞かれた時にどの業務がどのくらい時間がかかったのかなど、会社全体の課題に対する原因分析を、ぱっと出せるようになった。kintoneアプリを作る以前だったら、手作業での集計でしか実現しえなかった改善だ。

残業の原因となったイレギュラー業務の抽出も簡単になった

 このような会社全体の変革を進められるアプリを、システム部門ではなく、非IT部門の担当者が作ったという。

 こうして100人がkintoneアプリを作れるようになった一方で、アプリに詳しい特定の人に、細かい質問が集中するという課題も生まれた。そこで今後は、複数の“アプリマイスター”という担い手を設けて、問い合わせを分散させる予定だ。

「会社が必要とするスキルの保有者に役割を与えて、その役務に応じた報酬を出すのが、“アプリマイスター制度”です。頑張ってる人に報いることで、意欲のある方を増やしていくのも狙いです。その結果、アプリの精度を高め、現場の業務が楽になり、保育士や介護士の皆さんがお客様に向き合う時間を創出できるようにするのが今後の構想です」(橋本氏)

今後は、kintoneアプリの相談を分散させる“アプリマイスター制度”を

アプリマイスター制度に必要となる条件は?

 プレゼン後にはサイボウズのパートナー第1営業部 沖沙保里氏から質問が投げかけられた。

沖氏:これからの取り組みだと思いますが、アプリマイスター制度、すごく興味があります。マイスター認定の条件はあるのでしょうか?

橋本氏:kintone認定のアソシエイト資格を取れば確実ですが、正直そこまでは必要ないと思っています。会社が必要とするアプリを作成できると感じた人を任命しようと考えています。

沖氏:それでは、kintoneアプリを沢山作ってきた人が転職してきたら、すぐにマイスターになれる可能性もあるんですね。

橋本氏:それは無条件で認定します(笑)

プレゼン後のアフタートークの様子

 

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