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お仕事悩み、一緒に考えます。#51

0歳児がいながら、働く。ベストなやり方は?

2024年08月10日 07時00分更新

文● 正能茉優

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働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!

 「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
 誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。

 何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。

今回のお悩みは「働く女性と、0歳児」について

 ASCII読者の皆さん、こんにちは! 正能茉優です。この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。

 今月のテーマは、「働く女性と、0歳児」について。

 初めての出産を先月終え、産後の自分の仕事ぶりに悩む女性からお便りをいただきました。

0歳児がいながら、仕事をする。ベストなやり方は?

 正能さん、はじめまして。私は先月第一子を出産し、3ヵ月後の仕事復帰を予定している者です。自身の仕事の都合、そして実家の母によるサポートなどのもろもろを踏まえ、子が4ヵ月のタイミングでの復職を予定しています。

 再来月には勤務先の人事との復職面談があるのですが、最近、本当に生後4ヵ月での復職でいいのか、悩み始めました。

 産前に考えていた考え・気持ちと今明らかに違うのは、

●子と一緒に過ごした方がいいのでは? 母親は自分しかいないという責任感と、子をどこか可哀想なのではないかと思う気持ち
●授乳をミルクに切り替える、保育園のスケジュールに合わせ昼寝などのリズムをつくるなど、子の毎日を変えられるのか・変えていいのかという不安
●こんな手がかかる生き物がいる状況で、本当に自分は仕事で価値発揮できるのかという不安

 といったあたりかと思います。

 そもそもまだ保育園の入園可否の結果が出ないので復職は確約ではないのですが、まずは自分の希望を明確にするにあたり、今自分が抱いている責任感や不安が今後どう変わっていき、それらに自分がどう向き合うべきかの解像度を上げていきたい状況です。

 そこで伺いたいのですが、実際にこの1年間、正能さんは「小さな赤ちゃんがいる状況での仕事」と「仕事がある状況での小さな赤ちゃんとの向き合い」について、どう考え、どう判断されてきましたか?

 以前も「仕事が好きで、仕事を頑張りたい女性の産休・育休」について書かれていた記事を拝見しましたが、それ以降の出来事も踏まえ、実際に0歳児の育児をしながら仕事する日々を送られている中でのリアルなコメントを参考にさせていただけるとありがたいです。
 プライベートな質問であることは重々承知しておりますので、答えられる範囲でぜひよろしくお願いします。

(タガワさん(仮名)・37歳・会社員)

「母である自分」と「仕事人である自分」

 お便りありがとうございます!そしてご出産おめでとうございます。

 生後間もないほやほやの赤ちゃんがいる生活は、我が家では1年近く前の出来事ですが、もうすでにあの頃が懐かしく、あの頃の我が子にもう一度会ってみたいです。

 ただ、あの頃の自分にはもう戻りたくない……(苦笑)。産後の体もきつく、それなのに頻回授乳で眠くて眠くて、本当に大変な時期かと思います。

 そんな状況下での復職の検討、本当にお疲れ様です。

 さて、本題に入るにあたり、まずは私のこの1年間の仕事と子の動きを、まとめてみました。

 私の場合、以前の記事でも書いたように重度の「母乳過多」という体質で、どうしても物理的に子と自分が近くにいる必要があり、生後3ヵ月以降の今まで、常に自宅にナニーさんにいてもらいながら、仕事をしてきました。

タイミング 出来事 仕事の場所 子の預け先 子の食事
2023年8 月(生後0ヵ月) 出産。オンラインでの取締役会等には産後数日より参加 自宅 実家の母 母乳+生後5ヵ月頃より離乳食
2023年11月(生後3ヵ月) 会社員として復職。裁量労働制ではあるが、ベースは9時〜18時のフルタイム勤務。残業も 自宅をベースに、月数日程度は、数時間外出 ナニーさん
2024年4月(生後8ヵ月) 時短勤務に切り替え。裁量労働制ではあるが、ベースは8時〜15時の勤務。終わらぬ場合は20時以降に ナニーさん

 今回ご質問いただいた「0歳児と仕事」ですが、初めてかついきなり、母というロールを任された女性が、様々な気持ちを抱きながら戸惑うのは当然のことだと思います。

 可愛さや愛情もあるものの、それは純度100%のものではなくて、責任感とか不安とか、さらに踏み込めば不満とか、本当に様々な感情が自分の中にありますよね。

 私の場合、それらの感情が自身の思考をモヤつかせ、復職について、なかなか答えを出せない状況が続きました。

 ただ、ひとたびその状況の当事者ではなくなった今冷静に思うのは、考えるべきことはとても単純で、「シンプルに考えられたらラクだったな」ということです。ということで今日はシンプルに考えられるきっかけになるような記事にできたらなと考えています。

復職の検討に必要な、ただ2つの問い

 復職を検討する際、私たちは、「①復職するのか?しないのか?」「②するならどんな形で復職するのか?」という2点の答えが出せれば、自身の復職の大枠は決められるんじゃないかと思います。

 まずは①を判断するにあたって必要になるであろう『復職する/しないワークシート』をつくってみたので、ぜひこちらで自分の今の気持ちや判断を整理してみてください。

 復職する/しないを判断するにあたり、必要な問いは3つ。

1. 復職なしには家族の最低限の衣食住を保てないか?
2. 復職したい/すべきと考える理由・事情があるか?
3. 復職したくない/すべきではないと考える理由・事情があるか?

 非常にシンプルな問いではあるものの、難しいのは「復職したい/すべき理由もあるが、復職したくない/すべきではない理由もある」という右上の場合です。

 思い返せば私自身もこの状況でしたし、私の周りで早めに復職している人たちもこの状況ながらに結果復職している人が非常に多い印象があります。例えば、「仕事はしたいけれど、子と一緒に過ごしたい気持ちもある」とか「仕事をする必要があるけれど、子と一緒に過ごす必要だってある」というパターンです。

 これらは比較的よく見られるパターンではありますが、当事者になると、答えを出すのが非常に難しかったです。

 その背景には、子供にとっては? 自分にとっては? 家族にとっては? と複数の目線があること、さらに今は? この先は? と複数の時間軸があることがあると思います。

母である自分、そして仕事人である自分はどうしたいか、今はどうできるか?

 そこで次に進めたいのが、「復職したい/すべき理由もあるが、復職したくない/すべきではない理由もある」場合に、結局どうするのかを決めにいく思考です。

 これらの思考・検討は、気持ち/感情に非常に近いところにあるため、どうしても、ざっくりとしたその場での個別論になりがちですが、それらを総じて、結局どうしたいかを判断する必要があります。

 「子と一緒にいたい。でも仕事もしたい。か仕事しておいた方が子の将来の選択肢が増えるかもしれない。そう思うと、子と一緒にいるべきではないのでは?」という個別具体の積み重ねから、「だから私はこうする」を決めていくイメージです。

 当時私が、一つ一つの不安や懸念の解像度をもう一段上げ、さらには、それらを比較検討できるようにつくっていたフレームワークを、『復職迷っている人向けワークシート』に仕立ててみたので、もしよかったら使ってみてください。

自分 家族
短期 中長期 短期 中長期 短期 中長期
復職したい・すべきと考える背景 1 2 3 4 5 6
復職したくない・すべきではないと考える背景 7 8 9 10 11 12

 ここで考えを巡らせる順序は、以下の通りです。

1. 自分にとって/子にとって/家族にとってという3つの目線に、2つの時間軸を掛け合わせた12マスに対して、自分の今の率直な気持ち・考えを書いてみる
2. まず、7〜12については、乗り越える方法・受け入れられるやり方がないかを模索する。方法とやり方があるものについては、取り消し線を。方法とやり方がないものについては7〜12の懸念事項として残しておく
3. ②で残った7〜12をもとに、1〜6をもう一度見直し、1〜6を見直すことで乗り越えられる7〜12があるか検討する。難しい場合には、1〜6のそのままに
4. ②と③を比べて、最終的にどうしたいか決める

 次回、「実際に私がどのようにこの12マスを埋めて、今の答えを出したのか」、さらに「復職の形をどう選んだのか?」について、お伝えさせてください。

 どのような判断にせよ、全方位で100%納得することは難しいかと思いますが、だからこそ、「こんなに考えたのだから」という思考の軌跡が、今後働いていく、あるいは子を育てていく上でのお守りになるはずです。

 どうか少しでも腹落ちできる材料が集められるお手伝いができることを願っています。

 

筆者紹介──正能茉優

ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア「サラリーズ」事業責任者

1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における2つの新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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