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有機EL搭載&真のプロ仕様になったiPad Proに、Apple PencilもProに進化! 春のiPad祭り特集 第21回

【レビュー】Macよりも先にM4搭載「iPad Pro 13インチ」はアップル最高密度のモデルだ!

2024年07月15日 12時00分更新

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iPad Proのリアカメラからは「超広角」カメラが削除された

こっそり省かれたリアの超広角カメラ

 一般的に、新製品や新モデルの発表時には、採用されなかった機能や旧モデルから省かれたり劣化した機能、性能については言及しないのが常識だ。よもやそのような事象が、今回のiPad Pro M4でも発生していたとは意外だった。リアのメインカメラとして、前モデルまであった「超広角カメラ」が削除されてしまった。また同様に、前回まであった「2倍の光学ズームアウト」機能もなくなってしまった。

 公式のスペックには「超広角カメラ」という言葉は残っているが、それはフロント側のTrueDepthカメラとしてのみだ。撮影する方向も用途も異なるから、当然ながらそれで代用するわけにはいかない。これまで、リアの超広角カメラをスキャナーとして使うようなワークフローを構築して使っていた人は、何らかの回避策を考える必要があるだろう。

リア/フロントカメラのスペック比較

 フロントカメラについては同時に発売されたiPad Airと同様に、ディスプレイのベゼルの短辺ではなく長編の中央に移動している。これまでは、ビデオ会議などでiPad Proを横向き(ランドスケープ)に設置していると、カメラの位置がディスプレイの右または左に寄ってしまい、視線の方向が不自然になりがちだった。それが解消されたのは喜ばしい。

フロントカメラは横向きに置いた際にベゼルの中央に位置するよう変更された

 iPadの場合、iPhoneほどカメラの重要性が高くないのは理解できる。またおそらく、リアの超広角カメラを実際に利用するユーザーは少ないといった調査結果があったのかもしれない。しかしここにきて、iPadのハイエンドモデルでカメラをダウングレードするというのは、どうにも残念な気がする。もし、本体の薄さを追求するためには、こうせざるを得なかったということであれば、薄さを取るかカメラを取るかでユーザーの意見も分かれることになるだろう。

iPad Airにはやや劣るバッテリー持続時間

 本体の薄さを追求した新しいiPad Proではその分バッテリーの体積を確保することが難しくなるから、バッテリー容量や実際の持続時間がどうなったのか心配になる。以前のモデルと容量を比べてみると、11インチモデルでは本体の厚みが5.9mmから5.3mmへと薄くなったにも関わらず、バッテリー容量は28.65Whから31.29Whへと増えている。これは一種のマジックといってもいいかもしれない。

 一方の13インチモデルでは、本体厚みは6.4mmから5.1mmへと1mm以上も薄くなり、バッテリー容量も40.88Whから38.99Whへとわずかながら減少している。厚みが20%ほど減っていることを考えると、約5%というバッテリー容量の減少は誤差範囲といえる程度だ。

電源まわりの仕様比較

 スペック上のバッテリー持続時間は、アップル独自の「Wi-Fiでのインターネット利用、ビデオ再生」で「最大10時間」となっている。これは少なくとも上の表にあるモデルはすべて同じ数字で、まったく当てにならない。そこで、実際にWi-Fi経由でインターネットに接続し、YouTubeのプレイリストとして編集したApple EventのビデオをSafariを使ってフルスクリーンで連続再生可能な時間を計測するテストを実施した。音量は消音状態から本体のボタンで1段階上げ、画面の明るさはスライダーで暗い方から4分の1程度の位置とした。

 フル充電状態でアダプターを外して再生を開始し、バッテリー残量が0%となって強制スリープとなるまでの時間は19時間43分だった。同じ条件でテストした前任のM2モデルでは19時間8分だったから、いずれもわずかながらバッテリー容量は減っていても持続時間は延びている。M4の消費電力を考慮し、そのあたりのバランスを取った設計が施されているのだろう。ちなみに、同じテストでiPad Airの13インチM2モデルは21時間47分だったので、それにはやや劣る。いずれにしても、アップルの公式なiPadのバッテリー持続時間はかなり控えめで、iPad AirやiPad Proではだいたいその2倍はもつものと考えてよさそうだ。

 その後、バッテリーが空の状態から充電を開始し、iPadの画面を表示したまま特にアプリは動かさず、残量が100%となって充電が自動停止するまでの時間を計測した。これは付属の20Wの電源アダプターを使って3時間8分だった。こちらは同じ条件で計測したiPad Air 13インチの2時間50分と比べてやや長いが、iPad Airのバッテリー容量が36.59Whであることを考えると、妥当なところだろう。

iPad Proに付属の20Wの電源

 iPad Proは、これまでに人類が手にした最もモダンで高性能なタブレットであることは間違いない。特にM4チップの処理能力とUltra Retina XDRディスプレイの表示品質は、群を抜いている。これらは、現状ではMacBook Proを凌ぐものといえる。MacBook Proと比べると、拡張性では難があると思われるかもしれない。確かにMacBook Proは3つのThunderbolt 4、HDMIの各ポート、SDXCカードスロットなどを備えている。1つのThunderbolt / USB 4ポートしか備えないiPad Proは、やや窮屈な感じがするが、Magic Keyboardを使えば不自由さをかなり解消できるだろう。Magic Keyboard側に充電用のUSB-Cケーブルを接続することで、iPad Pro本体を充電しながらiPad Proのポートは周辺機器接続用に確保できるからだ。

Magic Keyboardと組み合わせて使えば、充電の心配なくUSB-Cポートを常に周辺機器接続用に使える

 MacBook Proを凌ぐほどの高性能と、より優れた表示品質を身につけたiPad Proには、その能力を活かし切ることのできるアプリが必要だ。アップル純正アプリとしてはFinal Cut ProやLogic Proも登場し、サードパーティ製も含めてプロ用iPadアプリも充実してきている。iPad Proを選ぶ際にはそうしたアプリの動向にも注目し、本当に自分のニーズを満たす組み合わせを検討すべきだろう。

 今回のアップグレードで、11インチと13インチの差は単純なサイズの差でしかなくなった。それだけに両モデルのどちらを選ぶべきか。選択はかなり難しくなったといえる。

 

筆者紹介――柴田文彦
 自称エンジニアリングライター。大学時代にApple IIに感化され、パソコンに目覚める。在学中から月刊ASCII誌などに自作プログラムの解説記事を書き始める。就職後は、カラーレーザープリンターなどの研究、技術開発に従事。退社後は、Macを中心としたパソコンの技術解説記事や書籍を執筆するライターとして活動。近著に『6502とApple II システムROMの秘密』(ラトルズ)などがある。時折、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士として、コンピューターや電子機器関連品の鑑定、解説を担当している。

 

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