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「Salesforce World Tour Tokyo 2024」基調講演レポート

ソニー・ホンダの「AFEELA」とセールスフォースのAIが示す、カスタマーサービスの未来像

2024年06月20日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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AI企業に変革するための5つのステップ

 基調講演では、セールスフォースが支援する、AI企業に変革するための“5つのステップ”についても説明された。

セールスフォースが展開するAI企業に変革するための5つのステップ

 ひとつ目のステップが、「Customer 360の構築」だ。Customer 360は、営業やサービス、マーケティング、コマース、Slack、Tableauなど、同社のアプリケーションを統合し、あらゆるタッチポイントをつなぐ単一のプラットフォームである。同社は、この各アプリケーションに対して生成AI機能の統合を進めている。

 この生成AI機能を支えるのが「Einstein 1 Platform」である。信頼性を確保した上で、各社のLLM(大規模言語モデル)にオープンで対応、各アプリケーションでの生成AI活用を実現する。今後、NTTのtsuzumiやNECのcotomiなど、国産LLMとも連携を強化していく予定だ。

企業のAI活用のためのプラットフォーム「Einstein 1 Platform」

 2つ目のステップは、「企業内データの統合」だ。Einstein 1 Platformに組み込まれた顧客データプラットフォーム(CDP)「Data Cloud」は、Customer 360の各アプリケーションやデータレイク、データウェアハウスなどに存在する、あらゆるビジネスデータを集約。これらのデータを、生成AI機能におけるグラウンディング(生成AIに根拠づけとして特定の知識や情報を与えること)として反映する。

「Data Cloud」の仕組み

 基調講演では、レガシーシステムも含む、他社のシステム内のデータをData Cloudに接続するための「Data Cloud Connectors」の200以上の拡張や、Data Cloudとの「ゼロコピー」でのデータ統合をサポートするエコシステム「Zero Copy Partner Network」など、Data Cloudの新たな強化についても紹介された。

Data Cloud Connectorsの拡張

Zero Copy Partner Network

 3つ目のステップは、「AIと働く環境の構築」だ。セールスフォースでは、各アプリケーション上でシームレスに生成AI機能を利用できる“組み込み型AI”だけではなく、“対話型AI”である「Einstein Copilot」も提供する。Einstein Copilotは今後、Customer 360のすべてのアプリケーションで実装され、自然言語を介した対話形式で、各部門の業務をサポートする。日本語対応のベータ版が、2024年10月に提供開始予定だ。

対話型AIであるEinstein Copilotの日本語ベータ版は2024年10月に

 生成AI機能を組み込んだSlack AIの提供が始まったSlackにおいても、CRMと連携してリアルタイムにアクションを行なえる「Copilot in Slack」が、2024年10月に日本語対応予定だ。

Copilot in Slackが2024年10月に日本語対応予定

 4つ目のステップは「AIによるデータ分析」だ。誰でもデータの専門家になれるよう実装されるのが、BIツールであるTableauに生成AI機能が加わった「Tableau Pulse」だ。ビジネス上の重要な指標におけるインサイトを、メールやSlackなどで日々届けてくれる。2025年1月末までに日本語対応予定だ。

 また、データ分析に特化したEinstein Copilotである「Einstein Copilot for Tableau」は、2025年7月末までに日本語対応予定だ。対話型AIが、データの準備から可視化まで、データ活用に必要な作業をサポートしてくれる。

Tableau Pulseは2025年1月末までに日本語対応予定

Einstein Copilot for Tableauは2025年7月末までに日本語対応予定

 最後のステップは、「信頼できるAIを実装」することだ。Einstein 1 Platformは、業務を効率化する自動化やAIアシスタントを構築することもできる。

 対話型AIのEinstein Copilotは、従来のフローによるアクションと自動化を組み合わせ、動的なアクションまでを実行できる。例えば、Einstein Copilotに、「同僚にウェルカムメッセージを送って」と指示すると、レコードやフローの中から最適なプランが立てられ、メッセージ内容を提案しつつ、代わりにSMS送信までしてくれる。このような仕組みは、ローコード・ノーコードで構築することが可能だ。

Einstein Copilotによる動的なアクションの仕組み

 生成AI機能をカスタマイズするためのツールキットである「Einstein 1 Studio」は、2024年3月より提供されている。プロンプトビルダーは、クリックするだけで呼び出せるプロンプトのテンプレートを作成できる機能だ。モデルビルダーは、独自にファインチューニングされた外部のAIモデルに接続できる。Einstein Copilotのアクションをカスタマイズできる「コパイロットビルダー」も、同サービスの日本語対応とあわせてベータ版が始まる予定だ。

Einstein 1 Studio

 小出氏は、「全社をあげて、この5つのステップで企業のトランスフォーメーションを支援していく。そして重要なのは、AIを推進することで、経済圏に対しても大きな影響を与えられること。すべてのトレイルブレイザー(先駆者)の皆さまと、より良い社会の実現に向けて、AIトランスフォーメーションを加速していきたい」と締めくくった。

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