エリアLOVEWalker総合研究所リポートXトレンド解析 Vol.11

グルメ、体験、思い入れ?ふるさと納税は何で選ぶ! Xトレンド解析月次リポート第11弾、2023年「ふるさと納税」TOP100を発表!!

文●祖慶良磨(エリアLOVEWalker総合研究所)

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 X(旧Twitter)トレンド解析システムによる解析リポートを公表していく、エリアLOVEWalker総合研究所リポート。第11弾のテーマは「ふるさと納税」。今回は2023年1月1日から2023年12月31日の1年間において、X上で「ふるさと納税」のキーワードと共に言及された全国の市町村ベスト100を発表する。

Xトレンド解析
ふるさと納税×自治体名
言及数ランキング TOP100

調査機関:角川アスキー総合研究所

集計期間:2023年1月1日~2023年12月31日

解析対象:日本国内の自治体名と「ふるさと納税」というワードを含む含むX(旧Twitter)上での投稿

抽出件数:231,015件

順位 自治体名(都道府県名) 話題流通量
投稿数/
アカウント数
男性:
女性比
ポジ:
ネガ比
主な共起語
(その共起語がXでの投稿全体に占める比率)
1 別海町
(北海道)
24,977
56.%
44%
5%
1%
中国(46%)、漁師さん(46%)、ホタテ(46%)、欲しい(46%)、イクラ(38%)、応援(33%)
2 山形市
(山形県)
11,986
78%
22%
1%
0%
山形(98%)、ブランド(97%)、体験(97%)、ミニゲーム(97%)、アプリ(97%)、宿泊(78%)
3 都城市
(宮崎県)
9,337
54%
46%
20%
3%
寄付(23%)、高城(12%)、日本一(12%)、宮崎牛(11%)、移住(8%)、VTuber(5%)
4 宮崎市
(宮崎県)
9,049
54%
46%
5%
1%
キャンペーン(82%)、ウナギ(55%)、宮崎牛(39%)、日本一(35%)、内閣総理大臣賞(31%)
5 行方市
(茨城県)
8,820
51%
49%
2%
2%
スイーツ(85%)、バスクチーズケーキ(85%)、産地直送(67%)、紅はるか(5%)、ミルキークイーン(3%)
6 長浜市
(滋賀県)
7,976
73%
27%
1%
0%
ペストマスク(100%)、レザー(100%)、工房(100%)
7 川崎市
(神奈川県)
7,714
91%
9%
43%
2%
流出(46%)、政策(39%)、影響(18%)、キムチ(3%)、釜揚げわらび餅(1%)
8 村上市
(新潟県)
7,385
59%
41%
97%
0%
村上牛(97%)、美味しい(2%)、温泉(2%)、宿泊(2%)、サーモン(2%)、旅行(2%)
9 いわき市
(福島県)
7,185
90%
10%
20%
1%
処理水(55%)、応援(42%)、風評被害(27%)、支援(26%)、負けないで(25%)、漁業(22%)
10 石垣市
(沖縄県)
6,676
89%
11%
21%
1%
尖閣諸島(73%)、情報(57%)、観光(30%)、実態調査(29%)、ドローン(28%)

 「ふるさと納税」言及数ランキング、TOP10の表。右端の「共起語」とは、ふるさと納税とともにつぶやかれたキーワード。共起語が複数つぶやかれることもある。ポジ/ネガ判定は、Xトレンド解析システムで独自に投稿の感情分析を行った結果だ。

 「ふるさと納税」の言葉通り、上位10位の9割を地方都市が占める結果に。やはり海産物やスイーツなど特産品を使った返礼品が人気で、6位の滋賀県長浜市では返礼品の「長濱レザーのペストマスク」がSNSで注目を集めた。長浜市のある湖北に根付くべんがら造りの日本家屋に、防水・防腐・防虫のため使用されるべんがらを塗布した長濱レザー。高い品質をもつレザーを使ったペストマスクは寄付額が26万7000円と高額で、ビジュアルのインパクトでメディアにも取り上げられ話題となっていた。

 一方で、人気の返礼品にだけ世間の関心が集まるのではなく、“納税”という社会的な側面からか、その税金の使い道を取り上げる報道やポストも多く取り上げられている。首都圏で唯一TOP10入りした7位の神奈川県川崎市は、ふるさと納税による2023年度の税収の減収額が121億円と発表され、関連した「流出」「政策」「影響」といった言葉が並ぶ。10位の沖縄県石垣市ではふるさと納税で集まった寄付金で実施された、ドローンによる尖閣諸島調査に関するポストが多く投稿されている。

●さとふる「長濱レザーのペストマスク」紹介ページ
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1284486

●長浜市公式サイト「ふるさと納税」案内ページ
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000002336.html

Xデータで選んだふるさと納税TOP5を分析、上位の市町村が人気を集める意外な理由とは?

 では、Xでの投稿数でTOP5に入ったふるさと納税の寄付先を見ていこう。Xはリアルタイムで投稿がポストされていくので、話題となったイベントやコンテンツによってバズを起こすことが、ランキングに大きく影響する。今回のランキングでは、単純な返礼品の人気だけではなく、納税者の想いが後押しする自治体が上位にランクインしている。

 Xトレンド解析の月次リポート「ふるさと納税」の1位に輝いたのは北海道の「別海町」。言及数は24,977件と2位と倍以上の数で圧倒的。返礼品の「ホタテ」「イクラ」など北海道名産の海産物が共起語の上位に並んでいるが、「中国」「漁師さん」など返礼品以外のキーワードも多く含まれている。

 これは2023年8月に中国が日本の海産物の輸入を全面禁止したことに起因する。中国輸出向けの海産物に余剰が発生し、X上でも日本の漁業を助けようと呼びかけるポストやキャンペーンが展開され、特に輸出先の大半が中国だったホタテが余る自体に。そこで別海町では返礼品のホタテに関するPRを展開し、それに呼応するかのように寄附の希望や、漁業関係者を応援するポストが多く投稿されていた。

 ちなみに、昨年10月にふるさと納税の返礼品の寄付金額に関する新ルールが適用され、多くの返礼品が増額されていたが、別海町ではホタテの寄附金額の増額を見送っており、寄付に対する還元率が高いとして全国から注目を浴びていた。

●ふるさとチョイス「【ホタテ禁輸措置生産地支援品】★NC★ 野付の大粒ホタテ!大粒 ほたて は別海町!【大粒ほたて】20粒前後 冷凍 ほたて貝柱」紹介ページ
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/01691/5366129?city-product_rank

●別海町公式サイト「ふるさと納税」案内ページ
https://betsukai.jp/gyosei/furusato/

別海町の主力水産品の一つである大きく肉厚で甘みのある貝柱が特徴のホタテ

 2位は山形県「山形市」で、投稿数は11,986件。こちらの投稿内容は特徴的で、返礼品に関する話題は少なく、ポストのほとんどが「山形ブランドメンバーズ事業Abez(アベズ)」に関するもの。「Abez」は山形市が情報発信、地域活性化を目的とした事業で、公開しているオリジナルアプリでは、ふるさと納税やミニゲームなどでポイントをためて山形ブランド体験に応募することができる。このキャンペーンに関するポストで2位となる拡散力は興味深いところだ。

●「Abez」特設サイト
https://abez-yamagata.jp/

●山形市「ふるさと納税特設サイト」
https://www.furusato-yamagata.jp/

 3位は宮崎県「都城市」。投稿数は9,337件。都城市は2022年度のふるさと納税寄附受入額が日本一となり、その額は約196億円。2023年も地元のブランド豚「高城の里」や「宮崎牛」など返礼品に関するワードが多くみられ、肉系グルメの人気の高さがうかがえる。また、同市では焼酎メーカー売上高ランキングで10年連続1位を記録する霧島酒造があり、「焼酎」の文字もあり魅力的な特産物が返礼品として揃っている。

●都城市「ふるさと納税特設サイト 都城」
https://furusato-miyakonojo.jp/

肉用牛、豚、鶏の合計畜産産出額が日本一で、焼酎売上高日本一の霧島酒造がある都城市は、返礼品を「肉と酒」に特化してリニューアルし成功を収めた

 4位は宮崎県「宮崎市」。投稿数は9,049件。3位「都城市」と同じ宮崎県から僅差で4位となる宮崎市でも、「日本一」や「宮崎牛」の言葉が多くポストされている。これは5年に1度開催され“和牛のオリンピック”と呼ばれる第12回全国和牛能力共進会で、宮崎牛が史上初4大会連続で内閣総理大臣賞を受賞し「おいしさ日本一」と称されているからだろう。また「ウナギ」など宮崎牛以上にポストされている返礼品もあり、宮崎県のポテンシャルの高さは驚異的だ。

●宮崎市「宮崎ふるさと愛寄付金」
https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/furusato/

日本最高峰の和牛「宮崎牛」。宮崎市のふるさと納税では宮崎牛ロースステーキ750g(250g×3枚/寄附額2万円)があり、日本一の称号を持つ和牛を自宅にお取り寄せできる。

 5位は茨城県「行方市」。投稿数は8,820件。ランキング上位の地域では魚介、畜産の特産品が目立っていたが、行方市では「スイーツ」「バスクチーズケーキ」など特産のイモ[2] を使ったグルメに話題が集中。また、2023年1月に店舗型ふるさと納税サービス「ふるさとズ」を導入し、同年7月から利用できるようになった「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」の関連ワードも多く言及されている。

●行方市「ふるさと納税特設ページ」
https://www.city.namegata.ibaraki.jp/page/page003942.html

“ふるさとズ”を利用してミュージアム見学や食事・買い物が楽しめる「らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジ」

気になるX全量データが選んだふるさと納税TOP100

 11位以下は表を参照。

順位 スポット名、イベント名、などの見出しを設定してください(都道府県名) 投稿数 アカウント数
11 世田谷区
(東京都)
5,844
12 岡垣町
(福岡県)
5,347
13 京都市
(京都府)
4,282
14 上士幌町
(北海道)
4,100
15 泉佐野市
(大阪府)
3,750
16 紋別市
(北海道)
3,481
17 瀬戸内市
(岡山県)
3,268
18 白糠町
(北海道)
3,164
19 長岡京市
(京都府)
3,112
20 土佐市
(高知県)
3,027
21 南島原市
(長崎県)
2,923
22 枚方市
(大阪府)
2,912
23 沼津市
(静岡県)
2,910
24 神戸市
(兵庫県)
2,115
25 飯塚市
(福岡県)
1,972
26 美幌町
(北海道)
1,852
27 敦賀市
(福井県)
1,779
28 上峰町
(佐賀県)
1,768
29 妹背牛町
(北海道)
1,733
30 富士吉田市
(山梨県)
1,619
31 大蔵村
(山形県)
1,591
32 根室市
(北海道)
1,585
33 湯沢町
(新潟県)
1,550
34 片品村
(群馬県)
1,509
35 函館市
(北海道)
1,486
36 千歳市
(北海道)
1,442
37 明石市
(兵庫県)
1,425
38 境町
(茨城県)
1,424
39 富士宮市
(静岡県)
1,386
40 高森町
(長野県)
1,386
41 横浜市
(神奈川県)
1,380
42 気仙沼市
(宮城県)
1,372
43 さいたま市
(埼玉県)
1,334
44 名古屋市
(愛知県)
1,290
45 浦安市
(千葉県)
1,244
46 旭川市
(北海道)
1,203
47 焼津市
(静岡県)
1,193
48 須坂市
(長野県)
1,167
49 綾町
(宮崎県)
1,153
50 諫早市
(長崎県)
1,132
51 志布志市
(鹿児島県)
1,099
52 渋谷区
(東京都)
1,042
53 奈良市
(奈良県)
1,028
54 洲本市
(兵庫県)
1,025
55 甲府市
(山梨県)
1,021
56 五泉市
(新潟県)
1,005
57 平戸市
(長崎県)
983
58 札幌市
(北海道)
965
59 小林市
(宮崎県)
955
60 鶴岡市
(山形県)
935
61 壮瞥町
(北海道)
935
62 北九州市
(福岡県)
926
63 高槻市
(大阪府)
907
64 尾道市
(広島県)
903
65 寒河江市
(山形県)
897
66 桜川市
(茨城県)
889
67 白子町
(千葉県)
873
68 八幡平市
(岩手県)
868
69 三条市
(新潟県)
859
70 砂川市
(北海道)
852
71 水戸市
(茨城県)
851
72 新宮町
(福岡県)
846
73 碧南市
(愛知県)
839
74 天童市
(山形県)
820
75 花巻市
(岩手県)
819
76 富士河口湖町
(山梨県)
816
77 天草市
(熊本県)
805
78 坂井市
(福井県)
802
79 肝付町
(鹿児島県)
799
80 高鍋町
(宮崎県)
798
81 高砂市
(兵庫県)
794
82 大洗町
(茨城県)
786
83 福岡市
(福岡県)
777
84 白浜町
(和歌山県)
773
85 恩納村
(沖縄県)
768
86 相模原市
(神奈川県)
756
87 和気町
(岡山県)
748
88 東川町
(北海道)
744
89 泉大津市
(大阪府)
741
90 中野区
(東京都)
736
91 倉吉市
(鳥取県)
735
92 佐川町
(高知県)
710
93 朝倉市
(福岡県)
706
94 東御市
(長野県)
694
95 一関市
(岩手県)
692
96 広尾町
(北海道)
690
97 室戸市
(高知県)
679
98 長崎市
(長崎県)
673
99 八代市
(熊本県)
670
100 関市
(岐阜県)
666

【Xトレンド解析】ふるさと納税ランキング11位~100位。23位の静岡県「沼津市」は、同市が舞台となっている人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」とコラボした返礼品が話題となり、2023年度のふるさと納税寄附額が目標としていた40億円を突破している。また、33位の新潟県「湯沢町」では世界的人気のロックフェス「FUJI ROCK FESTIVAL」のチケットが返礼品に登場し、音楽ファンからも注目を集めて広く拡散されたようだ。

 ふるさと納税と合わせて言及された市町村TOP100では、やはり全体的には人気や話題性のある返礼品がキーワードに。しかし、上位10位は返礼品だけではなく時事ネタと絡めてポストされる傾向にあるようだ。グルメや特産品に加えて施設やイベントのチケットなど体験型の返礼品といった、バリエーション豊かになったふるさと納税。税金など難しいと敬遠していた人も、自分の趣味に合った返礼品を探してみるだけでも楽しめそうだ。

 角川アスキー総合研究所は2015年に、東京大学生産技術研究所喜連川・豊田研究室と、アジア圏で唯一ツイートデータの全量を取り扱うことができるNTTデータ、そしてTwitter Japanと共同で「Twitterトレンド解析システム」を開発した。それ以来、当社が持つエンターテインメント用語辞書(200万語以上)に収録されたワードをもとに、日本国内でのエンターテインメント分野に関するツイートを対象にした解析を行っている。

 解析内容としてはツイート内でのワード出現傾向の分析に加えて、ツイートテキストを対象にした投稿者の推定属性情報(NTTデータ提供)や、各種統計データなどを組み合わせた分析などを行っており、報道機関や、企業・自治体等に幅広く活用されている。なお、「X(旧Twitter)トレンド解析システム」によるXのリアルタイムな集計結果は、「ついラン」でも見ることができる。

 今回の集計の詳細は以下のとおり。

集計期間:2023年1月1日~2023年12月31日
解析対象:ふるさと納税を含むX(旧Twitter)上での投稿
抽出件数:23万1,015件(上位100位までの総投稿数)
※上記集計期間中、「Xトレンド解析システム」にて取得した投稿数4億6181万4,267件の中から、上記調査対象ワードを含む投稿23万1,015件を抽出し、言及数順にて100位までのランキングを作成した。

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