Woman's ways代表・潮田玲子さん/これまでの人生で一番大きなシフトチェンジは?

文●富永明子(サーズデイ) 撮影/森川英里 スタイリスト/今井聖子 ヘアメイク/城所とも美

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 人生100年時代といわれる昨今、自分らしい働き方や暮らし方を模索する女性たちが増えている。そんな女性たちに役立つ情報を発信するムック『brand new ME! ブランニューミー 40代・50代から選ぶ新しい生き方BOOK vol.1』(KADOKAWA刊)から抜粋してお届けするインタビューシリーズ。今回は、元バドミントン五輪選手だった潮田玲子さんに、人生のシフトチェンジについて聞いてみた。

2012年の五輪出場後に現役を引退。この10年はキャスター・コメンテーターとして活躍するほか、女性アスリートをサポートする組織を立ち上げ、2人の子どもの母としても多忙な毎日を送ってきた。

変わらぬ自分らしさと、変わり続ける力で新たな扉を開く

——潮田さんにとって、これまでの人生で一番大きなシフトチェンジは?

 やはり競技生活を現役引退したタイミングですね。北京オリンピックのときに引退するかどうかで悩んだのですが、そのとき「バドミントンなくして私はこの先、どうやって生きていけばいいんだろう」と急に怖くなったんです。それで、次のロンドンオリンピックまでの4年をかけて、セカンドキャリアを見据えながら心の準備をしていきました。

——どんなふうに準備をしましたか?

 とにかく競技生活にやり残したことがないように、一つずつ。オリンピックを目指すのは本当に険しい道なんですよ。その上、私は女子ダブルスから混合ダブルスに種目を変えたので、ゼロからのスタート。最初の2年くらいは、ずっと暗いトンネルの中を歩いているような状態でした。最終的には目標であったロンドン五輪出場を果たすことができ、大変な状況の中でもやり遂げたことは大きな自信に繋がりました。本当に大切な4年間でした。

——キャスターの道に進まれた当初は戸惑いもありましたか?

「頑張り方がわからない」という壁にぶつかりました。スポーツは、練習して試合で出てきた課題をクリアしていくことの積み重ねですよね。でも、キャスターの仕事には正解がないので、途中で「私はちゃんとキャリアを積み重ねられているのか」と不安を抱えたことがあります。

——その状況をどのようにして打破したのでしょうか?

 私は競技生活で「手を抜かなかったら、それは絶対に成果に繋がっていく」ということを学んできました。だから、正解はわからないけれど、とりあえず目の前の仕事を100%の力で頑張ろうと思ったんです。そうやって続けていくうちに、自分の中の引き出しが増えてきたとか、だんだん成果を感じられるようになりましたね。

——諦めそうになったとき、どうやって自分を鼓舞していますか?

 原点に立ち返ることが大切だと思います。「なぜ自分はそれを選んだのか」を自分自身に問いかけると、自分にはこれしかないという想いとか、何かに貢献したいとか、誰かにいい影響を与えたいとか、いろんな答えが出てくるんです。時間をかけて自問自答を繰り返すことで原点になった想いが見えてくると、また頑張れます。

——いまチャレンジしてみたいことは何ですか?

 子どもの成長を目の当たりにしているうちに、「私は全然成長してないな」と感じることが増えてきたんです。引退して10年、自分の経験をアウトプットし続けてきたけれど、ここから次のステージに進むにはもっと学ばなきゃと思っています。いま特に学びたいのはメンタルについて。その仕組みをもっとクリアに理解したいと感じています。子育てにあたっても自分のメンタルが整っていたほうが子どもにいい影響を与えられますし。「Woman's ways」の活動にも繋がるのですが、女性ホルモンによる感情の乱れをコントロールする方法についてももう一度よく学び直したいですね。

「どうせ」という言葉が嫌い。「どうせダメなんだから」「どうせ私なんて」と思わず、全然違う分野でも、とりあえず精一杯やってみる。それでダメならそれは向いていなかっただけなので、精査していけばいい。

——40代、そして50代を迎えるにあたり、意識していることは?

 子どもたちも大きくなっていって、私の時間ももう少しできて、いろいろな状況がよく見えてくると思うので、ここからが勝負だと思っています。肉体的な面はもちろん人間力も含め、努力をすればしただけ、いままで以上に絶対自分に返ってくると思う。ありきたりですが、今日の自分が一番若い!と思ったら頑張れる(笑)。もちろん「あと10年若かったら、もうちょっと頑張れるのにな」と思うことはあります。でもやっぱり後悔したくない。これからも成長を止めないでいきたいです。

 「今日の自分が一番若い」と思ったら頑張れる。「あと10年若かったら」と思うことはあるが、やりたいことをやらずに後悔はしたくない。「今日の自分が一番若い」と思うとトライする気持ちが湧いてくる。

Profile:潮田玲子

しおた・れいこ/一般社団法人Woman's ways代表。元バドミントン日本代表選手。1983年、福岡県生まれ。幼い時からバドミントンを始め、女子ダブルスでは小椋久美子さんとのペアで、全日本総合選手権大会を2004年から5年連続優勝。2008年には北京オリンピックに出場し、5位入賞。2012年混合ダブルスでロンドンオリンピックに出場、同年9月に現役を引退。2014年より(公財)日本バドミントン協会広報委員会を務める。2021年に「一般社団法人Woman's ways」を立ち上げ、女性アスリートのサポートを担う活動を行う。著作に絵本『いっぽいっぽのくつ』(フレーべル館)がある。

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2024年
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2023年
07月
09月
10月
11月
12月