【OVER THE SUN 出張対談・後編】ジェーン・スー×堀井美香/50歳ならあと35~36年あるって思うと結構長いなと

文●竹林和奈・高尾真知子 イラスト/塩川いづみ

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 人生100年時代といわれる昨今、自分らしい働き方や暮らし方を模索する女性たちが増えている。そんな女性たちに役立つ情報を発信するムック『brand new ME! ブランニューミー 40代・50代から選ぶ新しい生き方BOOK vol.1』(KADOKAWA刊)から抜粋してお届けしているインタビューシリーズ。今回は、人気ポッドキャスト番組「OVER THE SUN 」(TBSラジオ)の堀井美香さんとジェーン・スーさんにライフシフトについて語っていただいた。

人生100年時代。これからの生き方について、お二人にお聞きした(イラスト・塩川いづみさん)

ゴールを10年後あたりに設定して、引き算で何をしたいか考える

――この先の生き方について、どう考えていますか?

ジェーン・スー(以下、スー)ライフシフトっていう点で言うと、“人生が100年”には全員が全員はならないと思うんですけど、うちの父親が今85歳で比較的元気なので、私も今の平均寿命まで85、86歳くらいまでは生きられると思うんですよ。そう考えたときに、50歳ならあと35~36年あるって思うと結構長いなと。そこで自分を飽きさせないのが一番だと思うので、そう考えると一番必要になってくるのは体力。健康とか体力、筋力もそうですけど、体力がなくなるときつい。若い頃と違って、精神力が体力を助けるってことはもうないので。今はとにかく体力を整えるのが優先。そこから、何を見ても面白くないとか、興味が持てないとか、やりたいことが見つからなかったとしても、その状態がそんなに不幸せじゃなかったら、その点は気に病まなくてもいいし。新しいことに興味がない場合も、興味があったほうが楽しいとは思うけど、それも人それぞれだよね。堀井さんは別に新しいことに興味ないけど、それで人生つまんないとかないもんね。

堀井 ない。

スー 私と堀井さんがそのことで壊滅的に話が合わないとか、分かり合えない とかもないもんね。

堀井 私は逆で、80まで生きるとは思ってなくて……。

スー 絶対あんたは90まで生きるよ!

堀井 みんなに言われる〜(笑)。でも、割と引き算の設定なので。

スー きれいに死ぬためのね。

堀井 そう。なんとなくゴールを10年後あたりに設定。いや、5年後かもしれない。そしたら今何しておこうかなって考えるんです。この考え方も自分で気に入っていて、あと10年だったら優先順位はなんだろう、多分あっちかな……なんて話を家族にすると、「いや いや、それ90まで生きるタイプだよね」って(笑)。

スー みんな、そう言うよ! きっと、ひとりだけ元気で「ねぇねぇ〜」って電話かけてきて、「みんな死んじゃった」って言いながら家にいるんだよ。

堀井 そうやってジリジリ10年、また10年って。「あれ? まだ元気だ?」って思いながら、マイナスで生きていくのもいいかなって思ってる。

スー マイナスというのは、今持っているものを終わりに向かってどうやって少なくしていくかってことですよね?

堀井 そう、きれいにね。それは執着なのかな。そういうことも全部含めて。

スー 仏門だよ、最終的には。

堀井 そうなんだなって。先輩方、みんな禅とかやり始めてる。あれ、やっぱりやるよねって。

昔叶えられなかったことをもう一回やってみるにはいい歳ごろ

スー 昔からやりたいことがあって、いろんな理由であきらめて、それをもう一回チャレンジするには50過ぎとかっていうのはいい歳だと思うんですよ。それで食べていくとかじゃなくて、趣味にしてもいいし、起業するお金があるなら起業すればいいと思うんですけど。昔叶えられなかったことをもう一回やってみるとかのリハビリでいいんじゃないですかね。

――新しく始めたものの違ったというときの手放し方は?

スー 私には向かなかったんだなって思ってすぐにやめます。そういうところでグズグズしちゃうとかやりたいことができないというのは、やっぱり自己評価が低いとか、自己の捉え方が不十分っていうことからすべて来ていると思います。向かないことなんていっぱいあるもんね。

――年を取ると行動範囲が広がらなくなるってことはないですか?

スー それ、その人にとっては今に始まったことじゃないと思うよ。人ってそんなに変わらないよね。突然年を重ねたからってものすごくアクティブになろうとするのは負荷が大きすぎるからしなくていいと思うよ。元々の自分の性格に合ったことをする方がいいと思う。今の自分は、大体自分の選択の結果だと思っていい。よっぽどのことがない限りはね。

――結婚するとかしないとかも?

スー そうです、そうです。

堀井 結婚は迷いなくしましたね。大学時代、田舎に帰ると周りに結婚している友達がたくさんいたんです。だから、私にとっては特におかしなこともなく、東京では30歳まで会社に勤めるほうがスタンダードなんだってことに気づかなかったんですよね。

スー 私は35くらいのときに、結婚するならここでしないと! みたいな強迫観念はありましたけど、ある時できるできないじゃなく、そもそもしたくないんだって気づいて、じゃぁ仕方ないねって、現在に至ります。

――自分の“したくない”に気づけたのは自分をちゃんと見ていたから?

スー そうですね。“自分の人生を自分のために生きていい”ってことを知らないと、どうしても迷いが出てしまう。私みたいな生き方は多分すごくわがままに見える人もいるだろうけど、「自分の人生、自分で責任取って自分の好きなように生きていいんだよ」っていうことを、子育てが終わった人も子育てしてない人も50歳くらいになると言えると思うんですよ。子育てがひと段落していても、そこでまた「夫が」「家族が」となるのか、自分の人生だからそこからは自分の好きなことをやるかは、その人の自由、その人次第かな。

自分の中の問題を外で解決しようとしないで、まず自分と向き合うこと

――そういえば、互助会員(リスナー)の皆さんは自由で楽しそう。精神面のライフシフトができている感じですね。

堀井 互助会の人たちなんて、お互いに知らない人同士で一緒に山に登ったりして。

スー 勝手に遊んでますよね。

堀井 すごく楽しんでるんですよね。一番いいよね。共通項だった「OVER THE SUN」も、どうでもよくなってますもんね。

スー そうそう。集まってオフ会やったり。

堀井 いっぱいグループがあって、もはや勝手に楽しんでくれている(笑)。

スー それでいいんだと思うよ。もうこの年になればいろいろあったんだろうなってお互いにうっすらわかるから。

スー あんまりそこは詰めないよね。

堀井 そうそう。

スー ふわっとさせといて。

堀井 みんないろいろあったよね、お疲れさまって感じで、労わり合って一緒にいるんでしょうね。私も人と比べるということが激減しました。

スー 激減したね。まぁ、それは私たちが恵まれてるからだろうね。自分自身の人生が、誰かと比べたりしないでも満足できて、自分の不足を指折り数えたりしなくてもいい環境だから。

堀井 うん、そうだよね。

――そういう気持ちに至れず、モヤモヤしていたら?

スー 自分の中の問題を外で解決しようとしないで、まず自分と向き合うのが大事。それをなんやかんや理由をつけて後回しにしてきたツケは絶対にこの年になったら出てくるので、なるべく早くやっておいたほうがいいです。今、やるにはいい時期なんじゃないかな。この先の人生も長いし。

堀井 え〜、100歳まで生きられるかわかりませんよ(笑)。私はすぐ先にゴールを見据えていますから。着いちゃったらまた延長する。楽ですよ、この考え方。この先30年生きるんだと思うといろいろ考えなきゃならないですけど。

スー 10年だと思うとね。

堀井 5年、10年とかだと思うと、CDとか本とか処分してしまってもいいのかなと。いろいろ身軽になりますよ。だって、今から35年生きるのかと思ったら、まだ長いなと思わない?私35年も生きるの?って。

スー しょうがないのよ。あなたは生きるの。間違いなく(笑)。

TBSラジオ『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN 」』/毎週金曜日の夕方5時に新作配信。#overthesun

Profile:堀井美香

ほりい・みか/1972年、秋田県生まれ。大学卒業後の1995年にTBSに入社し、2022年3月に退社。現在はフリーアナウンサーとして活躍中。近著に『一旦、退社。~50歳からの独立日記』(大和書房)がある。

Profile:ジェーン・スー

1973年、東京都生まれ。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。近著『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)のほか著書多数。

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