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業務を変えるkintoneユーザー事例 第210回

地区代表が集うkintone AWARD 2023レポート中編

新入社員が家具職人を変えたアートワークス 弁当アプリをきっかけに年6千時間削減したミエデン

2023年12月14日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 2023年11月、幕張メッセにて開催された「Cybozu Days 2023」で、「kintone AWARD 2023」の発表が行なわれた。全国各地で開催されたkintoneのユーザー事例を共有するイベント「kintone hive」のファイナリストが再度プレゼンを行ない、観客参加型の選考を経てグランプリを決定する。

 kintone hiveは2015年から開催され、今年は4月の仙台を皮切りに、福岡、大阪、名古屋、松山、東京の6カ所で開催された。今年のAwardはそれぞれの地区のファイナリスト6社が登壇。前記事に引き続き、中盤の2社のレポートを紹介しよう。

恒例の「kintone AWARD 2023」が開催された。今年のグランプリの行方はいかに?

新卒2年目22歳が超アナログな職人たちにkintoneを浸透させたアートワークス

 3社目として、関西地区代表のオーダー家具工房アートワークスの宗政伊織氏が登壇。「家具工房がkintoneを入れてみたハナシ。」と題したプレゼンを披露した(関連記事:kintoneを家具職人に使ってもらいたい! 新入社員の熱意とアプリが現場を変えた)。アートワークスは神戸市中央区で家具を手掛ける会社。フルオーダーで制作するのが特徴で、職人は5人、営業・設計が2人という体制ながら、G7の首脳陣が利用した大きな机を作った実績も持つ。

アートワークスの宗政伊織氏

 家具のオーダーメイドは、まずは打ち合わせと見積もりをし、採寸・設計、制作、納品という流れをとる。同社はこのフローを紙とホワイトボードで管理しており、超アナログな業務だった。紙はファイリングするものの誰も見るわけがなく、案件は属人化していたという。

 2021年9月、社長が人材研修で出会ったkintoneを導入することに。2022年4月に宗政氏が入社したときもkintoneの研修を受けたそうだ。

 研修を経て作成したのが、属人化を解決する「案件管理」アプリ。kintoneを細かくカスタマイズできる連携サービス「gusuku CUSTOMINE(アールスリーインスティテュート)」を利用し、地図も入った、カラフルで可愛いアプリが完成した。タブ分けもされ、見やすくなっている。

kintoneの研修を受けて案件管理アプリを作成した

「めっちゃ解決してもうたやん、って思ったのですが、全然解決しませんでした。職人が使ってくれないのです。何で使ってくれないのですか、と聞くと『なんとなくいや』『見にくい・使いにくい』といろいろ言われて、1番意味がわからなかったのが、『kintoneっていう名前がいや』と言う人でした。私のせいじゃないし」(宗政氏)

 そこで、宗政氏は3つのことを実行した。1つ目はとにかく職人の話を聞くこと。アプリを改善したらiPadで見せて、また意見を聞くということを繰り返した。2つ目が、刷り込み。週1のミーティング時に画面を見せながら案件の話をした。3つ目が、絶対に触る必要があるアプリを作ったこと。シンプルに時間を記録できるタイムカードアプリを作り、就業時間や残業時間も表示するようにした。

「有給代休申請アプリも作りました。推しポイントは、残りの有給時間が出ることです。社長の顔を見てお願いしますって言わなくてすむので、有休の取得率が、なんと3倍になりました。職人さんからも、子供が体調不良の時に、すぐ休みが取れて嬉しいと言われました」(宗政氏)

 ある日、納品日と言うことを職人に伝え忘れて、慌てて声をかけたところ、「知ってる、kintone見たから」と言われて、とても嬉しかったそうだ。

「有給代休申請」アプリが社内で受け入れられた

 続けて、「材料発注アプリ(改)」も作成。従来は営業・設計が発注していたが、職人もこのアプリから発注できるようにした。職人はスマホしか使わないので、スマホ画面を見やすくすることを意識したという。

 kintoneに触ってからわずか1年7カ月でここまで成果を出せたのには3つの理由があるという。1つ目が面倒くさいと思ったら即修正すること。二重入力しているところがあれば、すぐに直した。2つ目が、1年後の自分が見ても、どんな設定をしたかわかるようにすること。「休日出勤に色付けてみた」といった見やすい名前を付けている。3つ目が、恵まれた環境にあったこと。月1回のkintone研修で社長や先輩と目標を共有。必要なプラグインは社長がすぐに導入してくれたのもポイントだ。

1年後の自分が見ても、何の設定なのかがわかるようにしておく

 kintoneアプリを改善するだけで、皆から「ありがとう」と言ってもらえ、自分でも会社の役に立てているのかもしれないと、実感しているという。研修で教えてもらって、試してみて、できたという流れが面白く、どんどんkintoneに夢中になった。

 最近は、どういうものが売れているのかを分析し、広告に活かしたいと考えているという。また、職人が今何をしているかを、簡単でいいから管理することも考えているそう。今の宗政氏は、どのアプリのデータを使い、どのプラグインを組み合わせれば実現できるかのイメージできるようになっていた。

「私は建築系の高専を出ているので、ITはよくわからず、kintoneと言われてもドラゴンボール?としか思いませんでした。初めてのkintone研修で『理想と現実の間が課題で、その間をkintoneで埋めるんだよ』と教えられました。意味わからんと思っていましたが、今やっと理解できるようになったと思います」と宗政氏は語った。

課題とは、理想の現実にあるもので、kintoneはそこを埋めることができる

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