新MacBook Pro/iMac登場! Appleシリコンの性能は「M3」で新段階に! 第10回
新MacBook Pro、M3 Maxはどれほど速くなったのか? 約110万モデルで検証した(本田雅一)
2023年11月08日 09時00分更新
最新のAppleシリコンであるM3ファミリーが、3つの構成で同時に発表され、それぞれを搭載するMacも明らかになった。24インチiMacは久々のアップグレードで、M3のパフォーマンスが想像以上に良かった(特に3Dグラフィクスの向上は目を見張る)が、一方で従来の機構設計は踏襲したままだ。
iMac 24インチに付属のマウス、キーボード、トラックパッドがLightning仕様なままであることに少しばかり不満を感じる人もいるだろうが、MacBook Proに関してはそのまま高性能になってくれれば不満がない。とはいえ、外見上の小さな変更点はある。
MacBook ProにM3 Pro以上のSoCを搭載するモデルには、スペースブラックという新しいカラーが選択可能になった。スペースグレーも存在はするが、14インチのM3搭載モデルのみだ。
スペースブラックを選択した場合のみ、Magsafe 3のケーブルもブラック仕上げとなる。マグネットカプリングの部分まで、スペースブラックに染色されたアルミになっているのはアップルらしいこだわりだろうか。
筆者の手元には評価用にM3(16GBユニファイドメモリー)と512GB SSDを搭載し、トラックパッドとマウスの両方を同梱した構成の24インチiMac(30万7600円)。M3 Max(128GBユニファイドメモリー)と8TB SSDを搭載する16インチMacBook Pro(109万2800円)の2つが届き、新しい世代のAppleシリコンをテストしているが、ここではM3 Maxを搭載する16インチMacBook Proを通じて、その性能評価の結果をお伝えしていきたい。
製品ごと、SoCごとの個性が際立つように
従来のAppleシリコンは、ある意味、ベースグレードの無印版が登場すると、その次に登場する製品が読める展開になっていた。もちろん、M1ファミリーの頃は、それがどのように展開するのかわからなかったが、比較的、単純に横展開していたことは否めない。
無印に対して高性能コア(Pコア)を中心にCPUを強化し、大幅にGPUのコア数を増加させてProを作り、そのProとCPU設計を共有しながらGPUやMedia Engineといったメディア処理の能力やI/Oインターフェイスを2倍搭載。メモリー接続のチャネル数も増やすことでメモリー帯域と容量を増やしたMaxという作り方だ。
もちろん、この上にはMaxのダイを2枚接合するUltraが位置するわけだが、M3ではこうした設計思想に修正が加わっている。3nmプロセスで使えるトランジスタは増えたが、M3ではこのパターンを変えてきた。
M1、M2、それぞれのファミリーを設計する際には、実際のMac上でユーザーがどのように使うか、開発者がどのように使いこなすかは「想定」しながら仕様を決めていたのが、製品が出荷され、使われ始めたことでより利用実態に近い構成になっている。
基本となるM3のスペックは従来を踏襲し、Pコア、Eコア同数の4個づつ8CPU、GPUの数も10個とこれまでと同じだ。
派生モデルとなるM3 ProもPコアとEコアは同数で6個づつ。これまでは処理能力を優先してPコアを多く積んでいた(M2 ProとM2 Maxは、いずれもPコア8+Eコア2だった)が、そのバランスを変えている。GPUのコア数は18個。
一方でM3 MaxはPコア12+Eコア4の構成で、こちらは従来のPro、Maxに近い位置付けのコア比率になった。GPUのコアは最大40個でM3 Proの2倍以上となる。
つまりM3 Proの位置付けが「無印」に近づき、M3 Maxはその世代で使える半導体技術で最高の性能を引き出すようになった。実際、M3 Proに使われているトランジスタ数はM2 Proよりも減少している。見方次第だが、より消費電力あたりのパフォーマンスに留意した、省電力なSoCにリニューアルされたと考えればいいだろうか。
これらM3ファミリーが搭載される製品の位置付けも、SoCの設計を反映したものになっている。というよりも、PCとは異なり「どんなMacを作りたいか」が先にあって、そこに合わせてAppleシリコンを設計しているため、そこには明確な意思を感じる。
これまで14インチと16インチのMacBook Proは、単純にサイズと重さで選ぶ製品だったが、14インチのみM3モデルが追加されたことで、14インチが大きな画面サイズやSDXCカードスロット、HDMI端子などの接続性やパワフルさを、より下方に展開(日本では価格が上がっているがドルベースでは最低価格は大きく下がった)したのに対して、16インチモデルはあくまでも最高のクリエイティブパワーをという方向だ。
M3 Maxが生きるシーンとは?
もっとも14インチモデルに関してもM3 Max搭載モデルは用意され、以前までなら存在しなかったエネルギーモード「高出力」も14インチモデルで使えるようになった。両サイズともに、デスクトップクラスのパワーを持ち歩けるという意味では同じだ。
アップルはM3 Maxが生きる利用シーンとして、ユニファイドメモリーアーキテクチャが最大限に貢献できるアプリケーションについて説明している。前述したように、具体的なMacのアプリケーションがあり、そこに対してSoC設計レベルから回答を提供するというスタイルだ。
今回からM2 Ultraで追加されていた192GBには及ばないものの、それに近付く128GBのメモリー構成がM3 Maxで選択できるようになった。こうした大容量メモリーは、実際に使う場面があるから必要になるものでユーザーごとに最適解は異なる。
例えば1980年代から使われてきたグラフィソフトの建築CAD「Archicad」は個人宅から、シアターやスタジアムまでを含む複合商業施設までカバーするプロフェッショナル向けのCADだ。
大規模な設備、建物でひとつ一つの部屋の中、鍵の配置、配管・配線構造などあらゆる要素を内包するデータを全てオンメモリーに展開し、CPUやGPUを中心にあらゆる処理を同じメモリー上のデータにアクセスできるため、Appleシリコンでは高いパフォーマンスでCAD上のデータを確認し、断面図のリアルタイムでの確認などをなめらかに行える。扱う建築物の規模が大きくなるほど必要なメモリーは多くなるという意味で、ノート型にも搭載されるM3 Maxに最大128GBの構成があることに意味が生まれる。
ここでは建築CADの例を挙げたが、もちろんこれは3Dオブジェクトのモデリングやモデリングしたオブジェクトを配置して、3Dアニメーションのシーン設計する際にも言えることだろう。
単に最大メモリー容量が増えただけとも言えるが、ユニファイドメモリーで統合されてマニピュレートできるデータが増加し、適応範囲が広がったという方が、M3 Maxが想定するユーザーに対しては的確な表現だろう。
そしてもちろんもうひとつ大きなポイントがある。それはGPUが最新の設計にアップデートされたことだ。こちらも利用シーンを見据えての改良だ。
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