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USB-C搭載、Proはチタンで軽量化! iPhone 15徹底大特集 第38回

チタニウム採用のiPhone 15 Pro、どれくらい強くて硬いのか?

2023年09月14日 17時45分更新

文● 貝塚/ASCII

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今回の発表の中でも、最も象徴的に扱われたのが「チタニウム」の採用

チタニウムを採用したiPhone 15 Pro/Pro Max

 今回のApple Eventの中で、最も象徴的に扱われたのはiPhone 15 Pro/Pro Maxでのチタニウムの採用だろう。

今回のティザーイメージは、iPhone 15 Pro/Pro Maxに採用されている4つのカラーの粒子が舞っている様子だった

 アップルは毎回、発表前にティザーイメージで発表内容を暗示しているが、今回使われていた静かなきらめきを持った粒子の集合体も、チタニウムを表現していたと思われる。

チタニウムはどれほど頑丈な金属なのか?

 また、チタニウムが使われているのは外周のバンドをメインとしたパートであり、内部のフレームにはアルミニウム合金を採用している。2つの異種金属を、高い強度を保ったままつなぐ技術についても、業界初として話題に挙げていた。

チタニウム製のバンドと、内部のアルミニウム合金製フレームを高強度でつなぐ技術を採用

 さて、重要なのは、チタニウムを採用することで、ユーザーにはどのようなメリットがあるのかという点だ。元素番号22の金属であるチタニウム/チタンをiPhoneに使うことで、どのようなことが起きるのか? 「頑丈で軽い、なんか良い金属」というイメージを持つ人は多いと思うが、その意味するところとは?

 iPhone 14 ProまでのProシリーズに使われていた「ステンレススチール」と、特性を比較しながら解説する。

採用のメリットは、ステンレスを超える軽さと硬さ

 まずは、アップルが言う「チタニウム」と「ステンレススチール」を、もう少し具体的に考えてみたい。

 iPhoneにステンレススチール製のフレームが初めて採用されたのは2017年発売の「iPhone X」だ。このときのアップルの発表で「医療に使われているものと同じグレードのステンレススチール」という表現があった。サージカルステンレスとして、医療用のメスなどにも使用されている代表的なステンレスに「316L」がある。

 ステンレスとはそもそも鉄を主体とした合金だが、316Lは、そこにクローム、ニッケル、モリブデンを添加した炭素量の低いステンレス(18Cr-12Ni-2.5Mo-低C型)である。耐久性、耐食性に優れ、化学的に安定していることから金属アレルギーを起こしにくくもあり、医療器具に一般的に使用されている。

それまでのiPhoneからガラリと雰囲気を変えたステンレスのフレームは、当時とてもかっこよく映った

 ではチタニウムについてはどうか。アップルが発表会で使ったのは「航空宇宙産業レベルのチタニウム」と「グレード5のチタニウム」という言葉だ。チタニウム合金にも様々あるが、この2つの表現にピッタリと当てはまるチタン合金として、「Ti-6Al-4V」というものがある。

 Ti-6Al-4Vはチタニウムに、アルミニウムとバナジウムを混ぜた合金であり、航空宇宙産業、医療、スポーツ用品といった、高い強度と軽さが求められる工業製品に使われている。

グレード5チタニウムとは?

 もちろん、アップルは具体的な部材名を明らかにしていないし、今後も明かされることはないだろう。ただ、316LとTi-6Al-4Vは、スマートフォンに限らず一般的に工業製品に使われているステンレスとチタニウム合金だから、それぞれの金属としての特性を比較することはできると考える。

 スマートフォンに金属を採用した際に、使用感に影響を与える部分といえば、「軽さ」と「頑丈さ」だろう。「頑丈さ」については「どれくらい変形しにくいのか」と言い換えてもいい。

 軽さについては、単純に比重で考える。316Lの比重はおよそ7.9g/cm³で、Ti-6Al-4Vの比重はおよそ4.43g/cm³である。つまり、同量なら、316L(ステンレス)よりもTi-6Al-4V(チタニウム合金)は1.78倍の重量差があるということになる。

 iPhone 14 Proの重量がおよそ206gで、iPhone 15 Proの重量がおよそ187gだから、「軽さ」というチタニウム合金の特性は重量にも反映されている。(ただし、iPhone 15 Pro/Pro Maxは内部のシャーシには、やはり比重の軽いアルミニウム合金を使用しているから、iPhone 15 Pro/Pro Maxの軽さは、チタニウム合金にのみ由来しているとは言い切れない)

加工の美しさは、さすがと言ったところ

 では、頑丈さについてはどうか。これを測るひとつの指標としてHVという単位で示される「ビッカース硬さ」という基準がある。ビッカース硬さ試験(JIS Z 2244)は、日本産業規格では「正四角錐のダイヤモンド圧子を、試料(試験片)の表面に押し込み、その試験力を解除した後、表面に残ったくぼみの対角線長さを測定」とある。

 簡単にいえば、「すごく硬いものを強く押し込んだ後に、凹んだ表面のくぼみの長さを測って、素材の強度を見る」ということである。

 同じ部材であっても、メーカーや製造条件、環境に左右されるが、この基準では、316L(ステンレススチール)の硬度は170〜200HVの範囲、Ti-6Al-4Vはおよそ320HVになるとされている。チタニウム合金(Ti-6Al-4V)の方が、高い強度を持っている。つまり、ステンレススチール(316L)よりもチタニウム合金(Ti-6Al-4V)の方が、変形がしにくい、硬い合金である。

最も軽い「Pro」シリーズが生まれた

 このほかに、耐摩耗性(すり減りにくさ)や割れにくさ(粘り強さ)という方向から考えることもできるが、本稿ではこのあたりにしておく。

 iPhone 15 Pro/Pro Maxはアルミ合金製のフレームを高強度で接合しているという特徴を持っているため、単純な合金同士の軽さや強さで語れない部分もあるものの、結論としては、工業製品の部材として一般的なステンレススチールとチタニウム合金を比較した場合、チタニウム合金の方が「軽くて、強い」ということになる。チタニウム合金の恩恵を受けた軽くて強いiPhone 15 Pro/Pro Max、ほしい!

 

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