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ソラコムのIoTで飲食店の現場DXやってみた!

ラーメンWalkerキッチン×IoTの激闘を披露 知見・しくじりまで生々しく

大谷イビサ 編集●ASCII

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ボタンデバイスのメニューを現地で変更 正の字からデジタルへ

 続いてボタンデバイスについて担当の井出さんが紹介した。ボタンデバイスで対応したかったのは、来客顧客の属性分析、時間帯ごとの商品の販売数量、来客客数などを楽して数えること。カメラと違って、ボタンを押す必要があるが、とはいえ、ボタンを押すだけ。実際に製造業の事例では、マシンのエラー原因を現場の担当が押して知らせるという用途で使われている。

ソラコム ソリューションアーキテクト 井出 尭夫さん(右)と笑う2人

 しかし、ラーメンWalkerキッチンにはさまざまな顧客が訪れる。吉川さんは、一般客、外国人客、サクラタウンに来るKADOKAWA社員、N高生の4種類の属性を男女それぞれでとりたいという話を井出さんにしたのだが、これを実現しようとすると、8つのボタンが必要になる。

 結果、井出さんが選んだのがM5Stackという液晶付き画面デバイス。多少のプログラムが必要なのだが、SORACOMサイトのIoTレシピが使えるため、ほぼこれを流用することにした。打ち合わせの翌日にデバイスを購入して、ラーメンWalkerキッチン版を作成。「どんな人がなにを食べたかまでとろうとして画面のメニューまで作った」とのことで、機材設置の日に意気揚々と東所沢に乗り込んだ。

 しかし、いざ現場に行くと予想外のことが発生した。最初に詰まったのは電源の確保。「M5Stackって電池でも駆動するが、あまりもたないので、電源をとることにしたけど、配線に困りました」(井出さん)。画面に関しても、吉川さんからいろいろツッコミが入り、井出さんが現地でメニューを変更した。これもあらかじめあとから設定変更を見越していたから実現できた。「結局、毎週メニューが変わるので、ボタンデバイスのメニューも毎週換えなければならないというのも気づきでした」と吉川さんは語る。

ボタンデバイスの設置風景

 吉川さんの現場での気づき、そして井出さんの迅速な対応力により、結局4つのボタンデバイスでは8種類の属性をとることが可能になった。大谷は「あのとき休みの厨房でマシン開いてデバイスをさくっと直した井出さん、めちゃかっこよかった」と絶賛。吉川さんも、「今までスタッフはポストイットに正の字でカウントしていたので、人数、4つの属性と男女までわかり、タイムスタンプも送れるようになった。これは今まででは人手では絶対に無理だった」と高く評価した。

現場でしか気づけなかったこと多数 でも一番手間だったカメラ画像の扱い

 気づきとしては、やはり現場でしか気づけなかったことが多かったということ。IoTレシピのように似たようなことをコピーするだけで、別の現場でも応用できる。「やっぱり現場に行った方がいい。ラーメン食べられるし(笑)」とは井出さんの弁だ。

 たとえば、人数カウントのためのカメラの設置場所は、巨大ディスプレイの後ろの席がどうしても死角ができてしまうため、けっこう試行錯誤した。別の位置に設置し直したりしたが、結局ドアの上に戻った。「電源、ケーブル、美観、お客さまの心象など、いろいろな制約がある。吉川さんと相談して、ここですかねという位置を決めた」と高見さんは振り返る。

人数カウントのためのカメラ設置

 ボタンデバイスもソラカメを使った自動化の代替策として作ったものの、ホールスタッフさんも、この程度であれば扱う余力があったというのも気づきだった。「面倒くさがられるかなと思ったんですけど、スタッフも大学生ということで、この手のデバイスに全然抵抗感がない。すぐに慣れてくれて、便利がってくれた」と吉川さんは語る。

 人数カウントや属性分析は、飲食店を悩ます締め作業の効率化にもプラスの影響を与えている。吉川さんは「売上と食券機の現金を突き合わせる締め作業で、今までは手書きの正の字を数えていたけど、ソラコムでデータに溜まるようになった。IoTって便利だなあと実感しました」とは振り返る。HACCP対応に関しても、冷蔵庫・冷凍庫の温度が自動で記録されるので、手間が省ける。「データをとることで、なぜ温度が上がったのか?に対して、開けっぱなしの時間が長かったのではと考えられるようになった」と吉川氏は分析した。

あっさり目的をクリアしたHACCP対応の冷蔵庫・冷凍庫の温度管理

 とはいえ、一番手間がかかったのはテクニカルな試行錯誤よりも、カメラ画像を利用するための個人情報の取り扱いについて。角川アスキー総合研究所がPマークを取得していることもあり、ソラコムと実証実験でデータを取得していることをどのように明示するかは相談を重ねた。「経産省から『カメラ利活用ガイドライン』が用意されており、飲食店や小売店でどのように画像を利活用したらよいかのガイドラインがあるので、ぜひ参照してもらいたい」と高見さんはアドバイスした。

知見を発信し、ラーメン屋からも愛される存在へ

 最後のまとめとして、井出さんは「データはとれるのはわかった。ラーメン屋さんはこのデータが売上にどうやって貢献できるかを、考えるのに時間をとるべきだと思った」と語る。高見さんは「今回、1ヶ月で3回現場に行ったのですが、とにかくありものでもいいので、現場に持ち込んで高速にPDCA回すのが改めて重要だと気づいた」とコメント。また、「今回はソラカメでうまく検知できなかったけど、センサーでイベントをとれれば、もっとソラカメを活用できるのではないかという気づきも得られた」とのことで、今後の製品開発にも活かしていきたいと抱負を語った。

 最後、吉川さんは「ボタンデバイスと人手で得たデータを、AIに食わせればもっと高い精度が得られるかも」「カメラで撮られるのイヤだろうなと考えがちだけど、撮られてメリットを得られる方法を考えるべきだ」「使ってこなかったデータも、AIに聞けば有用になるかもしれない。今までと違った可能性を感じた」と3つのポイントをコメント。今後はラーメンWalkerキッチンとしても、この知見を発信し、ラーメン屋さんからも、お客さんからもありがたがられる存在になっていきたいとまとめた。
 

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