業務を変えるkintoneユーザー事例 第192回
16年5ヶ月のブランクを経て、社長として経営をリードする髙城氏の改革
マイカンパニーからアウアーカンパニーへ、働き方と働く環境を改革しDXを推進するタカギ
2023年10月11日 09時00分更新
2023年6月8日、サイボウズは福岡国際会議場でkintoneを中心とするエンタープライズ向けクラウドサービスの展示イベント「クラウドガーデン」を開催した。展示ブースに加え、企業のDX事例やトレンドが聞けるセッションも開催され、今回はその中から基調講演「株式会社タカギのTOPが語る!働き方改革から生まれる企業価値とは?」のレポートを紹介する。
目標は社員たちのアウアーカンパニーへ変えること
タカギは福岡県北九州市小倉南区に本社を置き、家庭用園芸用品や家庭用浄水器、省エネ商品の開発、製造、販売・プラスチック射出成形加工・金型事業を手掛ける企業だ。創業は1961年で、現在、従業員は男性699人、女性750人の計1449名となっている。会長は髙城寿雄氏で、代表取締役社長は今回登壇した髙城いづみ氏(以下、髙城氏)となる。まずは、髙城氏からタカギの取り組みについて紹介があった。
髙城氏は2000年、浄水器事業部の営業アドバイザーとしてタカギに入社した。2004年に子育てが始まったので、退社することになった。その後、16年が経ったところでもう一度、執行役員人材開発室長として入社。その後、社長になるという驚きの経歴を持っている。
髙城氏が2020年に社長に就任して掲げた目標は、創業者である髙城寿雄のマイカンパニーから、社員たちのアウアーカンパニーへ変える、ということだった。タカギはみんなの会社で、みんなで日本一のメーカーを目指す。そのためには、楽しく働ける場所が必要と考え、リブランディングすることになった。
まずは、ダイバーシティ&インクルージョン推進プロジェクトを発足させた。3ヵ年計画で、女性の活躍、躍進などをテーマにして活動しているという。従業員が長く活き活きと働き続けられる職場環境、働き方を実現し、どの立場の従業員から見ても魅力的な会社になるということが目標だ。
行動改革チームと環境整備チーム、キャリアバスチームの3チームを社内で公募して、集まった16人でスタートした。まず取り組んだのが、男性の育休取得推進だ。2020年時点では、育休取得率は女性は100%だが、男性は3%に過ぎなかった。それが、2022年には男性の育休取得率は92%にまで向上したという。
「男性が育休を取りやすい環境を重視し、育トレ制度を導入しました。男性社員の育児参画を促し、産後2ヵ月以内に20日間の休暇を付与しました。多くの社員に育休制度を知ってもらうために育トレブックや、配偶者と話し合いながら、育児や家事の分担を決めたりする育児ミーティングシートを作成しました。最後に、子育てコミュニティを開設し、困った時に相談したり悩みを共有できる場を作りました」(髙城氏)
また、オフィスや工場の近くにタカギの保育園を作り、出勤したら子供を預けて、職場に来るという環境を用意している。組織改正や異動配置、人材育成などに力を入れて社員の待遇も改善し、ライフステージとキャリア志向に対して、価値観に応じた自らの転勤可否を選べる制度も見直しているところだという。
フリーアドレス制の導入、kintoneの活用など働く環境を整備
「働き方改革としては、内勤のオフィスを小倉駅近くのビルに引っ越しました。現在、350名が勤務しています。駅前にあるビルの9階なので、新幹線も海も山も若松にある風力発電の羽根も見えます。1番良かったことは、社員が同じ空気を吸って時間を過ごせるようになったことです」(髙城氏)
お洒落なオフィスはフリーアドレス制を採用したそう。デザインはオフィスなどを手掛ける会社ではなく、あえて美容院を手掛ける会社に依頼したそうで、豪華なパウダールームも完備している。
コロナ禍になっても、タカギはほとんど影響を受けなかったという。しかし、営業活動のコミュニケーションは対面からウェブに変化したため、kintoneを導入した。決め手は、カスタマイズ性の高さとコストの安さだそう。
商談のデータベース化が実現し、タイムリーな情報共有が可能になり、工場部門にも共有されるようになった。営業から企画、工場の製造まで、部門をまたがって活用されており、業務スピードが向上した。中でも、部門間での共通語ができたことがよかったという。
週報を廃止したので、営業内勤時間は年間1300時間も削減された。営業の残業時間も一人当たり、年間約28.8時間減少し、22年度は110.4時間となった。その結果、社員の趣味や家族に費やす時間が増え、ワークライフバランスが充実したという。
「アウアーカンパニーを目指し、1人1人が個性と能力を発揮できる強いチームへなろうとしています。その中で今行われているのが『マジきら会議』です。真面目な話を気楽な雰囲気の中で議論するという場を作っていて、私は去年1年間で全事業所を回り、みんなと語りながら、私の経営の思いと従業員の思いを双方向に届かせる場として活用されています」(髙城氏)
「今、若手社員を中心としたプロジェクトチームで、タカギ第2章のVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)をもう一度考え直しています。それぞれの個性や多様性を尊重し、社員が安心して働くことができる、成長と誇りを感じることができる会社を目指すと同時に、お客様やビジネスパートナー。社会からも選ばれる会社を目指す、というメッセージをみんなと共有しているところです」(髙城氏)
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