業務を変えるkintoneユーザー事例 第183回
課題だらけの紙カレンダー業務を劇的改善 売上20%アップを実現した中川商事
社長、紙はもうやめていいですか? 貸別荘・キャンプ場の予約管理をkintoneで効率化
2023年06月28日 09時00分更新
2023年6月7日、kintone hive nagoya vol.7が開催された。会場はZepp名古屋で、参加者は約500人と2階席まで埋まる活況ぶりだった。kintone hiveはkintoneのユーザー事例を共有しあうイベントで、優勝した企業は「kintone AWARD」に進出する。今回はトップバッターとなる有限会社中川商事 中川広紀氏によるプレゼンの様子を紹介する。
紙カレンダーの施設予約 火事が起きたら終わりだな……
中川商事は石川県能登半島でハートランドヒルズ in 能登という貸別荘とキャンプ場を運営している。貸別荘は23棟、コテージは6棟、キャンプ場には20サイトを展開しているという。
以前は施設の予約を紙のカレンダーで管理していたのだが、さまざまな課題があった。予約の1件1件をすべてカレンダーのコマの中に書いていたのだ。顧客の名前や宿泊人数、電話番号などの情報も書き込むのは手間のかかかる作業だ。予約内容の変更があれば修正するのも大変だし、文字が汚ければ読むのも難しい。
中川氏は以前から事務所の壁に掛けてあるカレンダーを見て、火事が起きて燃えたら終わりだな、と感じていたそう。
ホームページから施設の予約が入ると、メールが飛んでくるようになっている。しかし、新規の予約だけでなく、予約済みの顧客から日程や人数の変更連絡が来ることもある。いろいろなメールが来ると、メールが埋もれて埋没してしまうリスクがあったという。また、紙のカレンダーは一つしかないので、予約を取るスタッフと受付のスタッフ、施設管理のスタッフで取り合いが発生していた。そうなると、書き漏れも起きてしまう。
返信する際は、テンプレ替わりに、以前使ったメールの文面を使いまわしていたのだが、顧客の名前やチェックイン・チェックアウトの時間、施設の名前なども間違えてしまうこともあったそう。リカバリーするために、また顧客に連絡をしなければならず、さらに業務が発生してしまう。
「僕らは予約を取るだけが仕事ではありません。来ていただいたお客様に満足していただくために、どんなお客様が何人いるのかを毎日把握しなければなりません。全部手書きで書いていたのですが、週末や繁忙期だと1日20数件にもなってしまいます」(中川氏)
アプリは作って3ヶ月寝かせる その背景とは?
そこで、パートナーの協力のもと、紙カレンダーでの管理をkintoneに置き換えることになった。その際、「中川さん、kintoneがすべてを解決するわけじゃないですよ。kintoneを使いこなして初めて業務改善ができますよ」とパートナーに言われたという。
ホームページから予約があると、kintoneのレコードに自動で登録され、カレンダーにも自動表示されるようにした。カレンダーはkintoneプラグインの「カレンダーPlus」(ラジカルブリッジ)を利用している。
来客数などの情報も一覧画面で集約できるので、二重転記も不要になった。
顧客とのメールには「メールワイズ」を導入した。予約レコードからワンクリックで返信ができるようになり、コピペミスもなくなった。作業時間も大幅に短縮された。
アプリは完成したものの、なんと3か月も寝かせたというのがユニークだ。理由は、現場がkintoneをいかにうまく使いこなせるか、ということを重視したためだ。
まず、kintoneのアプリを作成する際は、社内から選抜メンバーを選んだ。どのようなアプリが必要なのか、そのためには業務をどう改善するか、といったことを話し合いながら作ったという。
次は、アプリを作りながら、紙カレンダーに書いてある情報も登録し、同時並行で動かした。実際に運用することで、スタッフに慣れてもらうのが目的だ。
メールワイズは仕事が大幅に楽になるので、すぐに本番利用をスタートしたそう。そして最後に、選抜メンバーだけで使っていたアプリを全スタッフに使ってもらった。リリース直前には、先に触っていたメンバーが周りのメンバーに教えることで、みんながkintoneの操作を覚えられるようにした。
2021年9月1日に本番運用を開始したが、2週間という上限を決めて、紙カレンダーと並行運用することにした。何があるかわからないからだ。しかし、すぐに現場から、「社長、紙に書くのめんどくさいんで、もうやめていいですか」という声が上がったそう。kintoneへの移行が大成功したということだ。
より高度な在庫管理にもチャレンジ ロールプレイングで本番に備える
次に取り込んだのが、キャンプ場の在庫管理だった。20個のキャンプサイトがあるのだが、この在庫管理がとても重要なのだ。ある1日の枠が空いていても、連泊したり、アーリーチェックイン・レイトチェックアウトする顧客がいると、予約を入れていいのかどうかの判断が難しくなる。
これも以前は紙のカレンダーを見ながらスタッフが判断していたが、現在はキャンプサイトの予約残数管理アプリを作成し、「予約の可否確認」ボタンをクリックすることで、数秒で煩雑な予約可否確認が行なえるようにした。
ホームページからだけでなく、泊まった顧客が帰りがけに次の予約を取るケースもあるし、電話をかけてくる人もいるそう。そうなると、顧客対応しながら、在庫の残数を確認する必要がある。そこで、カレンダーPlusで在庫数に応じて色分けし、誰でも状況を簡単に把握できるようにした。さらには、中川氏が顧客に扮し、ロールプレイング研修も行なった。そのおかげで、受付スタッフだけでなく、電話に出る可能性がある全員がkintoneを使って予約を受けられるようになったという。
紙のカレンダーをkintoneに置き換えることで、顧客の情報をはじめ、宿泊人数や売上金額までkintoneに入ってくることになった。そうなると、顧客情報も管理できるし、経営データも作れるようになった。「kintoneがうちの仕事に一本の筋を通してくれました」と中川氏。
kintone導入前の2020年、宿泊実績は3812泊で売り上げは8500万円だったが、kintone導入後の2022年は4628泊、1億2800万円まで伸ばすことができた。しかも、スタッフの数は増やしていないという。同じ人数で、増えた業務量をこなすことができたのだ。これは、目覚ましい導入効果と言えるだろう。
「僕がやったのは、kintoneを導入するという意思決定です。その一歩を踏み出すことで、次、どのメンバーを選抜するか、と二歩目が出ました。そうやって一歩ずつ歩いて、今の状況にたどり着くことができました。皆さんも、ぜひ一歩踏み出してもらえればと思います。私の夢ですが、能登だけではなく、いろいろなところでハートランドヒルズを作りたいと思っています」と中川氏は締めた。
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