このページの本文へ

ローコードワークフロー自動化の「Claris Connect」は開発者向けプランを無償化

ローコード開発基盤「Claris FileMaker 2023」国内提供開始

2023年05月23日 09時01分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 Claris International(クラリス)は2023年5月23日、ローコード開発プラットフォームの最新バージョン「Claris FileMaker 2023」(以下、FileMaker)を発表した。同日から日本での提供を開始する。さらに、ワークフロー自動化プラットフォーム「Claris Connect」の開発者向けプランである「Claris Connect Developer」を無償化することも発表している。

 Claris International プロダクトマネージャーの森本和明氏は、最新版のFilemaker 2023について、「パートナーやユーザーからのフィードバックに基づき、パフォーマンスや安定性、信頼性を向上し、これまで以上のパワーを提供することができる製品。反復リリースにより、今後も継続的に進化を続ける」と述べた。

今回からリリース年が製品名に加わった「Claris FileMaker 2023」

Claris International プロダクトマネージャーの森本和明氏、セールスエンジニアの田中元規氏

3年ぶりの新製品、「反復リリース」方式で進化を継続する

 今回のFileMaker 2023は、2020年5月にリリースしたFileMaker 19以来、3年ぶりの新製品となる。内部的なナンバリングは“バージョン20.x.x(V20)”だが、今回から製品名としてはリリース年で表記することになった。

 前述したとおり、FileMakerではV19から「反復リリース」方式を採用し、継続的な機能追加を行っている。森本氏は、それ以前の「メジャーリリース」方式との違いを次のように説明する。

 「V18以前では、メジャーリリースの際に一気に新機能を追加しており、その後のマイナーアップデートは不具合を修正するだけで、新機能の追加はなかった。V19からは、お客様はパートナーの要望をいち早く製品に反映し、機能を追加していくために反復リリース方式へと変わり、その結果として過去の歴史に類を見ないペースで(機能が)進歩してきた。Filemaker 2023においても反復リリースを継続し、進化を続けていく」(森本氏)

 ちなみにFileMaker 19では、3年間で7回のアップデートをリリースしている。メジャーバージョンアップがなかったため、一部ではFileMakerの開発を中止したのではないかという誤解や、最新のテクノロジーやセキュリティ強化が行われていないのではないかという不安も招いてしまったという。さらに、FileMakerの標準サポート期間は2年間だが、「19」という名称ではサポート期間がわかりづらいという懸念もあった。FileMaker 2023という名称への変更で、そうした懸念を払拭する狙いがある。

FileMaker 17~2023のリリース履歴。V19より反復リリース方式を採用した

 FileMaker 2023は、米国などワールドワイドでは4月25日(米国時間)にリリースされていた。日本および韓国では、現地語でのサービス品質向上を図り、5月23日のリリースとなった。

 なお、FileMakerアプリをクラウド上でホストできる「FileMaker Cloud」の最新バージョンリリースについては、現時点では「時期未定」としている。これは「FileMaker 19.4以前のバージョンで利用しているユーザーが接続できなくなる。ユーザーが利用するインスタンスのバージョンを一斉に上げる必要があるため」(同社)で、その準備期間を設けるためだという。

FileMaker Pro、FileMaker Serverなどそれぞれの機能強化点

 FileMaker 2023で提供される「FileMaker Pro」では、新たに2つのスクリプトと、4つの関数を追加。Claris Connectのフロートリガー機能を追加したことで、誰でも簡単にAPI連携ができるようになった。またiOSのテキスト認識技術を活用するGetLive Text関数では、日本語、韓国語、ウクライナ語を新たにサポート。精算レシートからの文字認識、売上データのデジタル化といった用途に利用できる。

 セキュリティでは、Open SSL 3.0への対応のほか、OAuth2.0経由での「Google Workspace」や「Microsoft 365」への対応、作成/変更/削除をキャッチしてログを作成するスクリプトトリガー「OnWindowTransactionトリガー」の追加が行われている。

FileMaker Proの新機能、セキュリティ強化の概要

 なお「FileMaker Go」でも、FileMaker Proで追加された機能と同等のものが追加されている。

 FileMaker Proの価格(税抜)は、量販店の店頭などで販売されるシングルライセンス(店頭パッケージ)が6万3360円、アカデミック版は3万8000円。旧バージョンからのアップグレードは3万8000円。そのほかボリュームライセンスもある。シングルライセンス、ボリュームライセンスとも旧版からの価格変更はない。

 サーバー版の「FileMaker Server」では、新たにUbuntu 22 LTS(インテル/Armプロセッサ)をサポートした。ウェブブラウザからカスタムアプリを利用できる「Claris FileMaker WebDirect」では、従来の2倍となる最大1000ユーザーの同時接続を実現。FileMaker Server 1台あたりで共有できるファイルの上限についても、125ファイルから256ファイルへと拡張している。バックエンドインフラストラクチャも強化しており、OData 4.01、Java 17、Node.js 18などを採用した。Claris International セールスエンジニアの田中元規氏は、「Java 17により、強制ガベージコレクションを利用して、効率的なメモリの再利用が可能になる」と説明した。

FileMaker Serverの機能強化点。WebDirectの同時接続数が最大1000ユーザーに拡張された

ローコード開発のFileMaker、Claris Connectで生産性向上を支援

 FileMakerは、ローコード開発したアプリをオンラインでもオフラインでも動作させることができるため、政府機関や地方自治体、医療機関、NPO法人を含め、業種/業務を問わず様々なユーザーが活用している。DX推進のためのツールとして、生産性向上やコスト削減などに効果を上げているという。

 「FileMakerはJavaScriptやJSON、REST APIなどに対応し、豊富なライブラリを活用したり、他のプラットフォームと容易に統合できたりする。JavaScriptアドオンを利用することで、カスタムアプリにプロの開発者が作成した高度な機能をドラッグ&ドロップで組み込むことも可能だ。iOSが持つ、テキスト認識機能やセンサー機能、音声によるSiriショートカットの活用、NFCタグの読み取りといった様々な機能を生かしたアプリも、SwiftやXcodeを使いこなせなくてもローコードで開発できる」(田中氏)

 さらに田中氏は、2020年3月にリリースしたClaris Connectにより、誰でも簡単に自動化ワークフローを作成し、特定のアプリや機能を統合して利便性を向上させることができると強調した。

 「Claris Connectを使ってワークフローを自動化することで、手作業を排除でき、煩雑な作業のミスを減らしながら生産性を高めることができる。日本市場向けのサービスである『クラウドサイン』や『Chatwork』『NAVITIME』などにも対応しており、日本における利用が促進されている」(田中氏)

 さらに、アップルのグループ企業として厳格なセキュリティ基準の順守を重視しており、SOC2 Type2やISOコンプライアンス認定の取得などに取り組んでいると説明した。

 なお今回、これまで年額2万7120円(税抜)で提供してきたClaris Connect Developerを無償化している。FileMakerの開発ライセンス(FDS:FileMaker Developer Subscription)に登録していなくても、無償で永続的に利用できる。

 「FileMaker 2023のリリースによって、より多くの人が、FileMakerプラットフォームと様々なクラウドサービスを連携させるようになると想定している。市民開発者にもFileMakerに触れてもう機会を増やすことが重要であり、期限を設けずに、市民開発者自らのペースで、Claris Connectを試すことができ、問題解決や生産性向上を実現してもらえるようになる」(森本氏)

Claris Connectの新しい料金プラン。月間500APIリクエストまでの開発者向けプランが無償化された

■関連サイト

カテゴリートップへ

ピックアップ