伊藤忠丸紅鉄鋼では、kintoneを導入して約3年で、アプリの7割を現場が開発するようになったという。kintone先生となったコムチュアと二人三脚で歩んできたkintoneの導入から全社展開までの道のりを同社のIT推進部に聞いた。(インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)
kintone導入のきっかけは、隣のビルがサイボウズだったから?
伊藤忠丸紅鉄鋼は伊藤忠商事と丸紅の鉄鋼部門が合併して2001年に生まれた鉄鋼商社。国内外100社以上の事業会社を傘下に持ち、輸出入、販売、加工など鉄鋼製品のあらゆるビジネスに関わっている。
今回話を聞いた伊藤忠丸紅鉄鋼のIT推進部 営業システムチームは基幹システムの運用だけでなく、CDO(Chief Digital Officer)の配下で業務のデジタル化を推進している。IT推進部 営業システムチーム長代行 宮﨑良太氏は、「鉄鋼業界はデジタル化が遅れている産業の1つ。特に商社は個人がExcelを抱え込んで業務を進めることが多いので、社内の情報共有を促進する必要がありました」と語る。
kintoneに関しては、ペーパーレスやワークフローの導入、顧客及び事業会社情報の集約という目的で導入した。きっかけは同社の日本橋オフィスがサイボウズオフィスの隣だったから。「別の製品を検討していたのですが、コストもかかったし、難しかった。ITリテラシが高くない会社が使うのはハードルが高かったんです。そんな状況の中、隣のビルがたまたまサイボウズ様だったので、相談しにいきました。オフィスにも伺いましたし、青野社長にも社内講演いただきました」と宮﨑氏は語る。
kintone導入のパートナーに関しては、別のパートナーとトライアルまで実施したが、スピード感が乏しかったため、信頼できるパートナーをサイボウズに相談したところ、コムチュアの名前が挙がったという。コムチュアは、kintone開発のみならず、ガバナンス体制の構築、社員教育などを得意とし、エンタープライズでのkintone導入で高い実績を持っている。
こうして2020年、伊藤忠丸紅鉄鋼はコムチュアをパートナーとして、kintoneの導入を開始した。2021年には、同社が使っていたサイボウズ デヂエからkintoneへの移行を行なった。また、基幹システムであるSAPとkintoneを連携した業務マニュアルを作成し、他社製品に比べて1/3程度のコストで実現できたという。
コムチュアの担当者がkintone先生となり、相談や質問に答える
伊藤忠丸紅鉄鋼とコムチュアがタッグを組んで進めたのが、現場部門でのkintoneアプリ開発だ。「kintoneのいいところって、横に拡がりやすいところ。最初は新しモノ好きが作るのですが、使ってみたら便利さを体感すると、アプリ作ってみようという人は増えますね」と宮﨑氏は語る。
最初に進めたのは、kintoneアプリを開発しやすくするための仕組み作りだという。「現場部門が作るアプリにはルールが必要。そのため、スペース申請やアプリ申請などのアプリをコムチュア様といっしょに作成しました」(宮﨑氏)。
ユーザー教育やアプリ開発の支援も、伊藤忠丸紅鉄鋼のIT推進部とコムチュアが一体となって行なっている。伊藤忠丸紅鉄鋼 IT推進部 営業システムチーム 山内宏敏氏は、「kintoneでこんなことやってみたいという問い合わせが来たら、まずわれわれIT推進部とコムチュアの担当者を入れた打ち合わせを設定します。そこでkintoneを説明し、できそうならそのまま作ってもらい、難しければコムチュアさんにテンプレートを作ってもらいます」と説明してくれる。Excelとメールでのやりとりをもっと簡単にできないかという相談は多いという。
ユニークなのは「kintone先生」という定例イベント。毎週のように開催し、コムチュアの担当がユーザーからの相談や質問に答えるようにしている。kintone先生は名前からしてユニークだ。「やっていることは、アジャイル開発やコンサルなのかもしれませんけど、私たちはそういう固い言葉使いたくなかった。親身に相談してもらうにはやっぱりkintone先生でしょう」と宮﨑氏は語る。
ユーザーから直接コムチュアの担当者への問い合わせも飛ぶこともあり、kintone先生として絶対的な信頼があるようだ。「昔は現場部門の説明がわからないときはフォローに入っていましたが、今ではコムチュア様のご担当者さんも経験を積んでいるので、1人でも大丈夫なくらいです(笑)」と山内氏は語る。
本稼働に移ったアプリも続々 抱えていたExcelをkintoneで共有
また、「BPRカップ」というキャンペーンでは、各部署で業務改善を楽しみながら競い合っている。「基本的に競い合うのが好きな会社なんです」(宮﨑氏)とのことで、半年間をかけて業務フローと改善のためのアプリや施策、プレゼンや動画まで作るため、かなり本格的。kintone必須というわけではないが、コムチュア様のkintone先生も審査員として参加する。「エントリした部署は課長も含めてkintoneやRPAの講習を集中的に受けるんです。でも、講習がないとアイデアも浮かばないので」(宮﨑氏)ということで、スキルの底上げにも寄与しているという。
こうした施策の結果、コムチュアが作る「プロ開発」に比べ、現場開発の方が圧倒的に多くなった。「新しモノ好きが最初に作ったのも、意外と凝ったアプリ。もはや7割くらいは現場部門での開発ですね。社員900人に対して、アプリの申請数が200なので、ユーザーも増えたなと思いました」(宮﨑氏)。
実際に本稼働に移ったアプリの数十あるとのことで、テレワークで重要なペーパーレス化に貢献しているという。宮﨑氏は、「数字で図りにくいのですが、今まで自分で抱えていたExcelをkintoneで共有できるようになったのは大きな効果」と語る。
今後は各部門で独自に利用しているシステムの置き換え先や、グループ会社との連携についても、kintone化していきたいという。「kintoneのいいところは他のサービスとつながるところ。だから今年もコムチュア様に相談しながら、ペーパーレス、インボイス、電帳法などをいろいろなサービスとつなげていきたいと思います」(宮﨑氏)。
(提供:コムチュア)