安城市「あんじょうSDGs共創パートナー」の“ユニーク活動”探してみた!

ポイントは“次の1000年のために” SDGs&最新技術で神社仏閣を独自設計&監理【株式会社MC三河設計】

文●初野正和

提供: 安城市

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 愛知県安城市は、持続可能なまちづくりとSDGsに取り組む企業・団体と共にSDGsの目標達成を目指す「あんじょうSDGs共創パートナー制度」を立ち上げ、現在190社を超える企業と団体がパートナーとして登録している。

 シリーズ企画として、そんな共創パートナー企業・団体を広く発信。事業内容やSDGsの活動をはじめ、地域との結びつきまで、「実はこんなユニークな取り組みを行っていた!」と、共創パートナー各企業・団体の知られざる魅力を深掘りしていく。最終回は、愛知県安城市に本社を置く株式会社MC三河設計を紹介する。

伝統的な技術が必要な神社・仏閣の設計監理を手がける

MC三河設計が設計監理を務めた南明治八幡社

 1985年に設立されたMC三河設計は各種建築の設計監理を担っている。住宅やマンション、商業施設など、安城市内を中心にさまざまな物件を手がけ、ほぼ依頼主の口コミや紹介で仕事を増やし続けてきた。

 特に、神社や仏閣の施工実績は目を見張るものがある。安城市内にある多くの神社・仏閣の建て替えや改修の設計監理を手がけており、最近では南明治八幡社や光明寺などがそうだ。

 「先人たちが造ったものを理解して、少しだけ手を加えて皆さまに愛される建物にするのが私たちの役目」と話すのは、代表取締役を務める石川博さんだ。石川さんは夜間学校に通いながら数寄屋大工として腕を磨き、伝統建築への理解を深めていった。現在は一級建築士の他、航空機操縦士や航空特殊無線技士の資格も持つ。

 同社では復元や改修の際、建材の再利用を行っている。しかも全力で、納得のいくまでやるのが石川さんのポリシーだ。

「伝統的な日本建築には無駄がありません。私たちも同じように、設計する際は無駄を省いています。例えば、300年前に建てられたお寺の土壁は、解体時に捨てずに保存し、再度練り直してもう一度使います。他にも、竹の木舞(※1)を再利用したり、廃材となる御影石(※2)を再加工して基礎に使ったりしています。当然、お客様のコスト削減にもつながります」
※1 こまい。壁の下地として竹や細木を縦横に組んだもの
※2 昔の御影石は地元の良質な石だったが、現在は輸入品を使用する事が多い

御影石を再加工し、柱を据えて建物を支える礎石として利用

次の1000年のために最先端の技術も取り入れる

伝統技術の継承と新しい技術の開発が評価され、次々と依頼が舞い込んでいる

 現代ならSDGsとして評価される方法を、同社はずっと前から採用してきた。ただし、何でも再利用したり、当時のままに復元したりするわけではない。バリアフリーに変更することもあれば、ステンレスなど耐久性に優れた素材を用いることもある。建物の事前調査では、3Dスキャンや赤外線カメラなど、最先端の技術も使う。石川さんは「次の1000年のために、合理的に」と説明する。

「神社や仏閣を復元する際、当時と同じ素材や方法を用いる場合があります。それはそれで素晴らしいことです。でも、よく考えてみてください。1000年以上も前に建てられた40mや50mもある本堂や五重塔は、その時の最先端の技術で建てられました。当時の超高層ビルなのです。それをまったく同じ素材や方法で建て直すと、無理が生じることもあるでしょう。私たちは残すべきものは残し、最先端の素材や技術を取り入れる。次の1000年のために昔と今を融合させています」

 同社は、伝統技術の継承と新しい技術の開発をテーマとする「建築技術研究所」を開設。「建築物のためになる」と判断した技術は積極的に取り入れている。こうした姿勢が評価され、遠方からも次々と依頼が届いているそう。しかし、石川さんは「やっぱり自分の目で見られなくなってしまってはいい仕事ができません。ご迷惑をかけるわけにもいきませんから」と話し、なるべく地元を優先して仕事を引き受けている。

ボランティア活動に尽力し、国際的な賞も受賞

ボランティア活動に尽力してきた代表取締役の石川博さん(写真右)

 石川さんは東日本復興支援ボランティアにも全力を注いできた。物資の寄付や炊き出しなどを行い、被災地を支援。8年半の間に135回も東北へ足を運んだ。また、NPO法人「安城まちの学校」の理事を務めるなど、地域のボランティア活動にも尽力してきた。

「阪神大震災の時、多忙でボランティアに行けなかったんですよね。それが本当に心残りで…。東日本大震災の時は町内会の相談役をやっていたこともあり、直接支援要請が届いたので、すぐに行動に移しました。この時の支援は自分が納得するまでとことんやりましたね。被災者の方々と交わした『また来るから』の言葉を社交辞令で済ませたくなかったんです。仕事もそうですが、何事にも手を抜けない性分なので」

石巻体育館で被災者にうどんを振る舞う石川さん

 安城ロータリークラブの会員でもある石川さん。こうした数々の活動が評価され、2013年に「ロータリーで最も栄誉ある賞であり、時間と才能をボランティア活動に捧げて人びとを助けたロータリアンとローターアクターに贈られる賞」とされる「国際ロータリー超我の奉仕賞」を受賞した。これは長い歴史の中で、愛知県内では4人目、13年ぶりの受賞とのこと。

 どんな小さな仕事でも、地域のボランティアでも全力投球。石川さんの信念が宿るMC三河設計は、無駄を徹底的に排除し、未来を見据えた豊かな文化を創造していく。

(提供:安城市)