FCNTの法人向けスマートフォン「arrows BZ02」は、幅広い分野・業種で利用されている。内線電話やデータ管理など、用途はさまざまだが、株式会社ティ・エム・エフ・アース(以下、TMF Earth)では、同社が業務用ウェアラブルカメラとして提供する「LINKEYES」に採用している。同社の代表取締役社長の斎藤 浩氏に「arrows BZ02」を導入した経緯と成果についてうかがった。
高画質・低遅延で映像を転送するソリューションを提供
斎藤氏は、TMF Earthについて「世界で初めてLTEでリアルタイムでテレビ放送ができる会社」と説明する。LTE回線で映像を伝送するプラットフォームを提供し、特に「接続が切れないこと」と「低遅延」を特徴としている。実際に、日本のテレビ局が海外から報道する番組の利用を検討しているそうだ。
同社のシステムでは、映像はわずか0.5秒の遅延で送れるという。「人が何かを見て判断するのに、だいたい0.5秒を要します。なので、実質的にはリアルタイムと言える時差で、我々は0.5秒に非常にこだわっています」(斎藤氏)
斎藤氏が、映像配信に着目したのは8年前。当時、別の事業のためにタイ・バンコクに滞在していたときに爆弾テロ事件が発生。「その時に、犯人が映った画像があったのですが、VGA画質で見えないという話が出てきて……。高画質の映像を飛ばせるようにしなければならないと思い、2017年に帰国して、この事業を始めました」(斎藤氏)
「IoTにとって視覚は非常に重要なんですよ。情報の約85%は視覚から入るものが占めます。音の情報を含めると90%を超えます。多くの企業はその他の5%程度の情報を扱ってIoTに取り組んでいるのが実情。私は画像を扱えるようになると世の中が変わると確信していました」(斎藤氏)
TMF Earthの高画質かつ低遅延での映像転送には、他社を大きく上回る映像圧縮技術や、受け取った映像を扱うクラウドでの管理技術などが用いられている。データを軽量化することによってネットワークやクラウドにかかる負荷を減らし、コストを大幅に削減できることも強みとしている。
現在、5Gのエリアが広がりつつあるが、斉藤氏の見解では、「当分は実用には利用できない。LTEでも十分映像配信が可能だ。」という。「5Gの帯域は、現状そんなに速度が出ないんですよ。とくに上りは遅い。しかも、5Gはコストがかかる。LTEでもより低いコストで、よりきれいでIoTやDXに利用できる映像を送ることができます」。
現在、TMF Earthが提供するサービスは、大きく3つに分けられる。まず、監視カメラサービス、次にDX&IoT動画Platformサービスで、これは「他社には実現できない」ものだという。そして、撮影者が動きながらでも映像を伝送できる「ウェアラブルカメラ」。これに「arrows BZ02」が使用されている。
「arrows BZ02」が選ばれた理由
TMF Earthは「arrows BZ02」に同社独自のソフトウェアを搭載し、ウェアブルカメラ「LINKEYES」として、クラウド込みでサービスを提供している。
「主に遠隔臨場や遠隔支援などに使っていただいていますが、映像が切れないことが大前提。FCNTのハンドオーバーなどの技術と、弊社の圧縮伝送などの仕組みを合わせて、それを実現しています。カメラには、ピント合わせと手ぶれ補正のソフトを搭載し、リアルタイムの映像配信に最適化しています」(斎藤氏)
TMF Earthが「arrows BZ02」を選んだ理由として、まず「FCNTによってOSがコントロールされている」ことを挙げた。「arrows BZ02はOSをアップデートすることなく使い続けられます。OSが更新されると、システムもそれに対応させる必要があるので余計にコストがかかります。OSを固定して使えることは、法人向け端末では非常に重要なことです」(斎藤氏)
FCNTが法人向けビジネスで実績があることも評価しているとのこと。「B2BとB2Cでは、ビジネスの考え方がまったく異なります。B2Cはその都度売れれば成功ですが、B2Bは今だけでなく、次の世代にも続く関係性を築かなくてはならない。長く良い関係を続けていくうえで、FCNTには他社に比べてB2Bの実績があることを評価しました」(斎藤氏)
arrows BZ02は、防水(IPX5/IPX8)・防塵(IP6X)に加えて、落下の衝撃に強い堅牢性も兼備。米国国防総省の資材調達基準であるMIL規格の23項目の要件も満たしている。さらに、泡タイプのハンドソープや食器用洗剤で洗えて、アルコールや次亜塩素酸水での除菌・消毒もできる。
「ヨーロッパでは防水・防塵はIP55くらいで十分と思われていますが、日本ではIP68を求めるユーザーが多いので、それも選択理由になりました。海外メーカー製でもIP68の端末はありますが、価格が極端に高くなるんですよ。また、法人向け端末は、個人の持ち物ではないので、荒く使われがちです。堅牢性は非常に重要だと考えました。レンタルで使用することもあるので、汚れた場合に洗えるのもいいですね」(斎藤氏)
実際に「LINKEYES」を導入している企業の反響は?
「arrows BZ02」を使う「LINKEYES」の導入事例として、地盤調査会社サムシングを紹介してくれた。同社では「LINKEYES」を全社採用し、建築予定地で建物の基礎工事が行なわれる前に実施される地盤調査、および地盤改良工事で利用されている。現地に行かなくても遠隔監視できるので、⾼画質の映像で現場の状況を確認でき、トラブル発生時などには、現場の状況を本部が動画で把握・共有し、即時に状況をリアルタイムに検証し解決ができると、高評価のようだ。
リアルタイム映像配信とDX動画Platformを武器に
さらなる事業拡張を予定
TMF Earthは現在、建設・土木業界や大規模工場を中心に、超圧縮技術や画像取得ディバイス開発技術を駆使した監視カメラやウェアブルカメラを使って集中管理・監視、遠隔臨場・遠隔支援サービスを提供している。さらに大手製造業向に対し、センサーIoTに動画を追加するサービス、DXに最適なPlatform LINK Liew DX platformによる“動画保存用ストレージサイズ、ラック数の削減、それに伴う場所や電気代、運用コストを大幅に削減しTCOを改善するサービス”や、“動画を使ったAIパッケージサービス”も展開している。
現在、動画圧縮は端末側で行なっているが、今後は、サーバー側で行なうことでより広いサービスを展開していく予定だそうだ。また、動画を使ったDXサービスを展開するサービスプロバイダーや、XR市場やウェブ系動画配信市場などに向けて、容量が少ないにもかかわらず高精度な動画を容易に撮影でき、リアルタイムに伝送し、安価に保存、その動画コンテンツを使ってビジネスを展開する様々な動画配信や動画利用サービス事業を展開するパートナーに広げていくことを考えているという。
「弊社のシステムを使えば、誰もがリアルタイムで映像を配信できるようになります。“今でもYouTubeなどでリアルタイムで配信できるのではないか”と思うかもしれませんが、実際には一度録画してから配信しているので“擬似リアルタイム”なんですよ。本当のリアルタイムとは体験がまったく異なります。海外から、ライブ配信しても、国内とまったく変わりません。口の動きと音声が一致し、大画面でもクリアな動画をほぼリアルタイムで利用することもできます。スマホやタブレット用の画像ならば、更に小さなデータ容量で動画を伝送したり、保存したりすることも可能です。ドローンにカメラを搭載して映像をリアルタイムに伝送し活用したり、世界中のどこからでもリアルタイム動画を使ってコミュニケーションをしながらサービス提供をすることができるビジネスに活用していただいたり、イベント会場で⼤型モニターとは別に観客ひとりひとりが持つスマートフォンでリアルタイムの映像を⾒ることが可能になったり、VRに応⽤したり、遠隔医療に活かしたりと、いつでもどこでも空間を共有できることで社会の課題を解決できるサービスにご利用いただくことを考えております」(斎藤氏)
このように「arrows BZ02」は通信機能を備えたカメラとしても活躍の場を広げているのである。
「arrows BZ02」の主なスペック | |
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メーカー | FCNT |
ディスプレイ | 5.6インチ有機EL |
画面解像度 | 720×1480ドット |
サイズ | 約148×71×9.4mm |
重量 | 約160g |
CPU | Snapdragon 460 1.6GHz×4、1.8GHz×4、オクタコア |
内蔵メモリー | 4GB |
内蔵ストレージ | 64GB |
外部ストレージ | microSD/microSDHC/microSDXC (最大1TB) |
OS | Android™ 12 |
カメラ | アウト:約1310万画素 イン:約800万画素 |
対応バンド(4G) | 1/3/5/8/19/26 |
無線LAN | 802.11a/b/g/n/ac(5GHz対応) |
バッテリー容量 | 3600mAh |
FeliCa/NFC | ○/○ |
GPS | GPS、GLONASS、BeiDou、Galileo、QZSS(みちびき) |
ワンセグ/フルセグ | ×/× |
防水(IPX5/IPX8)/防塵(IP6X) | ○/○ (洗える/アルコール除菌/耐薬品) |
生体認証 | 指紋認証 |
Dual SIM | ○ (microSDは排他使用) |
USB端子 | Type-C |
カラバリ | ブラック |