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連携協定を締結、幅広い市民サービスを対象に市職員の生産性向上と市民の満足度向上に取り組む

石狩市がスタディスト「Teachme Biz」活用で市民手続きガイドを拡充

2023年02月07日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 北海道石狩市は2023年2月6日、クラウド型マニュアル作成/共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を提供するスタディストとの連携協定を締結し、市役所の窓口業務を中心とした生産性向上や、市民の満足度向上に取り組むと発表した。

 取り組みの第1弾として、「引越しワンストップサービス」と「子育てサポート」の2つの市民サービスに関するオンラインガイドと市民市民向けマニュアルを共同で作成/公開し、行政サービスを市民へ適切に届けられるようにする。

連携協定を締結し、まずは「転出入手続き」と「子育てサポート」の2テーマで取り組みを開始する

石狩市市長の加藤龍幸氏(右)、スタディスト 代表取締役の鈴木悟史氏(左)

市庁内だけでなく市民向けサービスでもガイド/マニュアルを提供

 スタディストのTeachme Bizは、企業におけるマニュアル作成や管理を効率化するクラウドソリューションだ。マニュアルの作成時間を大幅に削減して生産性向上につなげるだけでなく、人材育成の効率化や顧客満足度の向上が見込めるもので、2000社以上の導入実績を持つ。1社あたり月額5万円(税別)から利用できる。スタディストの鈴木氏は、Teachme Bizを使うことで画像/動画ベースのマニュアルを簡単に作成し、クラウド上で簡単に共有できると説明した。

 「ビジュアルが主役のマニュアルを作成できる。とくに手続きや書類の書き方などについては、ビジュアルで示した方が理解しやすく、直感的に、内容が正しく伝わる」(鈴木氏)

 一方で、石狩市市長の加藤龍幸氏は「2022年度を『石狩市のDX元年』と位置づけ、市民の利便性向上と業務の効率化に向けた様々な取り組みを進めている」と説明する。

 石狩市では2020年8月からTeachme Bizを導入し、基幹システムの利用手順書や部署ごとの業務手順書のデジタル化を進めてきた。この取り組みは、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局とデロイト トーマツ グループによる「行政との連携実績のあるスタートアップ50選」に選ばれている。

 その導入背景について、スタディスト 代表取締役の鈴木悟史氏は次のように説明する。

 「石狩市では毎年100人以上の職員が部署異動するため、業務引き継ぎのコストが膨大なものになっていた。また、前任者から業務手順を引き継いで戦力化するまでに2~3カ月もの期間がかかり、ナレッジが組織に定着しにくいという課題があった。人から人に伝えるのではなく、マニュアルを活用することで即戦力化につなげ、ナレッジも伝承できるようにした」(鈴木氏)

 石狩市市長の加藤龍幸氏も、従来は「ナレッジが個人に蓄積され、異動によって失われてしまったり、伝承に時間がかかったりといった課題があった」と語る。この課題を解決することで、現場でのミスを減らし、職員の負担を軽減することができると期待する。

無駄な引き継ぎコスト削減、業務の高度化に向けて、庁内各部署の業務のマニュアル化に取り組んだ

 さらに2022年11月からは、市民向けに「転入手続きガイドシステム」と「転入手続きマニュアル」の提供を行う実証実験も開始し、デジタル化による市民満足度向上や業務効率化の効果測定にも取り組んでいる。

 この転入手続きガイドは市民が質問に回答することで必要な手続きを抽出するシステム、手続きマニュアルは手続きの手順を具体的に案内するドキュメントだ。これらを提供することで、転入手続きに対する疑問を市民が自己解決できるようにすることを狙う。

 「庁舎内での利用に留まらず、市民サービスにも活用するという狙いから実証実験を開始した。石狩市の人口は5万8000人で、毎年およそ2000人の市民が転入するが、2000人の一人ひとりに紙の転入書類を渡して手続き説明を行い、2000人の市民が庁舎を訪れて手続きをしている。この効率化を図り、効果を測定する目的で取り組んでいる」(鈴木氏)

転入手続きを行う市民への「手続きガイド」「手続きマニュアル」も作成した

 実証実験を行った2022年11月7日~2023年1月31日には、石狩市に847件の転入があった。手続きガイドの利用者は483人、最終的な手続き内容の結果閲覧は305件(転入件数の36%)、一方で手続きマニュアルは835回の閲覧があった。

 利用した市民からは「必要な情報を得ることができる」「手続きにかかる時間が短縮できる」「市役所の業務時間外に利用できる」「職員に質問する必要がない」といった評価があがった。また職員側でも「電話による問い合わせが減る」「提出漏れや書類不備が減る」と評価されており、手続きガイドについては9割、手続きマニュアルについては8割の職員が「あったほうが良い」「どちらかというとあったほうが良い」と回答している。

 スタディストの試算によると、転入手続きに関わる電話問い合わせ対応や窓口対応の削減により、年間で432時間の効率化につながるという。「市民の利用率を高めることで、効果をさらに高めることができる」(鈴木氏)。

市民向けガイド/マニュアルの対象をさらに拡大、工数削減へ

 今回締結した協定に基づく第1弾の取り組みとして、デジタル庁が2月からスタートした「引越しワンストップサービス」(転出届のオンライン申請サービス)と、石狩市による「子育てサポート」(妊娠中/子育て家庭に対する30種類以上のサポート)を対象とした市民向けガイドシステムを提供する。3月までにはガイド、マニュアルを作成する予定だ。

 スタディストの試算によると、この2つのガイドを作成することで、職員の工数は年間1080時間(転出届手続きガイドで216時間/年、子育てサポートガイドで864時間/年)の削減が見込まれるという。この第1弾に続き、年金や福祉、教育などを中心に、さまざまな住民サービスにおいてガイドやマニュアルを整備していく予定だ。

新たに「引越しワンストップサービス」「子育てサポート」に対する市民向けガイドを提供する

 「現在、複数の自治体から話がある。窓口業務を外部委託している自治体では、契約先を変更する際に、サービス品質の継続性維持のために活用したいというニーズもある」「マニュアル作成サービスは広く提供しているものだが、ガイドサービスは石狩市にだけ提供している。ほかの自治体からも要望があれば正式なサービスとしての提供を検討したい」(鈴木氏)

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