Siphonysta(サイフォ二スタ)
発売日 2023年2月21日
想定実売価格 6万6000円
タイガー魔法瓶
https://www.tiger-corporation.com/ja/jpn/newsroom/press-release/pr_230125_01/
こいつぁなかなかヤベーもんが出てきましたよ。
炊飯器や電気ポットでおなじみのタイガー魔法瓶が2月21日に発表したのは、サイフォン式コーヒーメーカー「Siphonysta(サイフォ二スタ)」。喫茶店で見かけるサイフォン式コーヒーがボタン1つで淹れられる新型コーヒーメーカーです。去年Kickstarterに出ていたので人によっては知っているかもしれませんが、いやー面白いですよこれ。
ボタンを押すだけサイフォン抽出
サイフォン式はコーヒー粉を熱いお湯に浸して抽出する「浸漬法」と呼ばれる抽出方式の1つ。フラスコを使った科学実験のような見た目も特徴ですが、サイフォニスタは一見すると別物です。基本の使い方は一般的なコーヒーメーカーと同じで、コーヒー粉と水を入れてボタンを押すだけ。サイフォン式特有のややこしさはありません。
2つの透明なシリンダーにそれぞれコーヒー粉と水を入れ、仕上がりを選んでボタンを押すと運転開始。蒸らし、抽出、かくはんへと進んでいきます。機械が蒸気でかくはんしてくれるので竹べらで混ぜる必要はなく、シリンダーは樹脂製なのでフラスコのように落っことして割る心配もなし。
「苦め・酸っぱめ」「濃いめ・軽め」を選択可能
仕上がりは「苦め⇔酸っぱめ」「濃いめ⇔薄め」をそれぞれ3段階で調節可能。抽出の終盤だけ湯温を下げて雑味を減らすという普通のサイフォンでは難しかった温度調節機能も搭載しています。初めと終わりに2つの温度帯があるよということで「Dual Temp」モードと名付けられています。
ちなみにバルミューダのコーヒーメーカー「BALMUDA The Brew」は終盤にお湯を足すことで雑味を減らしていて、お湯を足す方をレギュラーモード、お湯を足さない方をストロングモードと呼んでいました。やっていることは似ていますが、Dual Tempモードは一見よくわからんですね。
仕上がりの選択キーは上にあり、ボタンに見えないデザインになっています。英語で「Bitter」「Acidic」「Light」「Strong」「Dual Temp」とインジケーターが光って表示されますが、微妙に読みにくくておぼえにくい。慣れかなとは思いつつ、テプラが貼られる未来も見えました。
フィニッシュは噴水のように上から出てくる
シリンダーは「下でコーヒーを抽出した後、減圧して上に出す」という、普通のサイフォンを上下逆さにしたような機構。透明なシリンダーからは抽出工程が丸見えです。特に「上に出す」ところは噴水のようにブッシャーと出てきて楽しい。
上下逆さにした理由は金属製のメッシュフィルターを使っているから。ペーパーフィルターなどに比べて目が粗いメッシュフィルターはコーヒーの油分を出しやすい一方、コーヒーの微粉も通してしまいます。なら上下逆さまにすれば微粉が入りにくくなるよねということです。
抽出後は手でレバーを引いてカップやタンブラーに注ぎます。全自動ではなくあえて手でやることで「やった感」が出ていいぞというわけ。実際楽しいです。
味わいは予想以上に重量感があってびっくり
肝心の味わいは、サイフォン式らしく香りが良くて丸みがある味。1杯目に試した「Dual Temp」は余韻が軽くぐびぐび飲めました。2杯目に試した「普通」の「濃いめ」は予想以上に重量感があってびっくり。牛乳入れたくなりました。メッシュフィルターの効果ですかね。豆の種類や焙煎の深さによってモードを変えてみると楽しそうです。
お手入れは食洗機OKの簡単仕様
同社製の電気ケトルにも使われる強力なヒーターを入れているため抽出が速いのも特徴です。1回あたりの抽出量は1〜2杯分(120〜240ml)、抽出時間は3分30秒程度。1杯分の「酸っぱめ」「薄め」なら2分40秒程度で抽出します。
抽出後はシリンダーからフィルターを外し、コーヒー粉を捨ててシリンダーを水洗い。食洗機OKだそうでズボラにはありがたいですね。
ただしシリンダーを固定するユニットは食洗機NG。穴が複数空いていて構造が複雑なのでブラシがあると便利かもしれません。
ほかにはカップ受けの下部分も外して水洗いできます。本体内部の経路についてはクエン酸水で洗浄するコースがあるそうです。
サイフォンのプロ「ここまで再現できるか」
発表会にはサイフォンコーヒー日本チャンピオンである元丸山珈琲の中山吉伸(なかやまよしのぶ)さんが招かれ、サイフォニスタについて「ここまで(サイフォン式の味を)再現できるかというのが率直な感想」と話しました。
機械がプロの技に近づくことに脅威は感じないかという質問に対しては、「テクノロジーが追いつくことで一般人との距離が近づき、プロが淹れるコーヒーをもっと飲んでみたいという需要が生まれると思う」と回答。プロはお客の好みに臨機応変に対応できるのが強みで、そこは変わらないということでした。
さらには「従来のサイフォンは完全に沸かさないと淹れられなかった。温度の分野が多様化できると、もっと低い温度でお茶を淹れたり、だしを取ったりできるかもしれない」と、調理器具としての可能性も語っていました。
コーヒー好きなら試す価値アリ
サイフォニスタで同社が狙うのは当然ですがコーヒー愛好家。自宅用にスペシャルティコーヒーが売れていることを「フォースウェーブ(第4の波)」と呼び、豆本来の味わいと香りを楽しめるサイフォン式抽出を楽しんでほしいと話します。
要するにコモディティ化した普通のコーヒーマシンではなく、コーヒーにお金を惜しまない人に買ってもらいたい高級機。6万6000円もするわけでおのずとそうなるわけですが、まったく新しいコンセプトを出してきたのが面白いですね。ドリップでもエスプレッソでもない第三の選択肢「サイフォンマシン」がどんな味わいになっているのか、コーヒー好きなら試す価値アリですよ。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。5歳児と1歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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