ジョズウィアック氏が語る「アップルのチームワーク」
飯村研究室の学生たちが、チームワークにより開発したアプリもApp Storeで13万を越えるダウンロード件数を獲得しています。それが「ふろジック」です。
ふろジックもまた、ゲーム感覚でトレーニングを重ねながら「楽譜が読めるようになる」ためのiPadアプリです。音楽が好きな中村氏が、小中学校の頃は「楽譜が読めないこと」から音楽に苦手意識を持っていたことを思い出し、子どもたちがアプリを使って楽しく音楽を学べる環境を作りたいという思いからアイデアが生まれたといいます。
コーディングは中村氏が担当し、アプリ内の楽曲や効果音も中村さんがGarageBandで作成しています。ゲーム以外にもビデオを見な「音楽記号」が学べるコンテンツもあり、こちらを中村氏と同学年の黒木貴蘭氏が担当しています。イラストはiPadとApple Pencilで描き、Macでビデオコンテンツとして編集したそうです。
ふろジックの開発プロジェクトが始動する頃、「アプリのテイストを楽しくするか、勉強っぽくするかを巡ってチームの中で意見が分かれた」と中村氏が振り返ります。中村氏は「アップルではチームワークの中で意見が分かれた場合には、どのように乗り越えてきたのか」とジョズウィアック氏に訊ねました。
Coding opens the doors to new opportunities. Seeing how the young developers at the Prefectural University of Kumamoto are using Apple technology to create apps that serve and support their communities is a sign of many good things to come! pic.twitter.com/ASmFDkY9TJ
— Greg Joswiak (@gregjoz) December 12, 2022
「アップルで働く私たちはチームワークの際、メンバーが互いに遠慮することなく建設的な姿勢で主張をぶつけ合うことを是としています。それぞれの考えに触れることは、他のメンバーが新たな知識を獲得することでもあり、議論を通じて良いアイデアが生まれることがあります。考え方が異なっていた場合でも、一度合意に至った後は、プロジェクトを良い方向へ導けるように皆で全力を尽くします」(ジョズウィアック氏)
ジョズウィアック氏は「ものづくりに挑んでいる時に、一番楽しかった瞬間」を学生たちに問いかけました。黒木氏は「私たちが作っているアプリを使ってくれる方々のことを思いながら、アプリのデザインを考えている時間が最も楽しかった」と振り返りました。
「あなたと同じように、アップルもまたデバイスやサービスを利用するユーザーの側に立ちながらデザインのディティールを詰めることにとても注力しています」とジョズウィアック氏は答えています。
「複雑なものよりも、シンプルな体験をデザインすることの方がとても困難です。日本のユーザーの皆様は、そのような良質なデザインが持つ価値をよくご存知です。アップルが日本のユーザーの皆さまに選んでもらえる大きな理由がここにあると考えています」(ジョズウィアック氏)
日本の学生デベロッパーと直接触れ合う機会を持てたことで、ジョズウィアック氏もイノベーションの未来に大きな可能性を感じている様子でした。中村氏と黒木氏は飯村研究室で学んだ沢山のことを携えて、間もなく卒業を迎えます。ふたりはジョズウィアック氏から得た「良きチームワーク」のアドバイスを、これから社会に出た後も活かしたいと口を揃えていました。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。