サイドローディングのメリット、デメリットとは
日本国内でiPhoneやiPadなどのデバイスを利用する場合、ユーザーがアプリを導入するためのプラットフォームはApp Storeに限られています。外部のWebサイトやサービスを経由するサイドローディングによるアプリの入手は不可。アプリ内の有料課金サービスについても、アップルが提供する決済システム以外の利用は認められていません。
サイドローディングが許可されれば、有料のアプリやゲーム、またはアプリ内課金のサービスについて、これらを提供するデベロッパやサービス事業者が臨機応変に価格を設定できることになります。時にはApp Storeを経由するよりも安くアプリやサービスを入手できるメリットが、ユーザーにもたらされるかもしれません。
ただ、サイドローディングを許可することの対価として、App Storeを中心とする健全なエコシステムに亀裂が入り、ユーザーのプライバシーや利用する端末のセキュリティが脅かされる懸念について、アップルはこれまでにも繰り返し伝えてきました。
2022年4月にアメリカで開催されたイベント「IAPP Global Privacy Summit 2022」の基調講演に登壇したアップルのティム・クックCOOも、壇上でサイドローディングが生み出す脆弱性の問題を取り上げ、「アップがすべのユーザーのための権利であると考える『プライバシー』を侵害する大きなリスクになり得るもの」として警鐘を鳴らしました。
アプリとサービスの健全性を保つためのApp Store独自の仕組み
アップルのデバイスとサービスは、ユーザーのプライバシーを守るために色々なエコシステムが統合され、互いに連動しながら機能しています。
App Storeに関しては、アプリを流通させる拠点をこの一ヵ所にまとめることにより、大きく2つのメリットがもたらされます。その1つが「App Review」の効果が最大化されることです。App Reviewとは、Apple Storeの専門家チームがすべてのアプリケーションを明確な基準と人の手により審査して、有害・違法なコンテンツを含まない安全なアプリだけをストアから配信する独自の仕組みです。
もう1つのメリットは、ユーザーが導入した後のアプリやサービスの安全性が確保できることです。App Storeでは配布されたアプリのアップデートの内容についても審査を行い、また決済など取引きの安全性について問題が発生した場合には速やかな対応を取ってきました。
例えば2021年には約15億ドル(約2086億円)の不正の恐れがある取引を未然にブロックしたり、隠し機能や規約に記載されていない機能を含むアプリを3万4500本以上却下してきました。盗難カードによる不正な購入も330万件以上未然に防ぐことができたとしています。