好評の落合陽一サマースクールが夏休みも開催!
今回は写真や「吾唯足知」について学ぶ
クールジャパントラベルは8月13~15日の3日間、山口県山口市のKDDI維新ホールにて、小学生から高校生までを対象とした、メディアアーティストの落合陽一氏による特別カリキュラムを受講できる「Table Unstable - 落合陽一サマースクール2022 IN 山口」を開催しました。
Table Unstableは、未来の技術適用について第一線の研究者が議論を交わす国際会議。今回のようなサマースクールなどの活動も行なっており、4月29日~5月1日にも同じく山口県山口市のKDDI維新ホールにてサマースクールが開催されています(落合陽一氏「“人間”というのも作られた概念だからね」小学生たちに伝えたメッセージ)。
企画には森ビル都市企画、電通グループ、角川アスキー総合研究所 、EMIELDの協力のもと、クールジャパントラベルとWILLERが連携して現地での移動などを提供しています。
サマースクールには開催地の山口県を始め全国から32名が参加。最年少は小学3年生から最年長は18歳と、こういったサマースクールとしては珍しく、幅広い年齢層が参加しています。
今回はサイアノタイプにチャレンジ
今回のサマースクールでは「サイアノタイプ(青写真)」という技法を通して「SDGs(持続可能な開発目標)」について学ぶのがテーマ。サイアノタイプは落合氏も個展などで使っており、落合氏にとっては慣れ親しんだ技法。とはいえ、デジタルカメラやスマートフォンで撮影して、ディスプレー内だけで写真を見る現在では、一般にはなじみの薄いのも確かです。
そのためサマースクール初日は、KDDI維新ホールの会議室にてサイアノタイプやSDGsについての座学からスタート。まずは山口市環境政策課の山本氏から、山口市が推進する「COOL CHOICE(クールチョイス)」についての解説がありました。
COOL CHOICEは、地球温暖化の一因となるCO2などの温室効果ガスを減らすために、省エネ製品への買い替えやライフスタイルの選択など、ひとりひとりが日々の生活の中であらゆる賢い選択をしていこうという運動。山本氏は「山口市では11個のクールチョイステーマを設けて、例えばエアコンをひと部屋に絞って家族で集合したり、マイバッグの使用、環境への負担が少ないようにつくられた商品や、社会に役立つ地域の活性化につながる商品を考えて選ぶといった、実践を呼びかけています」と具体的な活動内容について話していました。
落合氏のパートでは、まず写真の歴史からスタート。19世紀前半すでに写真は発明されていたものの、感光板自体に直接撮影するダゲレオタイプという技術が一般的で、それ1枚しか作れない技術でした。写真が大きく転換したのは1935年にイギリスのウィリアルム・ヘンリー・フォックス・タルボットによるネガポジ法の発明。それまではたったのに対し、ネガポジ法では撮影で「ネガ」を作り、それを感光板や感光紙に「ポジ」として写真を「刷る」、つまり焼き増しができるようになったわけです。
落合氏は「写真をカメラやスマホで撮るだけでは、記録しているだけ。写真を現像して作品にし、さらに刷ることで物質にできる」と、写真を「刷る」重要性を説明しています。
サイアノタイプもネガポジ法を使った写真を刷る技術のひとつですが、銀塩などと違い、感光液に鉄と硝酸(今回はアンモニアを使用)を使うため低コストかつ、環境にも優しい技術となっています。
またサイアノタイプの作業工程では、感光液を流す作業がありますが、そのとき山口県湯田温泉の温泉水を使用。温泉水の成分による化学変化を見られるとともに、地元の温泉水を使うという環境についての学びにもなります。
さらに印画紙にはザンビアでは通常捨てられるバナナの茎を使い、SDGsにかなった日本発のフェアトレード認定紙「バナナペーパー」を使います。こちらは本サマースクールの主催社でもあるEMIELD 代表取締役 森 優希氏の発案。森氏はこれまでタンザニアでのボランティア活動などを行っており、落合氏に続いて登壇しアフリカの現状などを説明。
森氏は「バナナペーパーはフェアトレードという考えで作られていて、日本で40円のものが、現地でちゃんと40円として取引されて日本に来る。バナナペーパーというもの自体はただの紙かもしれないが、実はバナナペーパーを使ったりすることで、皆さんも途上国の貧困問題の解決にもつながっている」と話しています。