会話AIを応用して、英会話の先生をオンライン上に再現するテクノロジー
第1部では、「英語学習の未来〜メタバース時代の会話AI技術の可能性を語る〜」をテーマに、早稲田大学 グリーン・コンピューティング・システム研究機構 主任研究員(研究院准教授)の松山 洋一氏が基調講演を行った。社会的会話AIの研究開発に携わっている松山氏。現在は英会話支援のプロジェクトも行っているという。コロナ禍に突入し、会話AIの研究者も無縁ではいられないと話す松山氏は「今後、人間の会話はどこでどのように行われるか」を改めて考えさせられたという。「コロナ禍により、突然人と対面で話をする機会が奪われたが、それにより今回のテーマでもあるメタバース時代に突入するきっかけになった」と松山氏。人類の会話は、もはやオンラインで行われるものになり、人類史にはない膨大なデータが流れ込んでおり、研究者としてはそれを追いかけない手はないと分析する。
そんな現状において、会話AIのテクノロジーをどのように英会話に応用できるかについて考えるうえで、「人間と会話AIがどのように強調して価値創出するか」についても自信に問いかけたという。その答えの一つが、会話AIによる先生の実現だと松山氏は話す。現時点での集大成として開発に取り組んでいるのが「InteLLA(Intelligent Language Learning Assistant)」だ。
英会話においては、オンライン上で先生として登場し、受講生と自然に会話をして音声を録ることで能力を判定できるようにしたり、人間との先生との学習では人的リソースの面で限界があるときに、アプリとして手軽に学習できるようにしたりするといった使い道が考えられるという。
松山氏の研究分野は英会話ではなくあくまでも会話AIだが、これまでに培ってきた自然に人間と話す技術を応用することで、受講者との会話のタイミングを測ったり、相手に合わせて質問を変えたりすることができるようになるそうだ。
もちろんAIの判定も常に正しいとは限らず、場合によってはバイアスがかかる可能性もあるため、裏では人間が品質をチェックする必要がある。「例えば、9割程度はAIの先生が会話をして、一部の怪しい部分やセンシティブな表現などはしっかり人間の先生がフォローするといった活用方法が考えられる」と松山氏は話す。
「InteLLAは少しずつ扱いやすくなっているため、事業者にも中長期的な視点で活用してみてほしい。現場のフィードバックをもらうことでブラッシュアップしていきたい」と松山氏は参加者に呼びかけた。