営業会議でデモを実施 ここからIoTプロジェクトが小さく始まる

1人で始めたJOHNANのIoTプロジェクト 「動かして見せる」ことで賛同者が増える

指田昌夫 編集●大谷イビサ

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スターターキットで手応えをつかむ

 だが、当時一般的なIoT機器は1台数十万円かかることがわかり、その一方で効果は見えにくかった。広瀬氏の頭には、全国に約3000台が稼働する装置のすべてにIoTを導入するのは、無理ではないかという考えがよぎった。

 コストを抑えたかった広瀬氏は、ヒントを得るために、AWSとソラコムのユーザー会が大阪で行なった合同イベントに参加した。そして、その会場で1万円のIoTスターターキットを購入。翌日から仕事の合間を見つけて1人で試作を開始した。これを試して、数万円のIoT装置が作れれば、なんとか実現できるのではないかと思うようになった。

 広瀬氏はプログラマーではなかったが、会議室のホワイトボードに実現したいことを書き出し、「1人ブレスト」を繰り返しながら開発を進めた。ソラコムはノンプログラミングで素早く情報の可視化を実現できるところがいい、と広瀬氏は話す。

1人ブレストで試作を開始

 1カ月後、ついに最初の動作サンプルができあがった。早速、それを営業会議で関係者に披露した。「動くものを見せたことで、関係者の関心が一気に高まり、実験をしてみようということなった。ここが、IoTプロジェクトを本格化させるきっかけになった」と広瀬氏は振り返る。

仲間が増え、事業部門を巻き込む

 実現の可能性が見えたところで、広瀬氏は営業担当者といっしょに顧客企業を回って、アンケートを実施した。計150社から回答をもらい、はじめて明確に、顧客の困りごとがわかった。その結果を踏まえてさらに顧客と対話を重ね、困りごとの解決策を探っていった。

 そして最終的に、IoTを使ってフィルター交換の手配にかかわるプロセス全体を自動化するシステムを構築することに決めた。会社から開発予算も出て、一部開発パートナーの支援を受けて検証と改善を繰り返していった。開発と平行して、プロジェクトの取り組みを社内報や社内SNSで発信した。「すると社内の他の部署から、次々と改善のアイデアが舞い込んできた。どんどん仲間が増えていくのを感じた」(広瀬氏)

 しかし開発を進めていくと、さらに壁にぶつかることになった。エアコンプレッサーが設置される場所には電源が少なく、センサーや通信機器を動かすことができない。また設置場所は、夏は45度以上、冬は0度以下という過酷な環境下で正確に動作しなければいけなかった。

設置場所が過酷という壁

 だが広瀬氏は、この壁がプロジェクトを成功させる原動力になったと語る。「自分たちが販売した製品に対して、お客さまに厳しい環境で点検を強いるのは終わりにしたいと、強く思った」

 さらに試行錯誤の結果、必要最低限の機能に絞り、早く提供することを最優先に考えた。組み立てや設置のしやすさを重視して、IoTモジュールは既製品とし、電源がとれない場所でも使えるように、電池で3年稼働するようにした。

 また、最終的に3000台のエアコンプレッサーに装着することを考えると、かなりの投資が必要になった。そこで広瀬氏は財務部に協力を仰ぎながら国の補助金を申請し、見事に採択された。IoT装置の組み立てではIT部門のメンバーからも協力を得られ、いっそう一体感が出てきた。

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