最新版はエンタープライズ対応の強化やプラットフォーム拡大を実現
UiPathも脱RPA ロボットが業務を自己学習する「セマンティック・オートメーション」へ
2021年12月02日 11時30分更新
2021年12月1日、RPA製品を手がけるUiPath(ユーアイパス)は自社イベント「UiPath Reboot Work Festival」の開催に合わせて、新製品と事業戦略に関する発表会を開催。「脱RPA」を目指し、エンドツーエンドの自動化、さらに「セマンティック・オートメーション」に進んでいく道筋を示した。
エンドツーエンドの自動化、セマンティック・オートメーションへ
発表会に登壇したのはUiPath 代表取締役 CEO 長谷川 康一氏は、RPAからエンドツーエンドの自動化の企業へシフトしていくと宣言。車の自動運転のコンセプトをオフィスに持ち込み、RPAとAIを現場に装備することで、一人ひとりの能力を拡張し、DXに魂を宿らせるとアピールした。
これを実現するためには、既存の情報システムやパッケージ、AI、IoTなどをつなげるデジタルロボットによる神経系である「コネクト」、そしてロボットを全社レベルで連携させ、複数のテクノロジーが1つのプラットフォームに利用できる「オーケストラ」の機能が必要になるという。
これまでの組織は、「2000人の乗る巨大な客船を作る発想でシステムを構築してきた」と長谷川氏は指摘する。しかし、これからは大海原を俊敏に移動できる魚群のように、強い個が機動的に連携していく必要がある。こうした個を強化し、連携する組織を作っていくのがUiPathが目指すエンドツーエンドの自動化になる。
長谷川氏は、エンドツーエンドの自動化の先にある「セマンティック・オートメーション」という世界についても説明した。セマンティック・オートメーションとは、ビジネスの文脈を理解し、自己学習する次世代の自動化を指す。現在のAIは自律的な判断と操作によって、人の代わりをするいわゆる「Artificial Intelligence」と、最終的な判断を行なう人間をサポートする「Augmented Intelligence」という2つのAIがあるが、セマンティック・オートメーションは後者のテクノロジー。業務の自動化範囲をインテリジェントに進め、人間に創造的な業務に専念させる方向性だ。
画面の操作手順を教え込ませていた既存のRPAの自動化設計に対し、セマンティック・オートメーションの世界では、やりたいことや作業の固まりを指示すると、ロボットが作業を理解して、操作を自動設定するという流れになる。長谷川氏は医療機関における紹介状の受理とその診療予定設定のプロセスを例に従来との違いを説明。データやドキュメント、アプリケーション、業務プロセスなどを精査し、業務の文脈を理解し、自動化をより効率的に実現。人の可能性を最大限に拡張するのがセマンティック・オートメーションのコンセプトになる。
ほとんどの製品がクラウド・オンプレミス問わず動作可能に
今回発表された「UiPath 2021.10」はエンドツーエンドの自動化を実現するUiPathプラットフォームの最新版。発見、開発、協働、実行を担う100以上の新機能と強化のポイントについて、UiPath マーケティング本部 プロダクト&イベントマーケティング部 部長の原田英典氏が説明した。
まずはエンタープライズ対応の管理運用機能が強化。自動化プロセスが稼働する端末の正常性やリソース状況を監視する「Robot Self-Healing(ロボット自己修復)」機能を新たに搭載。ワンクリックでの自動更新も可能になった。また、CrowdStrike社との提携により、業界初のエンドポイントセキュリティを実現している。
また、プラットフォームの拡大としてAPI連携を容易にする「UiPath Integration Service」を投入。200以上のクラウドサービスとのAPIコネクターが提供されており、開発環境であるUiPath StudioからAPIをシンプルに活用できる。また、クラウドサービス側で値が変わったときに、自動的にロボットが動作するサービストリガー対応も追加。さらに「Cross-Platform Robot」の機能が追加され、Windowsに加え、Linuxでの動作もサポート。今後はMacにも対応していく。
さらに自動化対象業務の発見を担う「UIPath Process Mining」「UiPath Task Mining」「UiPath Automation」がすべてオンプレミスとクラウドの両方で実行可能に。kubernetes化パッケージも用意され、UiPathの全サーバー製品がシングルインストール方式のコンテナとして提供されることも発表された。
発表会では、ネットスーパーのテストを自動化すべく、「UiPath Test Suite」を導入したスーパーチェーンのオーケーの事例も披露。あらゆるデバイスのUXや機能を迅速にテストでき、開発における手戻りを最小化。アジャイル開発の推進に貢献したという。