本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「持続可能な社会とレジリエンスを支えるIoT」を再編集したものです。
10月11日〜15日の5日間にわたり開催された「Hitachi Social Innovation Forum 2021」にソラコムCEO玉川が登壇しました。さまざまなデータがつながることで実現する持続可能な社会と、レジリエンスを高めるために必要なデータ取得の基盤技術としてのIoTについて語られました。セッションの一部をレポート形式でお届けします。
安心・安全でレジリエントな社会づくりに向けて
~社会インフラ・サービスの革新が実現する価値~
【スピーカー】
株式会社日立製作所 永野 勝也 氏
株式会社Takram 田川 欣哉 氏
株式会社ソラコム 玉川 憲
【モデレーター】
日経BP 河井 保博氏
レジリエンスを高める社会づくりとテクノロジーの関係
コロナ禍により、今まで想像していなかった社会の急速な変化が訪れています。
日立製作所では、これまで発電機、鉄道、エレベーターなど社会基盤のシステムに深く関わってきました。日立製作所 永野氏は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害、サイバーテロなど、近年、思いもよらない脅威や災害が多発し、社会インフラのさらなる強靭化(レジリエンス)が急務となっていると語りました。
ゲスト企業として参加したソラコム CEO 玉川からは、IoTとレジリエンスについて紹介しました。IoT(Internet of Things)は、さまざまなモノがインターネットにつながり、リアルタイムでデータをやりとりするための技術です。ソラコムは、IoTにおける通信インフラを提供しスマートメーターの自動検針や、世界中で使えるAI通訳機等で利用されている事例を紹介しました。
次にデザインを軸に新規事業の立ち上げからエンジニアリングまでサポートするTakram CEO 田川氏から最近手がけたプロジェクトの紹介がありました。Takramは日立製作所との共同リサーチを通して、サステナブルな世界をつくるための9つの「トランジション」のあり方をまとめた「サステナビリティトランジション」レポートの作成や、内閣府運営の新型コロナウイルス感染症対策における、地域経済分析システムサイト「V-REASAS」コンセプト・UI/UX・可視化などのディレクションを担当しているそうです。
意思決定を支えるデータに求められる「リアルタイム性」
レジリエントな社会づくりにまだ足りていない分野について、玉川は、IoTの視点から見ると、ものごとの決断に必要なデータの収集がまだ自動化されていないと答えました。
例えば新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止策を決めるために必要なデータも、保健所がかき集めたデータを集計し、数日遅れ、数週間遅れで分析をしている状況がある実例に触れました。SORACOMを活用した、病院でのIoTボタンによる呼び出しシステムや、下水疫学調査における採水器の自動化などのIoT事例を示しながら、必要なデータの収集がスムーズになれば、より良い意思決定が迅速にできるだろうと述べました。
田川氏は、レジリエントを実現するには「何が起こっているかを刻々と把握し、正しい判断をする」というフィードバックループをテンポ良く行うことがキーであると説明しました。その際、重要なポイントは「リアルタイム性」、つまりデータ取得において人手をかけずに自動化できていること、すでにあるデータリソースを持ち寄りシェアすることであり、統合されたデータ基盤を創っていくというひとつの解決策を示しました。例えば、前述のV-RESASでは、日次、週次のレポートが出せるようになっているそうです。
持続可能な社会デザインのアイディア
永野氏は、日立製作所の社会インフラDXの取り組みについて触れ、個別の業務単位、企業単位ではデータ蓄積は始まっていると説明しました。例えば、地下にはガス管、水道管などさまざまな機器が埋設されていますが、デジタル技術により地下を掘らなくても埋設物の状況を把握することが可能になっています。また、埋設物の管理には、地質を探知する企業や水道管を保守する企業など複数の企業が関わります。これらのデータを横断的につなぎ、関わる企業が互いにベネフィットを得られるように、ビジネスとしてデザインすることが重要だと述べました。
田川氏は、データシミュレーションが社会デザインに役立つ例として、人口統計とサービス産業統計を組み合わせて分析する手法を紹介しました。たとえば数十年後に「○○駅前から床屋は何軒減るか」、「地域に脳外科などの専門病院は何軒必要か」といった未来予測が可能になります。たくさんの人手を要していたことを最少人数で実施できるよう最適化することで、手をかけなくても社会が自走していくようにする社会デザインがあると語りました。
玉川は、「この人口で路線バスは維持できるか」という課題に対して、IoT技術を活用してオンデマンドバスの運行を実現した地方自治体の事例を紹介し、テクノロジーを提供する側が社会課題を持っている人に寄り添い、より使いやすく提供すれば、解決できる課題もプレイヤーも増えると述べました。
参考:岡山県玉野市のオンデマンドバス事例(SORACOM活用事例)
これまで社会づくりは、行政からのアプローチが主流でした。永野氏は、急速なデジタル化の影響で、複数の企業や団体によるアプローチが可能になり、「協創」の重要性が増していると指摘しました。
例えば、地方交通の課題も、人を運ぶのなら鉄道に加えバスやタクシーがあり、モノを届けるなら物流トラック、目的別で考えると介護施設や商業施設の送迎バスなどもあります。これらの情報がデジタルでつながり、オンデマンドで動かすことができれば新しい仕組みが可能になるとアイディアを紹介しました。
セッション動画アーカイブのご案内
その後もお話は続き、新しい社会づくりにおけるスタートアップの役割、大手企業や行政の役割、試行錯誤の重要性、新しい価値観で社会を動かすための協創など、さまざまな切り口からレジエンスを実現する社会作りのアクションについて語られました。
セッションアーカイブは以下で公開されています。詳細をご覧になりたい方は、ぜひセッション動画をご覧下さい。(公開期日:2022年3月18日まで)
セッション視聴手順
Hitachi Social Innovation Forum 2021 JAPAN オフィシャルサイト
https://www.service.event.hitachi/
・オフィシャルサイトから視聴登録を行い、イベントサイトへログインします。
・イベントサイトトップページの「講演」アイコンをクリックください。アーカイブの検索機能 プログラム「種別」で”ビジネスセッション”を選択ください。
・検索結果から “ビジネスセッション3 | BS03-03 安心・安全でレジリエントな社会づくりに向けて~社会インフラ・サービスの革新が実現する価値~”を選択すると視聴ページに遷移します。
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