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日本MSが記者説明会、「Japan Digital Days」の振り返りと「Ignite」の発表内容予想

まもなく開催「Microsoft Ignite」で注目すべき4つのポイントとは

2021年10月28日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフト(日本MS)は2021年10月22日、10月11日~14日に開催した同社最大級のデジタルイベント「Microsoft Japan Digital Days」のセッションで触れた「Microsoft Azure」についての情報やポイントに関する説明を行うとともに、11月2日~4日(米国時間)に開催される米本社主催のイベント「Microsoft Ignite」で発表が期待される内容についての記者説明会を開催した。

「Microsoft Ignite」は2021年11月2日~4日(米国時間)に開催される

日本マイクロソフト Azureビジネス本部 マーケットデベロップメント部 シニアプロダクトマネージャーの廣瀬一海氏、同部 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏

「Microsoft Japan Digital Days」の紹介内容を振り返り

 オンラインで開催されたMicrosoft Japan Digital Daysは、「Innovate with Azure ~アプリケーションの変革」や「Migrate & Modernize with Azure ~インフラストラクチャの進化」など7つのトラックで構成。会期中には130以上のセッションが行われた。

 一方、Microsoft IgniteはITエンジニアや開発者向けのイベントで、3月に開催されたのに続く今年2回目の開催となる。マイクロソフトの最新技術や最新ソリューションに関する情報、スキルアップに関する情報などが提供される。基調講演やセッションでは、日本語で視聴(音声、字幕)できるものも用意されている。

 日本マイクロソフト Azureビジネス本部マーケットデベロップメント部 シニアプロダクトマネージャーの廣瀬一海氏が、Microsoft Japan Digital Daysのセッションで公開された情報として最初に説明したのが「Enterprise Java Applicationsのモダナイゼーション」だ。

 「日本でもJavaアプリのモダナイゼーションは課題になっている。重厚長大なエンタープライズアプリをマイクロサービス化しようという動きもあるが、一朝一夕にはいかない。Netflixでも(モダナイズに)3年をかけた。『7R』と呼ばれるモダナイズの検討項目を捉え、正しい技術を選択することが短期間で成果につなげることになる」(廣瀬氏)。

考えられるモダナイズの方針を“7つのR”に整理して説明

 たとえば米食品小売のRaleysでは、コロナ禍によりオンライン注文が増加したことにあわせて、6カ月間でオンライン販売に対応したという。ここではJavaと相性の良い「Azure Spring Cloud」を採用しており、「技術面で正しい選択をしたことが後戻りをしないで済む要因となった。2週間前倒しで稼働し、休日のアクセス増にも対応した」(廣瀬氏)。

 また東京証券取引所のETF取引プラットフォーム「CONNEQTOR」の事例では、リーンスタートアップアジャイルへの挑戦という観点から説明した。従来は電話での交渉や取引が主流だったものを電子化することで、より早く、より安く取引ができる環境を実現できたという。

 「要件が決められないプロダクトを早期に作るというリーンスタートアップアジャイル方式を採用。そのために開発手法だけでなく社内の文化も変え、SIとの契約形態も変更し、PaaSの積極的な利用にも乗り出した。東証自らも責任を持つという前提で、エンジニアと協働したユースケースであり、小さくつくり失敗することで、無駄なものを作らないというアジャイルの考え方も徹底した。リーンスタートアップアジャイルのお手本ともいえる」(廣瀬氏)

東京証券取引所のETF(上場投資信託)取引プラットフォーム「CONNEQTOR」

 ハイブリッド/マルチクラウドプラットフォームの「Azure Arc」については、Amazon Web Services(AWS)の「Amazon EKS」、Google Cloudの「Google Kubernetes Engine(GKE)」を登録し、それらの環境でも「Azure App Service」が稼働する様子をデモンストレーションした。

Azure Arcの概要

 またAzureのインフラ環境に関するセッションでは「Availability Zones(AZ)」の特徴を紹介したうえで、実測した通信速度を示し、AZ間レイテンシが平均1ミリ秒以下、99パーセンタイルでも2ミリ秒を下回るケースが多かったことを明らかにした。加えて、仮想マシンの起動時間を短縮するために、ユーザーが仮想マシン作成を指示する前に「予測」して準備しておく機械学習技術を採用していることも説明。この技術により、仮想マシンの構成にかかわらず50秒前後で利用が可能になると説明した。

 「Azureが持つ『遅延がない』メリットを生かして、ゲームの開発やサービス提供にも利用されている。可用性の実現や遅延の課題解決についても継続的に投資を行っており、論文発表された研究成果もAzureに反映させている」(廣瀬氏)

Azureデータセンター/AZ間の通信速度検証結果

Azure VM作成にかかる時間の検証結果

Microsoft Igniteの「注目すべきポイント4つ」と発表予想

 11月に開催されるMicrosoft Igniteについては、日本マイクロソフト Azureビジネス本部マーケットデベロップメント部 プロダクトマネージャーの佐藤壮一氏が「現時点で公開されている製品に関する情報と、セッションのスケジュールをもとに発表が期待されるものや、アンテナを張っておいてほしい情報を提供する」と前置きしたうえで、4つのポイントを紹介した。

 1つめは、直近に一般提供を開始(GA)した製品やサービス群についての、機能強化やマイルストーンに関する情報だ。具体的には、データ管理サービスの「Azure PurView」や、Windows 11に関連した「Azure Virtual Desktop」「Azure Stack HCI」などのアップデートがこれにあたる。たとえば「Azure Stack HCIでは、Preview Channelを開始するというアナウンスは出ているが、次の22H2アップデートの内容は公開されていない。ブレイクアウトセッションでは、それに触れるようなものが用意されている」(佐藤氏)という。

 2つめは、今回のMicrosoft IgniteにおいてGA発表が見込まれるものだ。ここでは「Visual Studio 2022」および「Microsoft .NET Framework 6」を挙げた。「それぞれのローンチイベントが、Microsoft Ignite終了後の11月8日に予定されている。Microsoft Igniteでは詳細な技術情報が公開される可能性がある」と予測した。

 3つめは、Azure Arcに関連する新しい機能やサービスがアナウンスされる可能性があるという点だ。Igniteでは開発部門をリードする米マイクロソフト クラウド+AIグループ EVPのスコット・ガスリー氏が講演を行う予定で、そこではマルチクラウドやエッジに関する内容が中心になることがわかっている。ここでAzure Arcに関する情報が発表される可能性が高いという。

 最後が、サステナビリティに関する新たな情報発信だ。マイクロソフトでは、2030年までにカーボンネガティブを達成する目標を掲げているが、こうした取り組みについて、参加するITエンジニアや開発者に向けた発信が行われそうだ。同社では、10月27日(米国時間)にもサステナビリティに関するイベントを開催する予定で、これらの内容も反映されることになりそうだ。

 なお、Microsoft Igniteで発表される内容については、同イベントの開催以降に「Ignite Book of News」としてWebサイトに公開され、一部は日本語にも翻訳されるという。またこれらの情報は「Azure Update」や「Azure Blog」「Microsoft Tech Community」でも公開される。Microsoft Baseが提供している技術ブログでは、製品やサービスに関する最新情報が、日本語による補足説明の形で定期的に投稿されており、Microsoft Igniteに関する情報はここにも投稿される。

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