起動/終了、サスペンド/レジュームにかかる時間
実用的なパフォーマンスの指標としては、Mac上の仮想マシン上でWindowsを起動したり終了したりするのに、どれくらいの時間がかかるのかというのは気になるところだ。同様に、Windowsを起動したまま状態を保存(サスペンド)したり、後でそこから復帰(レジューム)したりするのに要する時間も気になる。そこでそれぞれ、M1とインテルCPU両方のMacについて、Windows 10を使って実測してみた。結果を次の表に示す。数字の単位は秒なので、値が小さいほど短時間で処理が終了する、つまり速いということになる。
これらの時間は、測定中にもばらつくので、3回ずつ測定して、それぞれの最小値を示している。また、こうした時間は、仮想マシン上のWindowsの状態によっても異なるので、あくまで参考値と考えていただきたい。念のために、グラフでも確認しておこう。
これを見ると、Windows 10のレジューム時間を除けば、M1チップを搭載したMac上の仮想マシンの方がかなり速いことが分かる。特にWindows自体の起動、終了が2倍前後速いということは、M1搭載Macの上の仮想マシンのポテンシャルが、インテルCPU搭載機に比べてかなり高いと考えていいだろう。
今回のParallels Desktop 17の新機能の確認、性能の評価を通して、この分野でもM1搭載Macのパフォーマンスが、かなり高いことが実感できた。くどいようだが、あとはマイクロソフトが、ARM版Windowsを一般ユーザー向けに販売するという決定を下すのを待つばかりだ。そして願わくば、Parallelsの仮想マシン専用バージョンでもかまわないので、一般的なパッケージ価格よりも安価にParallelsユーザーが購入できるようにしてくれればありがたい。
一方、Parallels Desktopの今後のバージョンに期待することとしては、ホスト環境とゲスト環境のCPUをクロスでサポートできるようにして欲しい。
アップル純正のRosetta 2や、ARM版Windows上でのインテル用アプリの動作を見れば、技術的には不可能ではないはずだ。これまでインテルCPUを搭載したMac上でParallelsを使っていた人は、レガシーな資産として、インテルCPU用の仮想マシンを保持している場合が多だろう。それを今後使用するためには、現状ではインテルMacをずっと確保しておかなければならない。これでは、すっきりと安心してApple Silicon搭載のMacに移行することができない。速度は多少犠牲になってもかまわないので、そうしたインテル用の仮想マシンをApple Silicon搭載Mac上のParallels Desktopで利用できるようになれば、非常に助かるという人も多いだろう。
それが可能となれば、これまで使っていたBig Sur以前のmacOSの環境も、仮想マシンとして新しいMac上で動かせる。Apple Siliconへの以降も気兼ねなくできるようになるだろう。これはぜひ実現して欲しいところだ。