最初は数として認識されていなかった
なんと! 早いもので年が明けてしまいました! そして、なんと! 年明けにもかかわらず、この「数式なんて知らんし!!」は最終回でございます! ここまで100回の連載、2年あまりでお伝えしてまいりましたが、そこまで数式、つまり方程式や関数を使ってのお話はまったくもってほったらかしで進めてまいりました。なので、最終回は“数”に注目したお話にさせていただきたいと思います。
私達は日頃から、数と一緒に生活しています。いくら算数や数学が苦手な人でも、数字と共に過ごすことになります。時刻やカレンダーはもちろん、何かを数えたり、何かを計算するにはなくてはならない存在です。三角関数や行列関数などは、それを生業で使っているならまだしも、一般人は普段使いませんよね? 私も使いません。
ですが、毎日使っている数字にも、1つだけ、不思議な存在があるのです。それが「0(ゼロ)」です。「え?ゼロって普通に使うよね?」と思いますが、これがまた、考えれば考えるほど、不思議な存在なのです。モノを数える時、「1個」、「2個」、「3個」……と数えますよね? わざわざ、「0個」から数えることはまあないと思います。逆に、減っていく場合を考えましょう。残りの1個がなくなった時点で、「(数える対象のモノが)ない」になりませんか? あえて0個と言っても意味がわからないわけではないですが、0は「ない」と同じ意味になります。実はここがポイントなのです。
0は、古代文明の人々にとっては数ではなく、何もないことや自然数の後に付けることによって、大きい数を表わすことができる便利な記号のような位置付けでした。つまり、数として扱われていなかったようです。むしろ、古代西洋ではその宇宙観(空間には何かしら存在する)というところから、「無」の存在を認めていませんでした。つまり、無という0の概念が受け入れられなかったのです。中世ヨーロッパにおいても、0は悪魔の数字とみなされていたようですよ。今でこそ西洋の忌み数で有名なのは「13」ですけどね……。
そんなこんなで、この数としての0を発見したのは5世紀ごろのインドだといわれています。彼らは逆に「無」を含む宇宙観を持っていて、哲学的な観点でもこの無を捉えていたようで、すんなりと受け入れられたのでしょうか? なぜ数としての0が発見されたのかは様々な説があるようですが、ともあれ、数としての0が見い出された瞬間です。これで足したり引いたりする数の対象に、0が仲間入りしたのです。今でこそ普通にやっていることですが、実は文明の頭では使われていなかったんですね。意外です。
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