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小島寛明の「規制とテクノロジー」― 第57回

竹書房が海賊版問題で訴えたクラウドフレアとは-倶楽部情報局

2020年01月20日 18時00分更新

文● ASCII倶楽部編集部

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 本日は、ASCII倶楽部の人気記事「竹書房が海賊版問題で訴えたクラウドフレアとは」を紹介します。


 著作権を侵害するマンガを公開しているサイトにサーバーを提供しているとして、日本の出版社「竹書房」が、アメリカの電気通信事業者「Cloudfare」(クラウドフレア)に対して、著作権を侵害しているページの削除などを求めて東京地方裁判所に提訴した。

 竹書房によれば、提訴は2019年12月20日付。マンガ「どるから」を連載しているハナムラさんも原告に名を連ねている。

 クラウドフレアは、漫画村事件など著作権に絡む事件で、たびたびその名前が登場する事業者だ。

●クラウドフレアは「CDN事業者」

 同社は、CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)事業者の世界最大手の一角とされる。

 たとえば世界中からアクセスがあるニュースサイトで、その企業がアメリカを拠点としているとする。

 この場合、ニュースを閲覧したい日本のユーザーが、いつもアメリカのサーバーにアクセスすると表示に時間がかかる。

 一方、日本のユーザーは地理的に近い台湾にあるサーバーにアクセスすれば、ストレスなくニュースが表示されるかもしれない。

 CDN事業者は、世界中に分散したサーバーにコンテンツを保存し、サイトにアクセスするユーザーに対して最適なサーバーからコンテンツを配信する、というのが基本的なサービスだ。

 同社はさらに、サイバー攻撃に対する対策など、CDNに関連するさまざまなサービスを提供している。

●違法サイトの背後に「CDN+防弾ホスティング」

 CDN事業者が提供するサービスは悪用も可能だ。

 日本人が、日本のマンガを違法にアップロードして閲覧させるサイトを始めたいとする。その際に、日本のサーバーと契約してサイトを運営すれば、運営者を特定するのは比較的容易だろう。

 一方で、違法性があったとしても、運営者の情報を開示しない匿名性を売りにしている、防弾ホスティングと呼ばれるサービスも存在する。

 漫画村の事件では、CDN事業者としてのクラウドフレアに加えて、匿名性の高い防弾ホスティングを組み合わせ、運営者の特定を困難にしていたとされる。

 こうしたクラウドフレアのようなインフラを提供する企業自体が、マンガ家や出版社の著作権を侵害しているわけではない。

 竹書房が公開したプレスリリースも、「本来、サーバーの提供等は直接の著作権侵害行為ではない」との考えを明示している。

 一方で竹書房は、クラウドフレアが「著作権侵害者に対してサービスを与えることで、簡易かつ大規模に著作権侵害行為を行える環境を提供していることもまた事実である」としている。

●通信内容にだれが責任を負うのか

 竹書房がクラウドフレア側に求めるのは、著作権侵害行為に対する厳しい対応だ。

 クラウドフレアのウェブサイトには、不正行為に関する連絡フォームが用意されている。

 こうしたフォームなどを通じて著作権侵害の申し立てがあった場合、竹書房は「速やかに削除を行う」よう求めている。

 クラウドフレアが一部のサイトに対して、削除やサービスの提供の終了に踏み切った事例もある。

 2019年8月にアメリカのテキサス州で起きた銃乱射事件では、容疑者が犯行声明を投稿した掲示板サイト「8chan」に対して、「憎悪の巣窟」などとしてサービスの終了に踏み切っている。

 漫画村事件でも、アメリカの裁判所での訴訟の過程で開示された記録から、運営者の特定に至っている。

 違法性のあるサイトに対して、CDN事業者がどこまで責任を負うべきかについては、議論が大きく分かれるところだろう。

 中身の是非はともかくとして、8chanを含む掲示板サイトは本来、自由な言論の場だ。

 銃の乱射事件が起きる前に、その場において交わされる言葉が過激になってきたとして、企業が予防的な措置としてサーバーの提供の停止を判断するとすれば、やりすぎだと感じる人もいるだろう。

 竹書房はプレスリリースの中で、「著作権侵害を容易には行えなくなる環境整備への道筋となる判決を強く望んでいる」と述べている。

 簡単に著作権を侵害できない環境を整備する必要がある点について、異論のある人はあまりいないだろう。

 一方で、そうした環境を整備するうえで、だれが、どこまで責任を負うべきなのだろうか。

 クラウドフレアをめぐる訴訟は、判断の極めて難しい問いを投げかけている。


 続きは「竹書房が海賊版問題で訴えたクラウドフレアとは」でお楽しみください。

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