驚きのサウンドを実現した6つの内蔵スピーカー
見た目からは、まったく想像できない、大きな進化もある。それは「音」に関するもの。MacBook Proのスピーカーは、もともと、その薄い本体には似合わないような質の高い音を再生していた。それが今回の16インチモデルでは、またさらに何段階か一気にレベルが上がったように感じられる。
それもそのはず、16インチモデルは6つのユニットからなるスピーカーシステムを内蔵している。特にウーファーは、左右用のユニットを背中合わせに配置することで、余計な振動を抑えて歪を低減し、クリアで力強い低音再生を実現している。実際に聴いてみると、低音域だけでなく、中音域から高音域も、このボディの薄さからは想像できない明晰で迫力のある音を再生してくれる。少なくとも、小型のデスクトップ用モニタースピーカーは、まったく不要になったと言える。
音質以外に驚くのは、音場がキーボードの外側にある左右のスピーカーグリルのずっと外側まではみ出して広がること。それでいて、ボーカルなど、中央にあるべき音は、しっかりとセンターに定位し、キーボードの真ん中あたりから聞こえてくる。
とはいえ、実際にはグリルの部分からしか音は出ていないので、キーボードに手を置いた状態でも、高音が遮られたり、吸収されてしまうようなことはない。音場が本体の幅以上に広がるので、本体を膝の上に置いて使うより、広いテーブルの上に置いて、左右に数十cm程度のスペースを確保した場合の方が、定位感の確かな再生が可能となる。
欠点としては、定位がはっきりしているだけに、キーボードを含む平面からしか音が聞こえてこない。ムービーを観たりする際に、画面から音が聞こえてくるようには感じにくいのだ。そのため、映画鑑賞などには、やはり画面の左右に外部スピーカーを配置した方が、臨場感が得られるだろう。
本体には、4つのThunderbolt 3/USB-C兼用ポート以外に、1つのヘッドフォンジャックが備わっている。スマホでは、とっくにイヤホンジャックが廃止されているのに、これは意外に感じられるかもしれない。このヘッドフォンジャックは、音楽制作用、あるいはゲーム用に確保されているものと考えられる。音楽鑑賞用だけなら、Bluetoothでも構わないが、遅延に対する許容範囲が非常に狭い音楽制作やゲーム用としては、MacBook Pro本体内部のD/Aコンバーターからダイレクトに音を鳴らせるこの端子が有効だ。
今回、実際に録音した音質では比較していないが、サウンドに関してはスピーカーだけでなく、内蔵マイクもかなり進化している。3つのマイクを組み合わせたもので、それによって指向性を持たせ、高いS/N比を実現しているという。Appleでは、これを「スタジオ品質」と呼んでいる。さすがに音楽制作におけるボーカルの録音には、厳しいものがあるかもしれないが、動画のナレーションや、ポッドキャストの収録なら、内蔵マイクだけで十分実用になる分野もあるだろう。