FIXERが提供するBox Platformベースのファイル管理アプリ「cloud.config Files」

企業法務を激変する「Box Platform×Azure」、Box内の法文書をAIが自動解析

2019年07月30日 20時00分更新

文● 羽野三千世／TECH.ASCII.jp

　Box Japanが2019年7月23日に開催した年次ユーザーイベント「Box World Tour Tokyo 2019」のスポンサーセッションに、FIXER 取締役 COOの中尾公一氏が登壇。Boxのストレージ機能を企業の独自サービスに組み込めるサービス「Box Platform」を活用したFIXERのソリューションを紹介した。

FIXER 取締役 COOの中尾公一氏

　Box Platformは、SaaS版のストレージサービスBoxの機能を、カスタムアプリケーションで利用可能にしたもの。SaaS版Boxの利用にはBoxアカウントでのログインが必要だが、Box Platformは連携するアプリケーション側の認証で利用でき、アプリケーション側からBox内のファイルを管理できる。“Platform”と付くつくクラウドサービスではあるが、いわゆるPaaS（Platform as a Service）とは異なり、連携するアプリケーションのホスト先は別のPaaSやIaaSになる。国内では4月1日から提供を開始した。

　FIXERは、Box PlatformとMicrosoft Azureを利用して、Boxのストレージ機能と連携するファイル管理アプリケーション「cloud.config Files」をAzure上に構築。AzureのFaaSやAIサービスと組み合わせて、Box内のファイルが更新されたことをトリガーにAIがコンテンツの内容を分析してメタタグを自動付与する仕組みを実装した。メタタグを使ってファイルを検索できるようになるだけではなく、自然言語処理AIによってドキュメントの内容を解析することで、ビジネスに必要な情報だけを自動収集することが可能になる。

Box PlatformとMicrosoft Azureで構成される「cloud.config Files」

　実際にFIXERは、ある製造業の企業と共同で、cloud.config Filesで企業法務における情報収集を自動化するPoCに取り組んでいるという。グローバル市場でビジネスをしているこの製造業では、各国の法改正にいち早く対応するために、各国の公約文書を常にウォッチしている。「従来は、法改正に関する各国議会の議事録や法文書を人が膨大な時間をかけてチェックしていた。Box Platformと自然言語処理AIを使うことで、Boxに議事録や法文書をアップロードするとAIが内容を読みに行き、重要な事項があればアラートする」（中尾氏）。

cloud.config Filesで法文書を自動解析

　Box Platformを使うメリットについて、中尾氏は、「例えばAzure Blob Storage（オブジェクトストレージサービス）を使って同様のシステムを構築しようとすると、権限管理、プレビュー、電子透かし、版管理などのBoxの機能を開発し直す必要がある。これらの機能を自分で作るのは非常に大変だ。Box Platformを使えばクイックにカスタムアプリケーションが作れる」と述べた。

Box PlatformとAzure Blob Storageの比較

　セッションの最後には、cloud.config Filesに期待を寄せる企業としてトヨタコネクティッドコネクティッド本部先行企画部長の小笠原渉氏が登壇した。トヨタコネクティッドは、現行では主にオンプレミスのファイルサーバーを全社のファイル共有に使っている。「しかし、事業部間やお客様とのファイルのやりとりもあるのでメール、OneDrive、SharePointにもファイルが点在し、さらに開発プロジェクトごとにSlackが立ち上がっている。ファイルの検索に非常に時間がかかるのが課題」と小笠原氏。この課題を解決するために様々なツールを検討したが、「なかなか有効なソリューションに出会えなかった」（小笠原氏）という。

トヨタコネクティッドコネクティッド本部先行企画部長の小笠原渉氏

　Box Platformをベースとしたcloud.config Filesは、前述のように、AIによる自動タグ付けによってファイルの検索を非常に便利にする。また、Box内のファイルとSlack、Office 365などの外部サービスとの連携を可能にする。現在、同社は課題解決に向けてFIXERと共にcloud.config Filesの導入を進めているという。