東京・中野サンプラザで7月6日に開催された「ポータブルオーディオ研究会 2019 夏」(ポタ研 2019 夏)で、トップイングサイバーサウンドグループは、Lotooブランドの新型デジタルオーディオプレーヤー「PAW 6000」を発表した。
10万円台後半で8月末に新登場する、Lotoo「PAW 6000」
Lotooと言えば、実売40万円台と高額で、高性能なハイエンドプレーヤー「PAW Gold Touch」が特に有名だ。高級プレーヤー市場においては、Astell&Kernのライバルとも言えるブランドだ。しかし、そのラインナップは4モデルといささか寂しい。
新しく登場する「PAW 6000」は「PAW Gold 2」と「PAW5000 MKII JP Edition」間を埋めるモデルであり、スペックの一部は上級機を上回っていながら、16万5000円(税別)という内容を考えれば“驚異のハイコスパ”を実現している。
DACチップは旭化成エレクトロニクスの「AK4497」から「AK4493」に変更されたが、これに伴い回路も新設計されたのだろうか。そんな疑問点を来日したLotooのプロダクトマネージャー徐航氏に聞いた。
シングル使いでDACチップの性能を極限まで引き出したい
PAW 6000は、直径3.5mm端子(アンバランス)に加えて直径4.4mm5極端子(バランス)の接続に対応している。しかし、基本的にはAstell&Kernのような左右それぞれにDACチップを独立して使う、デュアル構成ではなく、シングルDACで回路を構成している。その設計意図はどこにあるのだろう。
徐 「それには3つの理由があります。まず、第1にチップの性能をとことんまで引き出すために1基で使っています。第2に複数のチップを使うと性能が安定しません。第3にチップを増やすと消費電力が増えてプレーヤーの駆動時間が短くなります。そこで(デジタル→アナログの変換部分を)シングルとして、ローパスフィルター以降をバランス構成にしています。4.4mmと3.5mmのアナログ回路は全く同じものなので、音質の差はPAW Gold Touchより少ないと思います」
それではAK4493を搭載するため、新たに回路を設計したのだろうか?
徐 「回路は新設計です。AK4493は消費電力の少ないチップなので、連続再生16時間を実現しています。またフロアノイズ-120dBu、クロストーク-135dB(4.4mm接続時)と性能を上げました。これは測定器の限界レベルに到達したと言えます」
確かに「PAW Gold Touch」のバッテリー容量5400mAhで重量311gに対して「PAW 6000」はバッテリー容量5200mAhで重量225gと軽量化されながら、連続再生時間は10時間から16時間に増えている。
また、ノイズの少なさを示すS/N比が向上したことにより、感度の高いイヤモニを使っても残留ノイズが聞こえることがなくなった。本体にはゲインの切り替えがあり、イヤモニを接続する際にはLOWゲインがオススメとのこと。
徐 「音量は電子ボリュームで調整しています。ゲインの切り替えはボリュームのプリセットの位置が変わるだけです。したがって、ボリュームゼロの位置でもノイズ量に変化はありません。また切り換えても音質が変化しません。アナログ回路に関しては、PAW Gold Touchでバランス駆動するために、直径4.4mmの端子に接続した際とほぼ同じ設計です。ヘッドホンチップはどちらもTIのOPA1622を使っています。PAW 6000は廉価版ではなく、音楽を聞くために必要のない機能を省いて、音質を追求したモデルです」
起動時間2秒の高速性は健在で、サクサク動作する
PAW 6000の操作方法(UI)は「PAW Gold Touch」と同じだ。3.77インチのゴリラガラスを採用したタッチパネルを搭載。独自OSを採用して起動時間約2秒、サクサク動くUIは健在である。アートワークなどを表示するためのデータベースには100万曲以上の楽曲情報が保存されているという。ボディはCNCで削り出した、航空機グレードのアルミ合金で、ボリュームのノブは交換が容易なアルプス製を採用、2TBまで対応できるmicroSDXCスロットを採用した。USBデジタル出力とS/PDIF出力により、デジタルトランスポートとしても使える(外部のD/Aコンバーターに接続できる)。
FitEarの「EST Universal」で聞くと、S/N感がよく情報量の多い音だ。音色はウォームで中低域に厚みがあり、その華やかな響きに特徴がある。高域は輪郭がクッキリしていてボーカルが聞きやすい。「PAW Gold Touch」よりも解像感重視で、その個性はやや薄まったが、このほうが万人向けの音とも言える。
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