Alexaを組み込んだ電子キーボードの開発舞台裏を語る
続いて11時からは「世界ではじめて楽器にAVSを搭載するまでの道」というタイトルで、ローランドがCES2019で披露したAlexa対応キーボードの開発秘話が披露された。
前半、製品化までの道のりを説明したのは、ローランド開発部の栂井秀方さん。ローランドがCES 2019に出展したのは、Alexaの機能を組み込むことで声で操作できるキーボード「GO:PIANO with Alexa Built-in」になる。音声でSpotifyのようなストリーミングサービスを呼び出して、楽器演奏を練習できるほか、操作性のあまりよくない電子楽器のディスプレイ代わりに音声で操作ができる。小さいLCDの場合、メニューから下の階層にもぐらなければならないが、GO:PIANOでは「GO:PIANOでフルートに音を変えて」で音を変更できる。その他、設定の面倒なメトロノームを鳴らしたり、音程を当てるゲームまででき、電子楽器の操作が容易になる。まさに声で操るキーボードだ。
プロジェクトのスタートは、栂井さんが中国のOEM工場を訪問した際に偶然スマートスピーカーを知ったことがきっかけだった。「そこのエンジニアに聞いたり、資料をもらって調べたところ、これならうちでもできるのではと思い始めた」(栂井さん)とのことで、2ヶ月後に、情シス部門でつきあいのあったアイレットにさっそくコンタクト。「いきなりハードウェアを作るより、アプリで動きを検証しましょう」ということで、2017年7月にまずスマホアプリの開発を依頼し、ほぼ同時にスマートスピーカーのプロジェクトも動かし始めた。
Amazon Echoの発売が開始された2017年11月、Wi-Fiモジュールを電子キーボードに組み込んで実験を開始し、2018年5月には試作品をアマゾンにプレゼン。好感触を得たことで、6月に社内で本格的にGoがかかり、半年後の2019年1月のCESに出展したという流れだった。
Alexaのスキル開発は比較的容易だが、Alexa対応のデバイスに開発するためにはAVS(Alexa Voice Service)を熟知する必要があるという。AVSとはAPIやハードウェアキット、ツール、ドキュメントなどが統合されており、ハード・ソフトともに細かいガイドが用意されている。Alexaへの組み込みを担当したアイレットR&D担当の高橋慎一さんが詳細を説明した。
ソフトウェア開発においては、電子キーボードなのでMIDIを扱う必要があった。実装においてはSwiftでMIDIの入出力を操作し、MIDIのOutputをSOUND CANVASというアプリで検証。あとはAVSやAWS側でのAlexaスキルの開発を進め、最後に連携させたがここまでの道のりは難産だった。高橋さんはAVSプロジェクトについて、「スキル作れるからといってAVSは簡単にいかなかった」「検証プロセスや量産まで含めた開発までの道のりは長い」「デバイス系など自分の範囲外の知識が必要」などのまとめを披露する。
セッション終了後、前半で失敗したリベンジとして、音の変更やメトロノーム、音程ゲームなどのデモを見事成功させると、会場から大きな拍手が沸いた。講演終了後も多くの参加者が実機を囲んで質疑応答を行なっており、関心の高さが伺えた。
イベントは最新情報やユーザー事例、活用ノウハウなどのセッションのほか、昨年と同じく「Alexaで動くロボットを作ろう」という親子ワークショップやAlexa Skills Blueprintsのハンズオンも開催された。2回目となったAlexa Dayでも、拡がるAlexaの利用範囲に応じた幅広いセッションが行なわれ、Alexaの利用が一気に深化しているのが感じられた。また、昨年と同じく、首都圏から遠い神戸での開催されたということで、わざわざ足を運んだ参加者の純度や熱意も高かった思う。