10月27日~28日、「秋のヘッドフォン祭 2018」(主催:フジヤエービック)が東京・中野サンプラザで開催された。
市場で人気のBluetoothヘッドホン/イヤホン。多くのメーカーが利便性に優れた製品を展示していた。ワイヤレスイヤホンと言えば、左右独立の「完全ワイヤレス型」が最注目だが、大容量バッテリーの搭載が難しいため長時間再生が困難、専用ケースに収納すると必ず充電されるため、充電回数が増えてバッテリー寿命が心配といった弱点も見えてきた。
完全ワイヤレスの左右またぎは根本的な課題、どう克服するか
そんな中、完全ワイヤレスイヤホンのバッテリー駆動時間を改善できる技術に取り組んでいるのがクアルコムだ。同社のSoC「QCC3026」は、最新型チップであり、採用メーカーはまだ数社しかない。しかし期待も大きい。
このチップを使うと「なぜ再生時間が伸びる」のか、理由を解説しよう。
完全ワイヤレス型イヤホンは左右のどちらかが親機となってL/Rの信号を受け、もう一方の子機に片chの信号を再送信する必要がある。結果、どうしても親機となった方の消費電力が増え、子機よりも先にバッテリーが切れてしまうのだ。仮に子機のバッテリーが残っていても、親機がダウンしてしまえば再生を続けられない。そこでQCC3026は、親機を固定しない仕組みを取り入れた。TrueWireless Stereoという技術だ。適当なタイミングで、左右のイヤホンを親機と子機に入れ替えれば、両方のバッテリーを最大限利用できる。
このチップを搭載した完全ワイヤレス型イヤホン、AVIOT「TE-D01b」はクラウドファンディングで発売済み。単体で、最大9時間の再生に対応した。一般店舗でも11月上旬に発売予定だ。
さらにヘッドフォン祭では、連続20時間再生を実現したファノーム(FUNOHM)「F2」が発表された。「ファノーム」は、株式会社メイが展開するイヤホンブランド。FUN+OHMの造語である。
いい音を追求して日本、アメリカ、中国、韓国などの企業と協力してイヤホンを作っている。その第二弾が「F2」なのだ。本機はTWS Plus方式にも対応する。これは先ほど説明した親機と子機を入れ替える方式よりもスマートな接続方法で、L/Rそれぞれが直接スマホにつながって、信号を受け取る。つまり左右またぎの問題が発生しないため、より電池寿命が長くなる可能性があると同時に、信号伝送の安定度も高くなる。つまり音切れしにくくなるのだ。
この方式を使うためには「送信側の機器」(つまりスマホ)が、クアルコムのSoC「Snapdragon 845」を搭載している必要がある。チップ自体は、すでにソニーモバイルの「Xperia XZ2」、サムスン「Galaxy S9」など各社のハイエンドスマホに搭載されている。ただしソフトのアップデートが必要であり、まだ利用できる環境はない。
F2は、Bluetooth 5.0に対応して、Google HomeやSiriに対応。防水機能(IPX5)を備え、高さ4mからの落下に耐える耐衝撃性能を持ち、直径13mmとイヤホンとしては大型のドライバーを搭載している。
その音はクリアーで高域がヌケる。歯切れがいい音で、低音の量感はあるが膨らんだり曖昧になることはなく、全体としてスッキリとした音に仕上がっている。11月下旬発売予定。