スイス連邦工科大学ローザンヌ校(Ecole polytechnique federale de Lausanne、EPFL)は、手足を切断した人が新しい手足を受け入れることをサポートするVRプロジェクトを開始した。
研究によると、手術などで手足を切断した人のうち約60〜80%が、実際には存在しない手足があるかのように感じる「幻肢」を体験する。幻肢に悩む人は自身の失くなった手足を、実際よりも非常に小さかったと感じることもある。その結果、正しいサイズで作られた義肢に拒否反応が生じることもあるという。
大半の義肢では、触覚を感じられない。技術が進歩しても、すべての患者がスムーズに義肢を受け入れられないのだ。
EPFLのプロジェクトでは、実際に切断された箇所を刺激しながら、患者には連動するVR画像を見せる。たとえば、手を切断した人に、切断した箇所のポイントとなる場所に触れ、同時に患者にはバーチャルな手が刺激されるVR映像を見せる。
この方法により、患者は義肢をスムーズに受け入れられるようになったという結果が出ている。これまで感じていた幻肢が「自身の新しい手足になった」と感じる人がいたとする報告もある。
EPFLのメンバーは「人間の脳は常に感覚を使って、何が自身の体の一部で、何がそうではないのか、を判断しています。我々は、視覚と触覚の組み合わせがどのように患者の脳を錯覚させ、義肢を受け入れさせるかを示すことができました」と述べている。