このページの本文へ

32コア64スレッドの化け物CPU「Ryzen Threadripper 2990WX」を搭載

第2世代となる"スリッパ"の実力を水冷クーラー標準装備の「Aqua-Master X399AII」で探ってみた!

2018年09月03日 19時00分更新

文● 宮里圭介 ●編集 ジサトラカクッチ

提供: サイコム

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ほかのベンチマークソフトでも性能が上がっているかをチェック

 CINEBENCH R15ではスコアがしっかりと上がっていたが、他のベンチでも効果がちゃんと出るのか気になるところ。そこで、PC全体のパフォーマンスを計測できる「PCMark 10」でもスコアがどのくらい変わるのかを試してみた。

デフォルトのAuto設定によるスコア。グラボがGeForce GTX 1050 Tiなので驚くような数値は出ていない。

トータルスコアは6%ほどアップ。細かなスコアを見ると、特に「Spreadsheets Score」の伸びが目立つ。

 CPU性能が高くなることでトータルスコアだけでなく、個別のスコアも少しずつ上積みされているのがよくわかる。特に伸びがいいのは「Spreadsheets Score」。純粋な演算に近い表計算ソフトでの処理となるためか、CPUが高速化された影響が大きいようだ。

 性能が上昇するのは確認できたが、実際CPUの動作クロックはどのように変化しているのだろうか。少し気になったので、この挙動についてをもう少し詳しく調べてみよう。

高負荷時におけるRyzen Threadripper 2990WXの挙動がどうなっているのかを調べてみた

 Precision Boost Overdriveで動作クロックが上がって性能が高くなるというのはわかるが、実際どのように動作クロックが変化しているのかが気になるところ。そこでストレステストの「OCCT」を使って負荷をかけ、その時の変化を見てみることにしよう。

 比較したのはデフォルト設定となる「Auto」と、先ほどのベンチでも使用したにPrecision Boost Overdriveの設定にPPT「420」、TDC「320」、EDC「400」という値を採用したものだ。OCCTのテストは「CPU:LINPACK」を使い、AVXをオン、全コアを使用するという設定にした。負荷は10分間かけ、その後5分間アイドルさせた場合の動作クロックの変化、CPU温度の変化を見てみよう。

ストレステストの「OCCT」を使用して動作を検証。「CPU:LINPACK」のテストで10分負荷をかけ、その後5分アイドルというパターンを使用した。

 まずは動作クロックの変化から。

「Auto」の場合はいきなり3.4GHzあたりまで下落し、2分手前あたりまで横這い。その後、3~3.4GHz付近をウロウロしている。

「Precision Boost Overdrive」を手動で設定した場合は3.8GHzあたりから始まり、2分手前まで3.4GHz以上をキープ。その後も3.2GHz前後と安定していた。

 Autoではいきなり動作クロックが落ちてしまっているのに対し、Precision Boost Overdriveを設定したものは高い動作クロックで粘り続け、その後の動作クロックも安定しているという傾向が見て取れる。3分過ぎからはどちらも平均してしまえば3.2GHz前後という感じだが、Precision Boost Overdriveでは3GHzまで落ちることはなく、総じて高めの動作クロックで粘っているのがわかる。

 続いてCPUの温度を見てみよう。新しいCPUで特にありがちだが、どうもセンサーの読み値が低く出てしまっているようだ。数値は正しくないかもしれないが、温度変化の傾向を見るには十分なので、そのまま掲載しよう。

「Auto」の場合はいきなり動作クロックが下がることもあって割とゆっくりと変化。2分あたりからさらに緩やかな上昇となっている。

Precision Boost Overdriveの場合はAutoに比べ急激に立ち上がり、最高温度も数度とはいえ高くなっている。

 どちらも動作クロックが低くなる2分前後あたりから温度の上昇が若干緩やかになるという傾向は同じ。ただし、そこまでの温度の上がり方はAutoのほうが明らかに緩やかだ。

 水冷クーラーを搭載した「Aqua-Master X399AII」だからというのもあると思うが、Precision Boost Overdriveを設定した場合でも温度が極端に高くなることはなかった。CPUに無理な負担をかけることなく、高クロックが維持できるよう自動で調整された結果といえそうだ。

負荷のかかるスレッド数によって性能変化はどうなる? 2~64スレッドまで、2スレッド刻みでチェック

 もうひとつ気になっていたのは、処理されるスレッド数の違いで性能に変化があるかどうかという点。基本的にPrecision Boost Overdriveは余裕がある場合の自動オーバークロック機能となるのだが、すでに行ったCINEBENCH R15やOCCTの結果を見てもらえばわかる通り、全コアをフルにぶん回すテストであってもしっかりと効き、性能がアップしていた。しかし、もしかするとより軽い負荷ではさらに高い動作クロックになり、ピーク性能が高まるのではないかという期待だ。

 ということで、今度は「CPU-Z」のベンチマークテスト機能を使い、使用するスレッド数を変えながらそのスコアがどのように変化するかを調べてみた。

「CPU-Z」はCPU情報を調べるのによく使われるソフトだが、実はベンチマーク機能も備えている。今回はこの機能を使い、スレッド数を変化させて調べた。

 CPU-Zのベンチマークテスト機能は負荷をかけるスレッド数を2刻みで変更できるため、2~64までの32パターンでスコアがどう変化するのかを調べてみた。ここでも「Auto」と手動設定の2つのパターンでの比較だ。

スコアの伸びが気持ちいいほどリニア。32スレッドを超えるとガクンと傾きが変わっているのがおもしろい。

 グラフを見てもらえればわかるが、使用するスレッド数に応じて真っすぐに性能が上昇している。このグラフを見る限り、負荷が低い場合にさらに高いクロックで動作しているという動きはないと言えるだろう。ちなみに32スレッドを超えると傾きが大きく変化しているが、これは実コアではなく論理コアを使うようになったためと考えられる。基本的に論理コアは実コアの空き時間で動作するため、実コアほどの性能が出ないからだ。こういった変化が見られるのも面白い。

 ついでにもうひとつ、Precision Boost Overdriveを使うことでAutoと比べ、各スレッドごとにどのくらい性能がアップしているのかも調べてみた。単純に比率で比較してものだが、こちらは少し興味深い結果だ。

10%前後ほど上昇しているのだが、14スレッドくらいまでと、48スレッドを越えたあたりでわずかに上昇率が落ちている。

 気になるポイントは大きく2つ。まずひとつは、14スレッド以下では上昇率が10%を切ることが多いということだ。単純に考えれば上昇率は変わらないハズなのだが、低負荷ではAutoでもPrecision Boost2とXFR2が効きやすくなり、そのぶん差が縮まった、と考えるのが自然だろう。もうひとつは、48スレッドを越えたあたりで、再び上昇率が10%を切っていること。こちらはPrecision Boost Overdriveの許容範囲が限界に近く、48スレッド未満と比べ上昇率が鈍くなってためではないかと考えられる。もう少しパラメーター設定を詰められれば最後まで性能上昇が見込めるかもしれないので、気になる人はチャレンジしてみて欲しい。

消費電力の大きなCPUだからこそ注意したいVRMの温度

 最初に紹介した加藤勝明氏の記事でも触れられているが、消費電力の大きなCPUだけにその電源、VRMの温度もかなり高い。「HWiNFO」を使ったセンサー読みの数値だが、OCCTを使って30分ほど負荷をかけてみると「Auto」でも最大100度まで上昇するし、「Precision Boost Overdrive」では最大112度とさらに高い温度になっていた。

 幸いテスト中にPCが落ちるということはなかったが、CPU周辺の温度が高くなりがちな水冷クーラーを使っていると、やや不安が残るのは確かだ。より安定動作を目指すなら、例えPrecision Boost Overdriveを使わないにしてもVRMを冷却するファンを追加する、もしくはケースファンを強化するというのはありだろう。

カテゴリートップへ