スマートフォン市場では国内3キャリアすべてに端末を提供し、タブレット市場でも国内トップシェアとなったファーウェイ。さらに2年前に参入したPC市場でも注目を集めており、最新モデルの「MateBook X Pro」も高い評価を得ている。
そんなファーウェイでグローバルのコンシューマービジネスを担当するCOO ワン・ビァオ(万彪)氏が来日し、プレス向けにインタビューを開催。同社のPCやタブレットについての現状や狙いについて聞いた。
機能面とファッション性を両立させた
「MateBook X Pro」
──新しく日本で発売された「MateBook X Pro」について、どういう製品か教えてください。
ワン・ビァオ氏(以下ワン氏) MateBook X Proは、今年の2月にバルセロナのMWCで発表した新しいモデルです。発表以来、グローバルにおいてわれわれの期待を上回る評価をいただいています。たとえば、MWCでは22の賞を受賞していたり、日本のオーディオビジュアルアワード「VGP 2018ライフスタイル分科会」でもPC部門金賞を受賞しています。そのため、かなり需要が供給を上回る人気で、供給が追いついていないような状態です。
──現在、MateBook X Proはどういった地域で発売されているのですか?
ワン氏 中国や日本、ヨーロッパ、アメリカです。ヨーロッパではイタリアやドイツといった主要国はすべて発売しています。アメリカでもやはり供給が追いついていない状態で、緊急に追加している状態です。
──MateBook X Proはどういったポイントが評価を受けているのでしょうか?
ワン氏 何がポイントだったかと言うと、まず非常にスタイリッシュで高級感があるということです。そもそもファーウェイがPCを開発するにあたって、従来の製品にあった問題点を打破したいという思いがありました。スマートフォンは速いスピードで発展して普及してきましたが、デザインとしてファッション性を持たせたことにより広く普及したと考えています。しかしそれと比べて、PCに関してはこの10年間大きな変化を持つことはありませんでした。
ファーウェイとしてはラップトップというのは、機能面だけでなくファッション性やスタイリッシュな一面も同時に組み合わせていきたいと考えていました。テクノロジーとファッション、二つの性質を満足させるために、そこに使われている材料であるとか、薄さ、大画面であったり、どういったディスプレーを採用すればいいのか、といったあたりで非常に工夫しています。
──MateBookシリーズはどういった層に人気なのでしょうか?
ワン氏 デザインとしてファッション性を持たせるというコンセプトなので、オシャレなビジネスパーソンが多く、当社がターゲットとしている製品の位置づけともマッチしています。性別で見た場合は全体の70%が男性ですが、MateBook X Proは薄くて軽いモデルなので、ほかの機種よりも女性ユーザーの割合が多いです。
PCへの参入はスマホとは違った戦略を取った
──ファーウェイが PC市場に参入して約2年たちます。ファーウェイを含めて一般的にアジアの新興メーカーが市場に参入する際、手頃な価格帯のモデルから参入してハイエンドに移行していくことが多いですが、MateBookシリーズはそういった戦略をとっていませんが、なにか違いがあるのでしょうか?
ワン氏 PC市場への参入はこれまでと違った戦略を取ってきました。一般的にコストパフォーマンスの高い製品を出した場合、消費者には選択肢が増えたことになりユーザーに対して大きな価値をもたらすという考えがありますが、ファーウェイとしては逆にそこに大きな価値はないと思っています。ですので、社内でPC戦略を立てるときは「プレミアム」に焦点を当てて、そしてそのセグメントでもっとも優れたPC製品を作っていくと決めました。
──グローバルから見て日本市場というのは、ハイエンドなプレミアム製品がよく売れる市場ということでしょうか?
ワン氏 ファーウェイのPC事業はスタートしたばかりで、まずはミッドハイのセグメントが主流です。ファーウェイの考えるプレミアム製品というのは、ハイエンドというわけではなく、主要なセグメントにプレミアムな製品を提供していくということです。
プレミアムなモデルというのは、単に色を変えたりリアカバーの材料を変えたりといったことではありません。ファッション性やスタイリッシュさに加えて、機能的な実用性の高さもポイントです。たとえば電源ボタンに指紋認証を組み合わせたり、ドルビーアトモスを搭載することにより、非常に優れた音質といった点です。タッチスクリーンも実用性を高め、ディスプレーの占有面積を広めるため、MateBook X Proではキーボードにカメラレンズを隠したりといった工夫も施されています。ちゃんとしたプレミアム感が出せるように、テーマとしてはテクノロジーとファッション性の融合で、ファーウェイの持っているすべてのものを注ぎ込んだ製品がプレミアムなモデルというわけです。
モバイル通信機能を搭載しないワケ
──テクノロジーという点では、ファーウェイはスマートフォンで高いモバイル通信の技術をと思いますが、MateBookシリーズへの対応は積極的でないように見えます。これはどういった考えなのでしょうか?
ワン氏 カメラをキーボードの一部に収納するギミックになっているもちろんこれまでファーウェイがスマートフォンで培ってきた新しい革新的な技術はPCにも取り入れて、新しいものを作り出そうと考えています。ですが、PCを構成するもっとも重要な二つの要素があります。それはチップセットとOSです。現状ではチップセットはIntel製やAMD製、OSはマイクロソフトのWindowsになります。新しいPCを作るにあたって、この二つの制約を受けている面があります。そこでファーウェイとしては、ほかのPCメーカーと比べてファーウェイならではの強みというものを出していきたいと考えています。
というのもファーウェイは、これまでさまざまなスマート端末を手がけてきており、さらにイノベーションに対して研究や努力を怠らずに続けてきた蓄積があります。たとえばファーウェイのスマートフォンに搭載されているチップセットです。「Kirin 970」ではCPUとGPU以外に、NPUというAI専用の機能が搭載されています。今後このAIの処理能力というのは、間違いなくPCにも応用されることになります。
もうひとつは、ファーウェイが構築したクラウドサービスの能力です。IaaS、PaaS、SaaSと3つ全て網羅しており、AndroidやWindowsなど異なるOSでも横断したクラウドサービスを提供しています。 そしてもう間もなく5Gの時代に突入しますが、ファーウェイは3Gから4G、そして5Gと培ってきた通信能力があり、さらにIoTなど相互接続の能力も今後間違いなくスマートフォンやタブレット、PCそしてホームデバイスに搭載されていきます。
2017年の欧州での調査ですが、研究開発にかける費用のランキングでファーウェイは6位とアップルを上回っています。それくらいファーウェイは持続的に基礎研究や開発に非常に力を入れてきていますが、実際に皆さんに目にする弊社の製品というのは、その研究開発の成果の一部の表れでしかありません。
研究開発に費やしたものを次々と新しい製品に投入していきますが、ファーウェイにとってイノベーションというのは、短期間でどのくらいの速さで走れるかよりも、どこまで遠くまで走れるかというところに重きを置いています。
Cloud PCは日本に導入されるのか!?
──先日CES ASIAで「Cloud PC」を発表されましたが、これはファーウェイではどういう位置づけなのか、また日本でも提供されるのか教えてください。
ワン氏 日本市場への導入は現在社内で検討しているところです。「Cloud PC」は、おもにビジネスパーソン向けの便利な使い方として提案していて、今後のブロードバンドがどんどん進んでいく中、こういった「Cloud PC」が活躍できる場がどんどん増えていくので、クラウドサービスにハードウェアの革新性という組み合わせていきたいと思ってます。
──今後のPC製品について、何か新製品を予定していたりラインナップのバージョンアップ、新しいセグメントの拡充など考えがあれば教えてください。
ワン氏 既存のセグメントは12ヵ月から18ヵ月ごとにバージョンアップして新しい製品を出すロードマップになっています。さらに新しい価格帯や次世代のラップトップも企画中で、新しい技術もどんどん取り入れていきます。
「Surface Go」への意識
──マイクロソフトから「Surface Go」が登場して、10インチクラスのPCに注目が集まっています。10インチのタブレットについて考えをお聞かせください。
ワン氏 そういった製品市場のニーズは調査していて、一定のニーズはあると思っています。2年前にファーウェイが最初に出したWindows PC「MateBook」は、まさにキーボード取り外し可能な2 in 1であり、ディスプレーサイズも12型でその市場に近いモデルです。もしその市場に参入するとしたら、さらに携帯性を高めたより軽く持ち運びやすいような製品になるのじゃないかと思ってます。
──Windows on ARMに関してどのようにお考えですか?
ワン氏 今後に関して言うと、いろんな可能性があると思います。 Always Connected PCに関しても非常に大きな可能性を秘めていると思います。ただしWindows on ARMが広く使われるようになるためには、いくつかの課題を解決しなければなりません。
ひとつ目は従来使われてきたソフトウェアとの互換性です。いままでWindowsで使われてきたアプリケーションとの互換性をユーザーにとって問題ないと言えるように検証する必要があります。そして2つ目はARM自身の性能や処理性能です。弊社としても今後も注目していきます。
クルマや家庭に今度は力を入れていく
──スマートフォンやタブレット、PC以外にもファーウェイが注目している製品ジャンルがあれば教えてください。
ワン氏 コンシューマー向けに関しては、個人とクルマ、そして家庭と3つの分野を軸に展開しています。個人を中心とした利用シーンでは、スマートフォンやタブレット、PCのほか、ウェアラブルデバイスとかスマートウォッチも含まれます。
クルマは現在グローバルの様々なメーカーと提携して事業を進めています。たとえば直近の話では、トヨタと提携して車内で使う通信モジュールを提供しています。さらにファーウェイが今力を入れているのが家庭、つまりスマートホームです。注目しているというとこのジャンルになりますね。