エンジニアも現場業務担当者も、そして「これからRPA」の人も参加
金曜夜に200名超が集合! RPA Communityが第3回勉強&LT会開催
2018年07月20日 07時00分更新
ユーザーどうしでRPAを学ぶ「RPA Community」が主催する勉強会&LT(ライトニングトーク)イベント「RPALT」の第3回が、2018年7月13日、東京・六本木のウイングアーク1st 本社セミナールームで開催された。200名超の参加者が広い会場を埋め尽くし、ビールなどのドリンクや駄菓子を手に、くつろいだ雰囲気で多彩な登壇者の話に耳を傾けた。
RPA Communityの最終目的は「RPA化」ではない?
RPA CommunityはRPAユーザーを主体として、導入事例やスキル、ノウハウ、悩みを共有し、共にRPAを学ぶための勉強会コミュニティだ。Facebookページのメンバー数を見ると、本稿執筆時点で470名超となっている。主体はあくまでもRPAに興味のある/RPAを学ぶ/RPAを活用するユーザ-であり、特定ベンダーのRPAツールを学ぶセミナーではない。さらには、この勉強会の目的は「RPA」にすら限定していないと、運営メンバーを代表してオープニングの挨拶をしたMitz(ミッツ)さんは説明する。
RPA化とは本来、何らかの目的を達成するための「手段」でしかない。さらにはその目的も、単に「無駄な業務時間を減らす」「経費(人員)を削減する」というのでは「楽しく」ないだろう。自動化や効率化を通じて自分の時間を作り、「人にしかできないことのスキルを磨く」「趣味や家族、恋人との時間に充てる」こと、それにより仕事へのモチベーションもさらに高めていくことを目的にしたほうが、きっと「楽しい」はずだ。
また業務改善を図るにしても、その最善の手段はRPA化ではないかもしれない。RPAにも強みと弱みがあるうえ、そもそも「無駄な業務プロセスを見直す」「社内コミュニケーションを改善する」など、自動化を図る前にやるべきことも数多くある。
加えて、RPA導入に際してはエンジニアだけで話を進めるのではなく、エンジニア以外の現場業務担当者も積極的に協力する/してもらう必要がある。立場の異なるお互いを理解し、「仲間の幸せ」「お客様の幸せ」「自分と家族の幸せ」を実現するためにやっていることを常に念頭に置き、RPAだけにこだわらず視野を広くして取り組むべきだと、Mitzさんは熱っぽく語った。「みんなで楽しく幸せになろう! これがRPA Communityの真の目的」(Mitzさん)。
ちなみに会場で実施された簡易アンケートによると、当日参加者のうちエンジニアはおよそ6割にとどまり、バックオフィス担当者が約1割、企画/コールセンター/マーケティング/経営/営業がそれぞれ約3~5%と、多彩な現場の業務担当者も集まっていた。また参加者の「RPAに対する立ち位置」については、「社内業務のRPA化を推進」が36%、「お客様にRPAを提案」が28%。さらに「ちょっと興味があるだけ」も21%を占めた。Mitzさんは「趣味でRPAツールを使ってみるのも楽しいのでオススメ」だと語る。
なお、RPALTは8月10日に次回Vol4の開催も発表している(詳細は本稿末尾を参照)。
「RPAあるある」から考える、RPA導入のポイント
RPALT Vol3イベントは、前半が講師による1人10分間の「勉強会」パート、後半が登壇希望者による1人5分ずつの「LT」パートという構成で行われた。
「10分間RPA概論 ~あるある編~」というタイトルで登壇した一戸寿哉さんは、前回のイベントアンケートで参加者が書いた“RPAあるある”を取り上げながら、RPAに対するよくある誤解を正しつつ、RPA導入をうまく進めるためのポイントを説明していった。
たとえば、RPA導入が最優先事項になり「業務フロー改善が後回し」になってしまうという“RPAあるある”がある。一戸さんは、業務フロー最適化の後にロボ化するのが理想的であるものの、現実には「効果が大きいなら、時間がもったいないので、まずはそのままロボ化してしまうのもひとつの手段」だと語る。業務フロー改善は後からでもできるからだ。むしろ問題なのは、「ずっとそうしてきたから」というだけで、可視化/標準化されていない業務が多く残っていることだという。「RPAを口実にして、本当の目的である業務の可視化/標準化を進め、『AI利用』など将来のデジタル化に備えてみては」(一戸さん)。
また、「RPAの保守運用という新たな業務が生まれる」というのも“RPAあるある”のようだ。一戸さんはそれを認めつつ、「保守運用こそがRPAプロジェクト成功の鍵」だと強調する。RPAを作っても「作りっぱなし」であれば使ってもらえず、「使ってもらうためのサポート体制こそが肝要だ」と話した。
最後に一戸さんは、RPAの初期導入後に考えたい(考えるべき)こととして、例外設計/エラーハンドリングをどこまで作り込むか、運用における問い合わせや障害などへの体制づくり、効果測定はどうあるべきかといったポイントを挙げて、講演を締めくくった。
「社内で100名のRPA技術者を育てるには」など多彩なライトニングトーク
後半のLTパートでは合計8名が登壇し、それぞれ5分間の持ち時間で思い思いにRPA周辺のノウハウやスキル、エピソードを披露していった。こちらも、必ずしもRPAそのものに限られた話題ではなかった。
KSKの高松奨さんは、社内でRPA学習会を開催し、100人規模のRPA技術者を育成するまでのエピソードを紹介した。同社は半導体/組み込み設計やITシステム構築/運用などの技術者派遣を行う会社であり、約1800名いる従業員の大多数はエンジニアだという。
しかし、RPA学習会を企画した当初は、社内のサイトやメルマガで告知してもまったく人が集まらなかった。そこで各事業部のマネージャに直接相談し、要点をまとめたメールをマネージャから部下に転送してもらうかたちで呼びかけを行った。その結果、120名の参加者を集めることができた。「技術者の多い会社なので、RPAの学習に対するニーズそのものは高いと感じた」(高松さん)。
学習会は、UiPathが公開しているWebラーニングコンテンツ(UiPathアカデミー)を個々に受講してもらうかたちとし、会社側は「スケジュールを立て」「進捗を管理する」ことだけを行った。進捗管理も、レッスン通過時の画面キャプチャを専用Slackに投稿してもらうというシンプルなものだ。
ただし、およそ30~40時間のオンラインレッスンだけでは「実践的なスキルは十分には身につかない。本当に初歩の初歩」だと高松さんは語る。そこで同社では、独自の最終課題として、たとえば「任意の文字列でGoogle画像検索を行う→フォルダを作成する→画像を指定の数だけフォルダに保存する→画像をリネームする……」といった“自動化パーツ”を作成するよう指導しているという。
なお、この学習会を通じて作成される大量の自動化パーツをそのままにするのはもったいないと、高松さんは「RPA図書館」を立ち上げて公開していく計画。どんな自動化パーツが欲しいかというアイデアも、オンラインで募集している。
「これからRPA導入に取り組みたい」という登壇者もいた。医療法人社団 豊寿会で医療事務の仕事をするHisa Nittaさんは、RPA導入の前段階として実施した、紙カルテの電子化や訪問介護現場への「iPad」導入などのエピソードを紹介した。
当初はスタッフの間に戸惑いもあったものの、電子化によって患者700人分、およそ1トンの紙カルテが500グラムのiPadに置き換わり、リモートでも参照可能になった。これにより、現場スタッフの残業時間が「1人あたり月46時間」ぶん削減され、スタッフ自身や家族のための時間に充てることができている。また、時間的な余裕は患者とのコミュニケーション、スタッフ間のコミュニケーションを深めることにもつながっており「理想の医療に近づいている」ことを実感しているとHisaさんは語った。RPA化により、さらにその理想に近づけていくという。
そのほか、独自に開発した新コンセプトのRPAツールの紹介、受託RPAリリース後のロボ改修要望で困った話、UiPathの高度なスキル解説、RPAによる“プレゼンスピーチの自動化”の試みなど、多彩な内容のLTが金曜夜の会場を盛り上げた。
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勉強会およびLTの後は参加者全員による懇親会となり、RPAに興味を持つ/取り組む者どうしの交流の場として盛り上がった。
なお、RPA Communityではすでに次回のRPA勉強&LT会「RPALT Vol4」の開催も告知している。8月10日に東京・汐留のソフトバンクで「Tech Night @Shiodome」とのコラボ開催となり、LT登壇希望者も募集している(詳細は下記リンク先を参照)。