埼玉県警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課が県内の中学校と高等学校の生徒1万1383人(中学生4716人、高校生6667人)を対象に実施した「平成29年度 中高生のコミュニティサイト利用等に係る実態調査結果」によれば、「インターネットに公開している情報はありますか(複数回答可)」という問いに対し、自分の「フルネーム」や「上または下の名前」を公開している中学生は33.6%(フルネーム7.0%、上または下の名前26.6%)、高校生は58.1%(フルネーム19.5%、上または下の名前38.6%)であったこと発表しました。
近年、学校などでソーシャルメディアの利用のしかたについての注意喚起がされることが多くなりました。その結果、前年度(平成28年度)の調査結果と比べてみると、自分や友達が即座に特定されてしまうような個人の情報をソーシャルメディアへ書く子どもたちの割合は「減少傾向」であることがわかります。
個人を特定しにくい、プロフィール文の書き方の工夫も子どもたちへ伝えるべき
この「インターネットに公開している情報はありますか」の問いに対する回答の選択肢は、「フルネーム」や「上または下の名前」のほか「昔の学校」「今の学校」「住所」「地域」といった項目もあります。
これらにも目を向けてみると、「フルネーム」や「上または下の名前」と同じように、「昔の学校」「今の学校」「住所」「地域」を公開する子どもたちも前年度の調査結果と比べると「全体的に減っている」こともわかります。
ただし、減っているとはいえ、インターネットへ個人の情報を公開している人の割合は、中学生より高校生のほうが多い傾向です。
中学生のうちは相手に申請(リクエスト)し、相手が承認をすることでつながりあう(友達になる)LINEのようなやや閉じられた世界であるメッセンジャーアプリの利用が主体となりますが、高校生になると相手が承認せずとも(フォロー、フォロワーの関係で)つながるTwitterやInstagramのようなソーシャルメディアをLINEなどとあわせて使うようになります。
そのため、つながった友達に対して「このアカウントは誰のものなのか」をわかりやすく伝えるために、「1:多数」でつながるTwitterやInstagramでは自分に関する情報をアカウントの「プロフィール文」に書くこと仕組みとなっているのがほとんどです。
それが結果的に「フルネーム」や「上または下の名前」だけでなく、「昔の学校」「今の学校」「住所」「地域」をインターネットに情報を公開している高校生が中学生よりも多くなる、という調査結果へつながっているのでは、と考えられます。
私たち大人も、Facebookを利用する上で、つながった相手(もしくは、つながろうとしている相手)に向けたプロフィール文を設定することはあるはずです。しかし、そのプロフィール文に書く内容は、なるべく必要最低限に留めるように工夫をすることがほとんどです。
大人と同じように、子どもたちもソーシャルメディアを利用する上で必要最低限に留めたプロフィール文となるような書き方の工夫が必要なはずです。そのポイントを子どもたちへちゃんと伝えてあげるべきではないでしょうか。
顔を出すことが「特別なこと」ではなくなっている
この調査結果の回答にもうひとつ着目すべき点は、自分の「顔写真」「一部隠した顔写真」「全身写真」を公開している子どもたちの割合です。特に「顔写真」については、中学生が9.2%であるのに対し、高校生は20.2%と割合が高いことがわかります。
これも、中学生より高校生のほうがスマートフォンを持つ割合も増え、友達を一緒に写真を撮ったり、「1:多数」でつながっていくTwitterやInstagramのようなソーシャルメディアへ投稿(共有)したりする機会が多くなることが要因のひとつであるように感じます。
とはいえ、子どもたちも大人と同じようにスマートフォンを持ち、LINEのような世界がやや閉じられたメッセンジャーアプリに限らず、TwitterやInstagramのようなソーシャルメディアを通じていろいろな人たちと繋がり合うことが当たり前となったこの時代。現実的には、自分や友達の個人に関わる情報をインターネット上で公開する子どもたちをゼロにすることは難しいと思うのです。
もちろん、個人に関わる情報をインターネット上で公開しないことを呼びかける注意喚起は継続していく必要はあります。ただ、「投稿しないようにしましょう」と単純に抑制するのではなく、ソーシャルメディアにおけるトラブルをできるだけ回避するためのテクニックを大人たちが子どもたちへしっかり伝えることも大切なことであると感じます。
具体的には、先に挙げたようなプロフィール文に即座に個人を特定できてしまうようなキーワードを書かないようにすることも大切ですし、日常の生活の上で起こった出来事や、友達とのコミュニケーションの様子をおさめた写真やその詳細をTwitterやInstagramのような「1:多数」でつながっていくソーシャルメディアへ共有するときの投稿の工夫のしかたです。
複数アカウントを使いこなす時代だからこそ求められるスキル
いま、若い世代の人たちはTwitterやInstagramのアカウントを複数もつのが当たり前となりました。学校などのリアルな友達とつながるためのアカウント、共通の趣味をもつ人たちとつながるためのアカウント……人によっては、学年があがるごとにアカウントを新しく作ることもあると聞きます。その結果、2つや3つではなく、10前後のアカウントを持ち、アカウントによって投稿(共有)する内容を使い分けているのだそうです。
それならば、個人に関わる情報を投稿(共有)することが多そうなリアル友達用アカウントは不特定多数の人が閲覧できないような「非公開アカウント」に、そうではない、趣味用アカウントは「公開アカウント」だけど個人に関わる情報は投稿しない、など、ソーシャルメディアを使うときの“ポリシー(約束)を自分で決め、忠実に守る”ようにすることを身につけるほうがいまのソーシャルメディア時代を上手に乗りこなしていく上で有意義であると思うのです。
複数のアカウントを持ち、それぞれのアカウントに応じたソーシャルメディアを使う方法は、むしろ大人たちより若い世代の子どもたちのほうが得意なはず。だからこそ、子どもたちにはソーシャルメディアそれぞれの適性に応じたアカウントごとの公開設定と投稿テクニックをぜひ身につけてほしいと感じると同時に、大人たちも子どもたちへ個人情報を出さないようにする抑制をするだけでなく、一緒にソーシャルメディアに触れて、より良いソーシャルメディアの使い方を一緒に考えていくことが大事であると考えるのです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com
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