世界的オーバークロッカーのNick Shih氏による、80度を超えない絶妙なセッティング
全コアでも4.8GHz動作、プロの設定で安心なオーバークロック済みPC
2018年02月16日 09時00分更新
オーバークロックは、CPUを定格以上のクロックで動作させ、より高い性能を発揮できるようにする危険な技。チャレンジするなら自己責任、例えパソコンが壊れたとしても泣かない勇気が必要というのが常識だが、実はこのリスクなしに性能を手に入れられる方法がある。それが、今回紹介するサイコムの「G-Master Spear Z370-Taichi OC」だ。
何を隠そうG-Master Spear Z370-Taichi OCは、サイコムとASRockが協力し、最初からオーバークロック設定が施されたうえで販売されているBTOパソコンなのだ。しかも、世界的なオーバークロッカーであるNick Shih氏により、安定して高性能を叩き出せるようセッティングされているというのだから安心感がある。
CPUはLGA1151用の第8世代Core最上位となるCore i7-8700K。定格ではターボブースト時の最大クロックは4.7GHzだが、あくまで使用するコア数が少ないときのもの。すべてのコアを同時に使用する場合は、4.3GHzが最大となる。
G-Master Spear Z370-Taichi OCのオーバークロック設定では、このすべてのコアを同時に使う場合でも、4.8GHzで動作させるという攻めた設定になっている。定格時のターボブーストよりも高いクロックで全コア動かすだけに、単純な性能上昇は10%以上が期待できるだろう。
マザーボードはASRockのゲーミングマザーボード「Z370 Taichi」を採用。12フェーズ電源回路を始め、CPUのパフォーマンスを最大限に引き出す技術が数多く投入されており、オーバークロック用としても人気が高い。また、PCIe Gen3×4のM.2スロットを3つ、IntelのギガビットLANを2つ、さらに11ac対応の無線LANまで搭載しているなど、機能面でも充実している。
G-Master Spear Z370-Taichi OCの主なスペック | |
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CPU | Core i7-8700K |
グラフィックス | GeForce GTX 1060(6GB GDDR5) |
メモリー | 16GB |
ストレージ | 500GB SSD |
内蔵ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
通信規格 | 有線LAN(1000BASE-T)、無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)、Bluetooth 4.2 |
インターフェース | USB 3.0端子×7、USB 3.1(Type-C)端子、USB 2.0端子×2、ヘッドフォン出力端子、マイク入力端子、PS/2端子、S/PDIF端子、有線LAN端子、HDMI端子×2、DisplayPort×2、DVI-D端子など(映像出力はGPU側) |
サイズ | およそ幅230×奥行502×高さ507mm |
OS | オプション(別売) |
価格 | 22万3660円から |
CPUの冷却には240mmラジエーターの簡易水冷クーラーを採用
オーバークロック動作時はCPUの発熱が非常に高くなるだけに、いかに効率よく冷やすかというのも課題となる。G-Master Spear Z370-Taichi OCで採用されているのがCORSAIRの「Hydro Series H100i V2」という簡易水冷クーラー。空冷式のクーラーはCPUから出る熱をケース内へと放出してCPUを冷却するため、しばらくするとケース内温度が上昇してしまい、冷却効率が落ちてしまうという悩みがある。これを解決する手段として、ケースファンを多数取り付け熱をケース外へと排出するというのがあるが、この方法でも限界がある。
パソコンを起動してUEFIのオーバークロック設定を見てみると、“Sycom OC profile”になっているのが確認できた。このプロファイルが、Nick Shih氏によるもの。EnabledとDisabledを切り替えれば、ノーマルとオーバークロックの2つの設定を変更できる。
「CINEBENCH R15」で性能上昇がどのくらいかをチェック!
さっそくG-Master Spear Z370-Taichi OCの性能を見てみよう。ベンチマークソフトには、定番の「CINEBENCH R15」を使用。これはCGのレンダリング速度から独自のスコア「cb」を算出し、性能を調べてくれるベンチマークソフト。CPUの性能が高いほど数値が高くなる。
ノーマル状態でのスコアは1427cbだったが、オーバークロック時は全コア4.8GHzというだけあって、1568cbと大きくスコアが伸びている。単純計算で約1.1倍。およそ10%という高い伸び率だ。これだけ性能が変わるのであれば、オーバークロックのまま常用したくなるという気持ちもよくわかる。
ただし、オーバークロック時は動作クロックを上昇させるだけでなく、安定動作させるために電圧も少し高くしている。これにより、ノーマル状態よりもCPUの発熱量が増えてしまうという問題がある。G-Master Spear Z370-Taichi OCではどのくらいCPU温度が高くなるのか気になったので、今度はストレステストとなる「OCCT」を使ってCPUの温度変化をチェックしてみよう。
OCCTの設定は、負荷の高い「LINPACK」を使用。5分間動作させ、その間の温度と動作クロックの変化をチェックしてみた。なお、AVXはオフにしている。
結果はグラフを見てもらえば一目瞭然だが、CPUの温度は最大でも78度程度で、余裕をもって使える範囲に収まっていた。また、動作クロックはほぼ4.8GHzをキープ。たまに4.3GHzまで落ちるときがあるものの、それも一瞬のことで、すぐに4.8GHzへと回復している。
自分で設定するとなると安定させるだけでも難しいオーバークロックが、プロの手により最初から設定されているというのがG-Master Spear Z370-Taichi OCの魅力。単純な高性能パソコンとしても魅力的だし、このオーバークロック設定からさらに詰め、より高いクロックでの動作を狙うという楽しみもある。オーバークロックは気になるけれど、自分で設定するのは不安があるというのであれば、満足いく1台となってくれそうだ。