Appleが9月12日にApple Parkで発表した新型iPhone。このうち、iPhone 8とiPhone 8 Plusが9月22日に発売されます。今回も、先行レビューを担当させていただきました。
案外少ないiPhone XとiPhone 8の違い
Appleは、iPhone 8シリーズとともに、有機ELディスプレイを採用した、まったく新しい「iPhone X」をアナウンスしました。11月3日の発売です。iPhone 8よりも1ヵ月以上先になってしまうのですね。
iPhone XとiPhone 8 Plusを比較すると、まずディスプレイ、そしてホームボタンの有無、顔認証Face IDの採用という前面側の違いに加えて、背面はカメラの配列が横から縦に変わり、望遠カメラにも光学手ぶれ補正が追加されるという、1段落で収まる違いしかありません。
あとはフレームがアルミかステンレスかの違い。それ以外は、両面ガラスボディになったことも、内蔵しているA11 Bionicプロセッサも、ARや機械学習に強い処理性能やカメラの高速化も、共通の要素となります。
iPhone Xが有利な点は、画面サイズがこれまでのiPhoneで最大の5.8インチなのに、本体はiPhone 8 PlusとiPhone 8の中間的なサイズになっていること。iPhone 8 Plusは202gと、ガラスやワイヤレス充電パーツの採用で重くなっていますので、サイズ/軽さでデュアルカメラ搭載のiPhone Xは選ぶ意味があるというわけです。
でも、もしコンパクトな最新のiPhoneを、というのであれば、iPhone 8は良い選択肢になっていると思います。
今回のiPhoneの話ではありませんが、たとえば来年、再来年のiPhoneは、iPhone Xとともに、今のiPhone 8よりも画面サイズが大きく、もっとコンパクトなモデルが出てくるかもしれませんね。
やっぱりiPhoneのカメラは楽しい
iPhoneのカメラは、旅に取材に、ビデオ撮影に、大活躍しています。特にビデオ撮影は、フルHD/60フレームで撮影して、iPhoneのiMovieで編集してYouTubeにアップする、お手軽動画撮影・編集も板についてきました。
おそらく多くの人のメインカメラはiPhoneになっているのではないかと思います。そのiPhoneのカメラが進化することは、世界中の人が毎年1兆枚撮影する写真に影響を与える、インパクトの大きさになります。
今回の「iPhone 8」のカメラの良い点を3つ挙げれば、スピードとトーン、ビデオの3点です。
大型化・高速化されたセンサーと新しいカラーフィルターは、シャッターを切ってもすぐに次の写真を捕らえることができ、空のように連続的に変化するトーンもきれいに再現してくれます。
実はiPhone 8では、シャッターボタンを押すと、かすかな振動でシャッターが切られたことを伝えてくれます。今までのように画面が一度黒くなりますが、振動のフィードバックは、「撮影した感」が伝わってきます。
ハードウェアの進化もさることながら、予想以上に便利なのがiOS 11で進化したLive Photosです。
新しい画像フォーマットの採用もあって、Live Photosで撮影される動画部分の画質が向上しました。そのため、Live Photosで撮影した写真は、シャッターの前後ビデオの部分から自由に選ぶことができるようになりました。
下の例の黒猫も、実はシャッターチャンスを完全に逃した失敗写真でしたが、Live Photosのおかげで、こちらを向いているときのフレームを選ぶことができました。
iPhone 8とLive Photosの組み合わせは、絶対に失敗しない、魔法のカメラと言うべきなのかもしれません。
4Kでもファイルサイズが大幅に小さくなるiPhone 8が
ビデオの時代を創る
iPhone 8はセンサーに加え、Apple設計の画像処理エンジンやビデオエンコーダーを新たなものにしたおかげで、2倍の処理能力を備えるようになりました。
iPhone 7では4K解像度で毎秒30フレームが限界だった動画撮影が、4Kで毎秒60フレームへと向上しました。4Kでも滑らかな映像をiPhoneだけで撮影することができるようになります。またスローモーションもフルHDで毎秒240フレームと、これまでの倍の細かさで記録することができます。
iPhoneはすでに、ちょっとしたデジカメよりも良いビデオが撮れるカメラになっていましたが、4K対応やスローの性能などで、またさらに独走状態になりつつあります。
ただ、ビデオについても、ハードウェアの進化とともに、ソフトウェアの進化が光ります。むしろ後者の方がインパクトが大きいのではないかと思います。
ビデオというと、昔からPCを使っている人ほど、「ファイルサイズが大きい」というイメージを持っているのではないでしょうか。筆者自身もそうでした。ただ、前述の新しいフォーマットの採用で、ビデオも半分のサイズで記録できるようになりました。
滑らかなフルHD/60フレームのビデオなら、1分でたったの90MB。映画スタイルの4K/24フレームなら1分で135MBです。iOS 10のころは、4K/30フレームのビデオの記録に375MBほどだったことを考えると、4Kビデオですら、ぐっと身近になったことがわかります。
iPhoneで毎年1兆枚の写真が撮影されると言いましたが、こんどは1兆本の4Kビデオが撮影されるようになったとすると、それだけでビデオの世界に変化が起きると思いませんか?
また写真の話だけを考えても、半分の容量で送受信されることになるので、iCloudへのデータの転送だけ考えても、ネットワークやサーバの消費電力に影響を与えるスケールがあるのではないでしょうか。
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